Vol.3 No.4 2010
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シンセシオロジー 研究論文−259−Synthesiology Vol.3 No.4 pp.259-271(Nov. 2010)1 はじめに1990年代産総研の前身である旧工業技術院傘下の15研究所では、材料研究者は全体の半数を越していたと思う。息の長い材料研究において、どのような形でその存在意義を社会に示して行くかは周期的な議論の的であった。1980年代後半米国は不況下で、基礎研究者が自分の研究のセールスに日本に来る状況にあったが、当時の日本の国立研究所は、より先鋭的な基礎研究に注力すべきであるとの流れ、いわゆる「基礎シフト」にあった。材料研究では、往々にして自分の専門を武器に流行りものの材料を渡り歩く研究スタイルが見られたが、電子技術総合研究所(以降、電総研という)では「使われてこそ材料」を標榜して、意識改革を進めていた。シリコンLSIの最先端技術開発から取り残されつつあった電総研にあって、材料分野としてはパイオニア的研究開発が始まっており、低損失・高周波動作と高温・高放射線耐性が期待できる炭化珪素(SiC)をはじめとするワイドギャップ半導体(窒化ガリウム(GaN)、ダイヤモンド)を将来のデバイス産業化の夢を持てる材料群として取り組むべきと結論した(図1)。本稿では、SiC半導体のパワーデバイス開発とその実用化に向けてのこれまでの活動を、産総研内の組織の変遷に対応させて、1)研究目標、2)個別課題の設定と解決のための戦略およびその成果、3)戦略の妥当性の評価に分けて記述し、最後に今後の課題について述べたい注1(表1)。2 各時期における研究開発の目標2.1 研究開発の全体としての位置づけ最近我が国で、資源と環境の制約のもとでの2100年のエネルギーのあり方が議論され、それに向かっての技術開発の方向付けがされた[1]。そこでは再生可能エネルギーの大量導入と原子力エネルギーを基軸とし、効率・利便性・経済性にすぐれた電気エネルギーの利用による省エネルギーの徹底により、持続的発展が初めて可能となると推測されている。パワーエレクトロニクスが、電気エネルギー有効利用のキーとなる共通基盤技術として重要であることは言うまでもない。パワーエレクトロニクスのキー技術は荒井 和雄SiC半導体のパワーデバイスの実現は、その省エネルギー効果により大きな期待が持たれている。SiCのような新規半導体のデバイスとしての実用化には、乗り越えなくてはならないいくつもの技術上の壁がある。産総研が関与した国家プロジェクトを中心として、15年を越える実用化に向けての研究開発活動を、産総研内の組織の変遷に対応させて、1)研究目標、2)個別課題の設定と解決のための戦略およびその成果、3)戦略の妥当性の評価に分けて記述し、最後に今後の課題について述べる。SiC半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略− 新規半導体デバイス開発における産総研の役割 −Kazuo AraiR&D of SiC semiconductor power devices and strategy towards their practical utilization- The role of AIST in developing new semiconductor devices -The realization of SiC semiconductor power devices has been highly expected to contribute to energy saving, however, it requires overcoming various technological barriers. AIST has been contributing to this objective for more than 15 years mainly through participation in national projects. Corresponding to the changes of organization of the institute, in this paper, R&D activities for the past years are described in three parts, i.e., 1) the R&D targets, 2) the major issues and strategies for overcoming them and the main results, 3) the evaluation of the validity of the strategies, and lastly, future issues are suggested.キーワード:シリコンカーバイド、ワイドギャップ半導体、ウェハ技術、パワー半導体デバイス、パワーエレクトロニクスKeywords:Silicon carbide, wide-gap semiconductor, wafer technology, power semiconductor device, power electronics産業技術総合研究所 イノベーション推進本部イノベーション推進企画部 〒305-8568 つくば市梅園1-1-1 中央第2Planning Division, Research and Innovation Promotion Headquaters, AIST Tsukuba Central 2, 1-1-1 Umezono, Tsukuba 305-8568, Japan E-mail: Original manuscript received March 6, 2009, Revisions received March 15, 2010, Accepted March 29, 2010

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