Vol.3 No.4 2010
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研究論文:鋳造技術と粉末冶金技術の融合による新材料開発(小林ほか)−302−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)の評価にとどまらず、工業的な利用に必要な特性評価や周辺技術の適用性にまで広げて、異なる専門を有する多くの研究者による継続的なグループ研究によって開発してきた経緯について報告する。2 研究の目的と目標硬質な複合材料の耐熱性を、鉄を用いた金属材料によって改善するためには、1990年から経済産業省のプロジェクトとして大学、民間企業、国立研究所によって総合的に取り組まれてきた金属間化合物の利用が有効だと考えられる。金属間化合物は異なる金属元素で構成される規則相であり、セラミックスと金属の中間的な特性を有する材料として知られている。なかでもアルミニウムを含む“アルミナイド”と呼ばれる金属間化合物は強度の逆温度依存性を示すものがあり、中・高温域で利用できる金属材料として期待されている。産総研ではこれまでに民間企業との連携のもと、鋳造技術によるアルミナイド金属間化合物の合成技術について研究を行ってきており、チタンアルミナイド(TiAlやTi3Al等)や鉄アルミナイド(FeAlやFe3Al等)等の金属間化合物の合成を行ってきた。アルミナイド金属間化合物は、比重差や融点差の大きな元素で構成されているため、通常の溶解方法や鋳造技術では偏析が大きく、新たに電磁浮揚溶解−鋳造というプロセス技術を開発した。しかし、溶解した金属を鋳造しただけでは、鉄アルミナイド金属間化合物の組織が粗大となり、十分な強度を付与することができなかった。また同じ頃、産総研ではマグネシウム合金の組織を微細化して成形する鋳造技術として、半溶融成形技術の開発に取り組んでいた。マグネシウム合金を半分溶けた状態で加圧成形することによって、チキソトロピー性を発現させたニアネット成形と組織微細化による高強度化を同時に実現するものである。さらに、アルミナイド金属間化合物の合成方法として粉末冶金技術にも着目し、メカニカルアロイング法を用いた微細組織のアルミナイド金属間化合物の合成技術[2]-[4]についても検討していた。一方、WC-Co系超硬合金は材料および製造プロセスに関する技術がほぼ完成されており、硬質粒子をさらに微細化した材料開発を中心に研究が行われていた。超硬合金は加工技術の高速化・高精度化とともにその需要が増加し、一層の低コスト化が求められていた。特に、価格変動の大きいコバルトや資源偏在性の高いタングステンについては、代替あるいは省使用化技術が必要とされていた。そこで、私達は金属間化合物のさまざまな合成技術と超硬合金に関する基礎知識をベースとして、アルミナイド金属間化合物を結合相とした新たな硬質材料を開発するため、これらの技術を融合した新しいプロセス技術の開発に着手した。すなわち、超硬合金の結合相としてCoの代わりにFeとAlを用い、焼結過程でAlのみ液化させ、その後FeAl金属間化合物相を合成するプロセスを開発した。この技術を用いることで、鉄アルミナイド金属間化合物を結合相として炭化タングステンや炭化チタン、硼化チタン等の硬質粒子と複合化した耐熱性を有する新しい硬質材料を提供できるものと考えた。また、開発する複合材料は超硬合金の用途の一部を代替できるように、硬度900 Hv以上、3点曲げ強度で2 GPaを超えることを目標とした。3 目標の実現に向けた研究のシナリオこの技術開発では、複合材料を構成する硬質粒子の間隙をどのような方法で鉄アルミナイド金属間化合物で充填して硬質粒子と金属間化合物の密着性をいかに高めるかが複合材料の機械的強度を左右することになる。これまでに、硬質粒子の多孔質成形体(プリフォーム)を作製して、溶融した鉄アルミナイド金属間化合物を加圧注入する方法や、溶融した鉄アルミナイド金属間化合物の中に硬質粒子の粉末を混合して攪拌する方法等が検討されているが、硬質粒子との密着性が低いために高い強度は得られていない。そこで、産総研では高融点である硬質粒子と、金属間化合物を構成する鉄粉末およびアルミニウム粉末を機械的な攪拌力によって強制的に混合するプロセス[4]を考えた。金属粉末は高い展延性を有していることから、硬質粒子を被覆しながら混合できるものと期待した。そこで、これまでの超硬合金の製造プロセスに近い方法を用いてWC-FeAl合金(WC-8.6mass%Fe-1.4mass%Al)を作製した。WC粉末、Fe粉末、Al粉末を目的の組成になるように配合してアトライタによる湿式混合を行い、1440 ℃で真空焼結を行った。これまでの超硬合金は結合相を溶解させながら焼結を行う液相焼結法であり、WC-FeAlの場合にも結合相と硬質粒子の密着性を改善するには高温での焼結が必要であった。得られた焼結体は大気中で800 ℃に加熱しても優れた耐酸化性を示し、焼結体を熱間等方加圧(HIP)処理すると抗折強度は最大で1.8 GPaを示した。ただ、得られた焼結体の強度には大きなばらつきがあり、安定した焼結体を作製し難いことがわかった。これは、融点の低いAlが真空焼結中に蒸発するため、結合相の組成や量が一定とならないことに起因している。また、蒸発したAlは真空焼結炉の黒鉛電極等へ付着することが懸念され、従来プロセスによるWC-FeAl超硬合金の作製は困難であろうと考えられた。焼結時のAlの蒸発は、湿式での混合によりFeとAlが十分反応しなかったことが原因と考えられ、大きな混合力で合金を作製できる乾式混合方法であるメカニカルアロイ
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