Vol.3 No.4 2010
41/74

研究論文:いかにしてカーナビゲーションシステムは実用化されたか(池田ほか)−296−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)された。設立のポイントは、仕様(標準化)と会員(ユーザー集め)であり、測量・編集領域では業界のために互いに協力する一方で、表示デザイン等の表示の仕方については競争領域にするとカーメーカーが決断したことによって大きく進んだ。建設省(当時)内では、道路局と国土地理院の両方の参画を得た。民間企業は、地図データの共通化による差別化の喪失があったが、コスト削減ができるため、基金・会費の供出やエンジニアの派遣を含めて参画をした。地図データに求められる機能も、ナビの進化とともに変化してきた。現在位置を表示するだけの第1世代ではネットワークの正確さが、目的地への経路を表示する第2世代では、一方通行や右左折規制、中央分離帯の有無等の規制情報が、交通情報を表示する第3世代では、渋滞状況の管理単位との適合性が、それぞれ求められてきた。以後、現在に至るまで(財)日本デジタル道路地図協会のデータが日本のナビを支えている。この元地図に警察が管轄している右左折禁止等の交通規制データを加味して、経路誘導機能が実現された。3.4 交通情報の受信狭い国土と交通網を最大限に活用するために我が国の道路交通管制は世界で最も進んでいる。道路上に設置された数多くの車両感知センサー[9]や画像感知器、交差点監視カメラ等で渋滞状況は把握されてきた。その渋滞情報を、郵政省(当時)の管轄するFM放送を使って、建設省が管轄する高速道路上では電波ビーコン[10]で、警察庁が管轄する一般道路では光学式車両感知器[11](光ビーコン)で、というように複数のメディアを介してナビに提供されている。関係者の努力でVICS[12](Vehicle Information and Communication System)センターが構築され、VICSセンターに集約された情報は、各メディアセンターを介して、ナビへと送られた。この仕組みを通じてナビでは全国の渋滞状況も知ることができるようになった。電波ビーコンや、光ビーコンからのデータは媒体こそ異なるものの共通的なデータについては、そのフォーマットの統一が企業関係者の努力により成し遂げられた。ビーコンの受信においてもデータ処理ソフトウエアが重要であった。ビーコンから送られる簡易図形のデータはその地点特有のものであり、ナビがどういう表示状況にあろうとも即座に割り込み的に表示させる必要がある。表示縮尺切り替え中や経路再探索中等CPUやメモリー負荷の高いタイミングにビーコン受信を行うと内部処理がたいへんであった。この交通情報の提供に当たっては、渋滞情報を収集している地図データ表現、VICSセンターでのデータ表現、ナビ車載器でのデータ表現の対応付けが必要であったが、関係者の努力により克服することができた。図6において地図の上の緑の矢印は空いている道路、赤の矢印は混雑している道路を示す。ナビが普及し、VICSが1996年にでき、1973年にCACSにおいて描いた車載器とインフラの協調システムは、ようやく実現に至った。3.5 その他コア部品開発ナビは、マップマッチングを行うほか、目的地までの経路計算と経路誘導をリアルタイムでディスプレーの地図上に表示しなければならず、これまでの車載機器にない大きなメモリー量、ソフトウエア量と計算パワーが必要となった。まず表示用、マップマッチング用の地図を実用的な範囲で記憶するにも、開発当初の半導体メモリーでは全く容量が足りず、当時車にはほとんど使用されていないCD-ROMを使うことにした。このCD-ROMを採用するに当たり、特に車の振動に耐えられるよう住友電工の関連会社である東海ゴム工業(株)が開発したオイルダンパーをCDドライブメーカーに紹介した。また1M byteにおよぶプログラムメモリーにROMを、地図演算用メモリーにはこれも車で使用実績のあまりないD-RAMを採用した。これらを採用するにあたり、車用の環境試験や信頼性に留意した。米国が1988年頃から軍用目的で整備を始めたGPSは、民間用途にも精度を意図的に下げながらも提供されてきた。先述の種々のセンサーを車に装着しなくとも受信機さえ備えれば現在位置が分かるということで、その取り付けの簡便さゆえに市販ナビを中心にGPSナビが1990年頃から登場してきた。当初は測位に必要な十分な数の人工衛星が上空を飛んでいないため、トンネルやビル陰等衛星が見えない状況では、役に立たない場面もあったが、1995年頃にはほぼ実用レベルになり、2001年に精度劣化が解除されると十分実用レベルへと達した。3.6 カスタマーへの売り込み1983年にナビの単独開発を始めて半年後には大阪周辺のデジタル地図を作り、ナビのテストが進み始め、カーメーカーへPRを開始した。結果的には日産自動車(株)が評(VICSセンター資料より)図6 渋滞表示有りの地図表示

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です