Vol.3 No.4 2010
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研究論文:鋳造技術と粉末冶金技術の融合による新材料開発(小林ほか)−306−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)酸化アルミニウムを含む層が形成され、高温での耐酸化性が改善されているものと考えられるが、室温付近で形成されたこの薄い層はDLC膜との密着性を改善する効果のあることがわかった。超硬合金の表面にDLC膜を形成すると、金型と成形材との離型性を改善することが期待される。実際に、マグネシウム薄膜や銅薄膜をDLC膜をコーティングしたWC-FeAl超硬合金で打ち抜き加工してみると、加工時の成形荷重を低減できることが確認できた。開発したプロセスで作製したWC-FeAl超硬合金は、これまでの超硬合金で問題となってきた焼結時のWC粒子の結晶成長がほとんど観察されない。また、脆化相として知られるW3Fe3C等の複合炭化物相の形成も認められない。開発当初は低温焼結を実現したための結果と判断していたためあまり注目していなかったが、学術的な側面からAlの効果について検討する研究者もあらわれ、炭化物とFe系金属間化合物の相互作用についてさらに深い考察を行う必要がある。これまで実用化に注力してきたため、学術的考察が不足している側面もあり、大学との共同研究等を通してさらなる考察を行う予定である。結合相をFeAlという硬質な材料にすることで、同じ硬度を発現させる場合には炭化タングステン量を少なくすることができ、WC-FeAl超硬合金の利用は省タングステン技術にもつながると考えられる。ただ、そのタングステン削減量はわずかであり、さらにタングステン使用量を低減するためには、炭化タングステン以外の硬質材料との複合化を検討する必要がある。特に近年のタングステン価格の高騰を考えると、炭化タングステン以外の硬質材料との複合化について検討する必要がある。そこで、WC-FeAlの作製プロセスを活用して、チタン系の硬質粒子とFeAlの複合化を検討した。高い熱伝導性を有する硼化チタン粒子をFe-Al金属間化合物で結合した硬質材料の開発を試みた[12][13]。得られたTiB2-20mass%(Fe-Al)焼結体は理論密度の95 %以上となり、その硬度はFe:Alの比率によって変化するが、1500 Hv以上を示した。なお、TiB2粒子は結合相にFe含有量が多いと焼結性が良好であるため、よりFe含有量の多い(Fe-Al)金属間化合物を用いた。また、硬質粒子に炭化チタン粒子と硼化チタン粒子、結合相にFe-Al金属間化合物を用いたTiC-30mass%TiB2-30mass%(Fe-Al)硬質材料は、30 W/mKの熱伝導率を示し、これまでの超硬合金とサーメット(TiC-Ni系合金)の間の値を示した。WCをFeAl金属間化合物で結合した超硬合金でさまざまな付加機能が発現したように、TiB2-(Fe-Al)あるいはTiC-TiB2-(Fe-Al)硬質材料にも新たな用途がでてくるのではないかと期待している。実際、TiB2-(Fe-Al)硬質材料は超硬合金より軽量であり、耐摩耗性等をさらに評価することで新しい耐摩耗部材への応用が考えられ、今後の展開が楽しみである。6 まとめ産総研で材料自体を開発した耐酸化性に優れる硬質材料であるWC-FeAl超硬合金について、その開発経緯を詳細に紹介し、研究グループとして取り組んできた基礎研究から第2種基礎研究、応用研究へ向けた研究開発を紹介させていただいた。開発の経緯を模式的に示すと図7のようになり、長期にわたってさまざまな要素技術が融合された結果、現在のWC-FeAlが形成されたことがわかる。硬質材料の開発を開始した頃から超硬合金の一部を代替することを目指していたため、出口としては金型や工具になることは自明であった。さいわい本材料を発見した研究者が企業で超硬合金の開発に従事した経験を持つことから、実用化につながる目標設定を比較的容易に行うことができた。産総研が開発した独自の硬質材料をこれまでの超硬FeAlWC-FeAl DLC27 実用化研究死の谷第2種基礎研究基礎研究金型切削工具その他DLCコート特性向上新規硬質粒子微細組織観察パルス通電焼結WC-FeAl鋳造粉末冶金FeAl基硬質材料超硬合金の開発マグネシウム合金の半溶融成形金属間化合物の電磁浮揚溶解・鋳造1980年代1990年代2000年代2010年代図7 WC-FeAl超硬合金の開発

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