Vol.3 No.4 2010
49/74

研究論文:鋳造技術と粉末冶金技術の融合による新材料開発(小林ほか)−304−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)製造プロセスの呪縛から離れ、奇抜な発想に基づく新たなプロセス開発につながったものと考えられる。それぞれのアプローチで問題解決に取り組んだため、次に紹介する第2種基礎研究から実用化に向かうステージではそれぞれの研究者の個性が表れるユニークな技術に展開することができた。4 第2種基礎研究から実用化研究へ新しく開発したWC-FeAl超硬合金を実用材料として普及するには、本材料を工業レベルで作製してもらえる企業を見つけることが重要である。ただ、新しい材料を新しいプロセスで作製して高い材料特性を示しても、なかなか本気で本材料に取り組んでもらえる企業は現れない。ただ、得られた情報については適宜関連する学会(粉体粉末冶金協会)等の場で報告してきたため、関連業界からは研究の初期段階から注目されていたようである。そこで、一気に本材料を実用化するため、本材料を実用化した際の製品イメージから企業が本当に必要とする実験データを収集することにした。私達はこれをまさしく第2種基礎研究と位置づけ、大学や企業ではリスクが高く実施しづらい内容と考え、実用化に向けたデータ収集を行った。そのために、産総研の“ハイテクものづくり”プロジェクトを活用し、WC-FeAlを金型として実用化するためのキーワードを精査した。すなわち、①実用的な大きさの金型を作製するための大型焼結体作製、②WC-FeAl超硬合金の加工コストを判断するためにこれまでの加工技術による仕上げ加工、③高温での金型使用を想定した加熱−冷却による耐サーマルショック性、を実用化のための技術課題とした。なお、実験室の装置のみでは対応できない課題も含まれるため、大学や企業の協力を仰ぎながら研究を推進した。大型焼結体の作製では、開発プロセスにおいてAl液相を利用した加圧成形を行っているため、Al液相が成形助剤として作用し、粉末の緻密化が比較的容易に行えることがわかった。産総研のパルス通電焼結装置より電源および加圧力の大きな焼結装置を利用することで基礎研究と同様の性能を有する大型焼結体が作製できた。試作した大型焼結体の外観を図2に示す。小型の金型として利用できる程度の大きさ(φ140 mm)を有している。また、硬質な超硬合金の仕上げ加工には放電加工やワイヤーカットが活用されている。これは、超硬合金が有する高い導電性を利用した加工技術である。開発したWC-FeAl焼結体もこれまでの超硬合金と同様に高い導電性を有していることから、同じ加工条件にてワイヤーカットや放電加工を施すことができた。また、これまでの超硬合金のワイヤーカットでは加工面が少し反応して変色するが、WC-FeAl超硬合金ではFeAlの耐食性の良さを反映して反応が少ないことが確認された。実際に産総研にて焼結したWC-FeAl超硬合金を加工メーカーに依頼して金型形状(歯車)へ加工したが、その外観は図3に示すように超硬合金製金型と同じ仕上がりであった。加工に伴う作業時間もこれまでの超硬合金と同じ程度であることから、これまでの超硬合金と同程度のコストで本材料を加工できることが確認できた。このような金型を高温鍛造等で使用することができれば、被加工材を加熱して高温下にて小さな成形荷重で高速に加工することができ、加工に要するエネルギーの低減が期待できる。一般の高温鍛造等では、金型を水冷しながら使用することがあり、超硬合金を大気中で900 ℃に加熱した後、水中に急冷する実験を行ってみた。急冷した試料の外観を図4に示す。これまでの超硬合金では酸化の進行が大きく、大気中で加熱した試料の表面は酸化膜が生じて青く変色しており、急冷を行うと熱応力でクラックが発生した。一方、WC-FeAl超硬合金は表面に薄い酸化膜が生じてやや赤褐色になるが、クラックは発生しなかった。このことから開発したWC-FeAl超硬合金は大気中で加熱しても酸化しにくく、その後水冷してもクラックの発生が少ない材料で図2 WC-FeAl超硬合金の大型焼結体の外観図3 WC-FeAl超硬合金製金型の外観

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です