Vol.3 No.4 2010
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研究論文:鋳造技術と粉末冶金技術の融合による新材料開発(小林ほか)−305−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)あり、高温用の金型材料として期待される。さらに、WC-FeAl超硬合金は砥石を使った研削加工においてもこれまでの超硬合金並みの加工速度で同等の加工精度が得られ、複雑形状を有するボールエンドミルの刃先部分を試作加工できた。得られたボールエンドミルの先端部は図5のようにこれまでの材料と同等の加工が実現できている。ただ、本ボールエンドミルは先端部のみ開発材料を使用しており、軸部のハイス材料とろう付けによって接合している。これは、開発したプロセスでは長尺焼結体がまだ作製できないためであり、今後の課題である。これらの第2種基礎研究の成果は実用化への距離を大きく短縮し、本材料を実際に使用してみたいという企業が複数でてきた。いずれの企業も自社での材料製造を検討されており、新しいプロセス技術を導入しながら自社の技術と融合させることにより用途および事業化を検討してみたいという希望であった。そこで、切削工具および金型を出口として、材料メーカーや加工メーカーを巻き込んだ研究体制で実用化検討を行っている。5 考察開発したWC-FeAl超硬合金は結合相にFeAl金属間化合物を採用した新しい複合材料であり、これまでのWC-Co超硬合金の問題点を解消できる可能性がある。例えば、これまでの超硬合金の結合相であるCoは硬度がビッカース硬度で130 Hvであり、炭化タングステンよりかなり軟らかい材料である。そのため、表面を研磨した際には結合相と硬質粒子の間にでこぼこが生じる。一方、FeAl金属間化合物はビッカース硬度が320 Hvであり、硬度差に起因するでこぼこは減少するものと考えられる。そこで、結合相の体積割合をそろえたWC-FeAl超硬合金およびこれまでのWC-Co超硬合金をダイヤモンド砥粒で研削し、表面にダイヤモンドライクカーボン(DLC)をスパッタでコーティングした。それぞれの試料における研削面の面粗さは観察場所による差が多少あるものの、WC-FeAlではRa=4.3 nmであり、WC-CoではRa=5.3 nmとなっていた。WC-FeAlは結合相が硬いため、研削面が滑らかになったものと考えられる。それぞれの超硬母材の上に形成したDLC膜の密着性をスクラッチ試験により測定してみると、WC-FeAlの方が25 %程度剥離に必要な荷重が高くなった。DLC膜と超硬合金母材との界面部分は図6のように、硬質粒子や結合相の上に均質なDLC膜が密着していることが確認された。WC-FeAlとDLC膜の界面を微視的に観察すると、界面部には薄い層が観察され、詳細に分析すると酸化アルミニウムの膜が形成されていた。WC-FeAlでは表面に薄い10 mmWC-CoWC-FeAlボールエンドミル刃先部:WC-FeAI(b)(a)30 nm図4 大気中で900 ℃から水中へ冷却した超硬合金の外観WC-Co(従来材)は割れているが、WC-FeAlは割れ無し。図5 WC-FeAlで試作したボールエンドミルの外観図6 DLC膜と超硬合金の界面部の微細組織観察(a)DLC/WC-FeAl界面、(b)DLC/WC-Co界面(a)のEDX2部分で酸化アルミが形成

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