Vol.3 No.4 2010
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研究論文:SiC半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略(荒井)−261−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)SiCが現行のシリコンに対してパワーデバイス応用において原理的優位性を持つとともに、その実用化においてほかのワイドバンドギャップ半導体に比べ先駆性を持つことを示す」ことが目標であった。2.3 産総研時代(2001年~2007年)の目標(独)新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究プロジェクト「超低損失電力素子技術開発」(1998年度〜2002年度)において集中研究方式の役割を果たしている途中で、電総研から産総研への組織再編が行われた。プロジェクトのもとで進められていた「次世代パワー半導体実用化調査委員会」におけるパワーエレクトロニクス応用サイドの研究開発者との議論を通じて、「パワーデバイスがパワーエレクトロニクスのキーであるとしても、その実用化の実現のためには、変換器、システム応用開発との連携開発が不可欠である」との認識を得た。それに基づいて産総研内に、材料からデバイス開発、そして変換器、システム応用を含む一貫した研究開発を行う「パワーエレクトロニクス研究センター」(PERC)を設立することを提案し、採択された。そしてこの研究センターの目標として、「SiCパワーデバイスの高性能化を図るとともに、そのシステム応用への見通しを立てることによって、ユビキタスパワーエレクトロニクス(パワーエレクトロニクスにおける言うならば革新)への貢献を明確にすること」を掲げた。2.4 産総研時代(2008年~)の目標パワーエレクトロニクス研究センターの活動実績が認められ、「研究開発集団として一体で活動し、次の展開を図るべきである」との評価が産総研内で下され、2008年に後継の研究組織として「エネルギー半導体エレクトロニクス研究ラボ」(ESERL)が設立された。次なる目標を「ウェハ・材料技術、デバイス技術、システム化技術の一貫した総合的取り組みを継承し、SiCパワーデバイスの実用・普及化を加速することによってパワーエレクトロニクスの革新を目指す」とした。3 各時期における課題設定と解決のための戦略およびその成果3.1 電総研時代の戦略と成果−国内のSiCパワーデバイス開発基盤の構築−電総研では、SiC結晶の低温多形である3C-SiC(立方晶)をシリコンウェハ上にヘテロエピタキシャル成長させて、ダイオードやトランジスタを試作し、デバイス特性を実証する先駆的研究開発があった[2]。1980年代の国支援のSiCデバイス研究開発のプロジェクトは、「次世代産業基盤技術研究開発制度」のもとに、「超格子素子」プロジェクトや「3次元回路素子」プロジェクトと一緒にスタートしたが、耐環境(耐熱・放射線)強化素子(GaAsデバイスが中心)を主たる目標としたのでは産業としての魅力が乏しく、細々とプロジェクト研究を続けている状態にあった。1990年代初頭は、30 mm径のSiC単結晶(六方晶)が米国から市販され、SiCのパワーデバイスへの期待が起こりつつあった時期である。3.1.1 SiCのパワーデバイス化への絞り込みとプロジェクトの集中研究方式 米国では、SiCやダイヤモンドは米国防総省高等研究計画局(DARPA)の支援のもとに軍事応用の電子デバイスとしての研究開発が活発化していた。これに対し、日本では産業応用への展開を目的にしたワイドギャップ半導体研究開発の位置づけを明確にする必要があった。1994年(社)日本電子工業振興協会のもとでニーズ分野とシーズ技術の調査を開始し、SiC、GaN、ダイヤモンドの一連のワイドギャップ半導体は、高パワー・高周波・耐過酷環境という極めて厳しい(ハード)スペックに耐えるデバイスを可能とする半導体材料であって「ハードエレクトロニクス」という新しいエレクトロニクス分野を拓くものであるとの主張を行った[3](図1)。その後、1996年より2年間のNEDOの先導研究(NEDO先導研究「ハードエレクトロニクス」(1996~1997年度))を経て、2インチのウェハの市販が始まっていたSiCを中心に、最も産業的インパクトの大きな低損失のパワーデバイスの基盤技術を開発することに目的を絞り込むことによって、1998年から5年間のNEDOプロジェクト「超低損失電力素子技術開発」を立ち上げることができた(NEDOプロジェクト「超低損失電力素子技術開発」(1998~2002年度)(財)新機能素子研究開発協会、「NEDOプロジェクト超低損失電力素子技術開発」)。「現在は米国年大橋弘通、セラミックス、40 [1]、29-33 (2005)大橋弘通、IEEJ、122 (3)、168-171 (2002)パワー密度からみた電力変換器のロードマップR&D 製品化HEVインバータSiCインバータ凡用インバータエアコン用インバータパッケージ電源ユニット電源サイリスタバルブボード電源パワー密度 (W/cm3)0.011001010.1197019801990200020202010図2 パワー密度からみた電力変換器のロードマップこの30年で2桁向上していることがわかる。変換器の効率の向上は飽和の傾向にあるが、パワー密度の向上は変換器の低コスト化につながり、普及の重要なポイントとなる。製品化の10年前倒しで実用化の実証が必要(R&Dライン)。
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