Vol.3 No.4 2010
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研究論文:鋳造技術と粉末冶金技術の融合による新材料開発(小林ほか)−308−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)超硬合金の市場規模、日本シェア、コバルトフリーの経済効果を数値で表現されたらどうでしょうか。回答(小林 慶三)超硬合金の国内生産量は2007年度の超硬工具協会の統計によりますと、3500億円を超えるまでに成長しております。ただ、その後リーマンショック等で減少しておりますが、2000億円を超える市場を維持しており、その後また増加傾向に転じております。超硬合金の国際的なシェアでは、サンドビック、ケナメタル、イスカルに続いて、我が国の三菱マテリアル(株)や住友電気工業(株)等がありますが、日本のシェアについては正確な数値を出すことができませんでした。また、コバルトフリーの効果につきましては、原料コストの低減(原料価格ではコバルト粉末に対して鉄粉末・アルミ粉末は1/4以下:試薬による比較)とともに、環境的側面(発がん性等)や新たな高温用途への対応等数値化しにくい部分が多々あります。ご指摘にしたがい、数値等を明瞭に記載できる部分につきましては加筆・修正しました。なお、第2種基礎研究から応用研究に向けて開発を進めている鍛造用金型は150億円((財)素形材センター資料)程度の市場があります。議論2 本研究のオリジナリティコメント(村山 宣光)本研究の第1のオリジナリティは、超硬合金の結合相として、CoのかわりにFeとAlを使い、焼結途中では、Alを液体状態で結合相として機能させ、その後FeAlを合成させ、Fe、Alの欠点を回避するというアイディアだと思います。この着眼点を2.あるいは3.に記載されることにより、論文がより充実すると思います。第2のオリジナリティは、実験結果では、Fe、Alともに液体状態にしてしまうと、Alの蒸発が激しくて、うまくいかなかったが、Alだけを液体状態にすると、それが結合剤として機能し、かつ、FeAlへの合成も進むという現象の発見だと思います。これは、思考実験によるシナリオ設計どおりの結果は得られなかったが、粘り強い研究によって道が開けた事例です。3.の目標の実現に向けた研究のシナリオを、例えば、思考実験によるシナリオ設計と実験によるシナリオ変更に大きく分けて記載されると、材料研究のダイナミズムが読者に伝わると思います。回答(小林 慶三)ご理解いただけましたように、本研究ではCoのかわりにFeとAlを用い、焼結途中でAlを溶解し、その後の加熱で目的の金属間化合物を合成するところに最大の特徴があります。この着眼点につきましては、2.に追加しました。また、WC-FeAlという合金をどのような経路で作製するかが今回の研究では重要であったと思います。これまでの超硬合金の概念に縛られて材料開発を行っていた間は、素材の特性については明らかにできたものの、安定した材料を作製することができませんでした。その後、発想を転換してプロセスから見直すことでさまざまな副次的な効果が見出され、結果として研究を飛躍的に伸ばすことができました。ご指摘いただいた点を加味して、3.目標の実現に向けた研究のシナリオを加筆・修正しました。ただ、思考実験というものがどこまでの範囲を示すべき概念なのかが明確にできませんでしたので、思考実験という言葉はあえて使用しませんでした。議論3 材料開発に要する時間コメント(村山 宣光)材料開発には長い年月がかかります。これも、材料開発の特徴です。図7のWC-FeAl超硬合金の開発に時間軸を加え、本文中にも、この点を記載されたらいかがでしょうか。回答(小林 慶三)ご指摘のとおり、時間軸の記載は本材料の進化過程をご理解いただくうえで、とても有効なものだと思います。ただ、実際には、同時並行的に技術開発が進行しておりますので、時間軸を記述するのは難しいように思います。かなり雑駁になってしまいますが、図7に10年単位での時間軸を記載し、長期間の歳月が材料開発には必要であることを強調しました。議論4 実用化に向けた要素技術の選択コメント(一條 久夫:(株)つくば研究支援センター)研究開発の必要性、素材合成、特性評価、融合研究をとおした新超硬合金開発への一連のプロセスは詳述されています。第2種基礎研究では要素技術の選択と統合の過程が重要ですが、選択についても記されると理解が深まるのではないでしょうか。回答(小林 慶三)ご指摘にしたがい、要素技術の選択についても簡単に記述しました。金型材料を出口と考えた場合の本材料およびプロセスの課題については、関連する学会等での民間企業からのご意見を拝聴して、選定しました。また、ハイテクものづくりでは、出口イメージとして中・高温用金型に絞り込み、これまで基礎的な物性(機械的特性、耐酸化性、摩耗試験等)の評価を行ってきたWC-FeAl超硬合金に対して、産業的に利用できる金型を供給するための大型素材の試作、加工コストを評価するために従来の超硬合金加工方法の適用性、加熱と冷却を繰り返すことによる割れや酸化の評価を目的とした実験を行いました。これは、関連する学会(粉体粉末冶金協会)にて本材料に興味を示された企業からのヒアリング等を通じて設定したものです。本文の記述内容を加筆・修正し、背景がわかるようにしました。議論5 パルス通電焼結の効果質問(村山 宣光)パルス通電焼結の効果を教えてください。加圧下で、660℃の低温域での成形、燃焼合成反応とそれに続く焼結ということであれば、通常の加圧焼結でも目的の超硬合金は作製できるのでしょうか。回答(小林 慶三)本プロセスにおける考え方(アルミの溶解による成形と燃焼合成反応、焼結)を使いますと、小型の成形体においてはホットプレス等の加熱と加圧を同時に行える焼結プロセスでも実現できると思います。ただ、大型の成形体では、ホットプレスのようなヒーターを用いた外熱式の加熱では、ヒーター近傍と成形体の中心付近では温度差が生じ、液相の生成タイミングやその後の燃焼合成反応のタイミングにずれが起こり、均質な焼結体を作製することが難しくなります。これは、私達が半溶融成形の際に身につけた知見であり、パルス通電焼結では成形体内部にも電気が流れて、粉末間でのジュール加熱が行えることから外熱式の加熱方式に比べて温度差の発生を抑えることができます。この結果、大型のWC-FeAl焼結体の作製におきましてもAl液相が成形助剤として均等に作用し、割れのない焼結体を作製できたものと考えております。

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