Vol.3 No.4 2010
48/74

研究論文:鋳造技術と粉末冶金技術の融合による新材料開発(小林ほか)−303−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)ング(以下、MAと記す)をWC-FeAlに適用してみた。これまでにMAによるアルミナイド金属間化合物の合成では、アモルファス状の合金粉末が合成されることが知られており、FeとAlの合金化が進行するまで長時間の処理を行った。大きなエネルギーで長時間のMA処理を行うと、硬質粒子と結合相との密着性が強くなり、低温での焼結が期待される。実際に遊星型ボールミルを用いて長時間のMAを行い、焼結してみると1200 ℃でも緻密な焼結体[5]を作製することができた。しかし、得られた焼結体の抗折強度は0.8 GPaしかなく、強度の向上を狙って結合相量を増加させてみても金属相の扁平化が進行[6]し、焼結体の強度改善にはつながらなかった。すなわち、これまでの超硬合金製造プロセスを発展させた研究開発ではWC-FeAl超硬合金を目的の特性まで高めることはできなかった。その結果、いわゆる“死の谷”に陥り、企業との共同研究も継続できず、実用化への道は閉ざされたかのように思われた。そこで、これまでの超硬合金製造プロセスから離れ、当時研究グループでアモルファス粉末のバルク成形方法として開発してきたパルス通電焼結技術をWC-FeAl超硬合金の焼結に応用することへ方向転換した。パルス通電焼結は通電で加熱を行いながら同時に加圧を行うことで短時間・低温で緻密な焼結体を作製する技術であり、固相焼結に適した焼結技術である。ただ、液相を伴う超硬合金の焼結では加圧により液相が分離するため、適さないプロセスと考えていた。しかし、MAにおいてWC粉末とFe粉末は十分に混合されているが、AlとFeは反応していない状態で焼結を行うと、焼結過程でFeが溶解する前にFeとAlの反応で金属間化合物が生成することを見出した。この反応を利用すると、パルス通電焼結における低温(660 ℃)でAlが溶解し、その後FeAl金属間化合物を合成しながら焼結が進行する。WC-FeAl超硬合金中のAl含有量はわずかであるため、加圧を行っても生成したAlの液体は粉末の空隙部を浸潤する程度で分離する現象は認められなかった。また、パルス通電焼結を用いたことで粉末間のジュール加熱により焼結体の内部まで均等に加熱することができた。一般の粉末冶金プロセスの加圧成形時には有機系の潤滑剤が用いられるが、溶解したAlはこの潤滑剤の役割を果たすものと考えられる。Alが溶解した状態での加圧成形は、半溶融成形技術と全く同じメカニズムであり、Mg合金の半溶融成形技術で得た知見を投入することで緻密な成形体を作製することに成功した。なお、FeとAlの反応はわずかな発熱を伴う反応であり、金属間化合物の合成時には微量の体積変化が生じて気孔を生成するが、その後の加熱によって十分緻密化することができた。開発したプロセスは図1のように示される。このプロセスで得られたWC-FeAl超硬合金焼結体は目標の抗折強度と硬度をほぼクリア[7][8]し、ようやく新たな硬質材料としての目途を立てることができた。本合金の作製プロセスにおいては、乾式の新しい合金粉末合成プロセスとパルス通電焼結[9]-[11]という新しい焼結技術を導入することで、実験室レベルではあるが、これまでの超硬合金の一部を置き換えることができる材料を試作できた。ただ、これまでの超硬合金においてご法度とされていたAl添加はなかなか関連業界に受け入れられるものではなく、また特殊な焼結設備を必要とすることから、基盤技術の構築はできたものの実用化への研究展開に行き詰まりはじめていた。基盤技術が開発できた経緯を分析してみると、超硬合金に関する基礎知識があったことは当然であるが、粉末冶金に関する知識、加圧焼結技術に関する知識、界面を制御するための微細領域を観察する技術等の知識を有する研究者が、産総研で組成特許を取得した材料に興味を持ち、それぞれのアプローチから材料特性を改善できたことが大きかったと思われる。その結果、これまでの超硬合金パルス通電焼結メカニカルアロイングAlFeWC通電加熱パルス電流溶解したAIが成形助剤AI溶解焼結燃焼合成焼結温度変位量図1 開発したWC-FeAl超硬合金の作製プロセス

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です