Vol.3 No.4 2010
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研究論文:いかにしてカーナビゲーションシステムは実用化されたか(池田ほか)−294−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)の違い等、ロジックに影響を与える要因に隔たりが大きかったことや、将来の発展を考えて、自社開発することにした。②センサー、ハードウエア、ソフトウエアの考え方センサーとしては、移動量、旋回角のセンサーが必要である。自動車に用いるためには、潜水艦や航空機に比べ2~3桁安価で、精度はそこそこ、しかも車の使用年数十年くらいは調整が不要で壊れないというものが必要となる。移動量と旋回角は車の両輪の回転数の平均とその差分でそれぞれ検出できる。住友電工はアンチロックブレーキ(以下ABSと記す)メーカーでもあったので、よく分かっていたABS用車輪速センサーを車メーカーにお願いし、それをセンサーとして使用することにした。また、旋回角のセンサーだけでは、絶対方位が分からないため、絶対方位の分かる地磁気センサーを併用した。ただし、車輪の回転数はスリップのために実際の移動距離と違ったり、地磁気センサーも直流駆動電車の近く等場所によって大きく狂うことがあるため、これらセンサーの誤りをマップマッチングでいかに正すかというソフトウエア開発がとても重要になる。そのソフトウエア検証のため、種々のコースで実車走行したり、実車走行のデータをもとにシミュレーションを行ったりした。ただ、これらの検証走行やシミュレーションの結果から、車輪の両輪差からの検出方法では旋回角の精度が不十分であることが分かり、後に示す光ファイバージャイロ[6]を開発することになった。その他の部品についても、自動車用に使用する場合は、世の中一般に使用されており、十分信頼性の高い物かつ自動車の振動や高低温に十分耐えられる物を選ぶ必要があった。地図の表示や推奨経路の表示については、当初は(車に一部搭載されていた)6インチ程度のCRTを用い、また地図の記録媒体としてCD-ROMを使用した。これらの方式を用いたナビが1989年セドリック、シーマに採用された(図2)。現在では、これらの表示装置や記録媒体は、液晶ディスプレーとDVDまたはハードディスクにとって代わられている。1990年頃のナビには6インチCRTが使われたが、これまでオーディオやエアコンの操作パネルが位置していたところにナビが入り、オーディオやエアコンの操作機能もナビ機能に組み込まれた。③実用化の考えかた一般車では、ナビの車輪速センサーとしてその当時まだ搭載が少なかったABSシステム用のセンサーを用いたため、ナビを搭載できる車両はABSシステムの搭載車に限られることになった。地磁気センサーについては、車メーカーが製作時に車体を消磁すること、および一度旋回し磁石の方位を確認してセンサーの常数を記録させることを行い、その後は車輪速センサーの値とマップマッチングにより自動補正を行う方法にした。マップマッチングによる位置検出方式は、基本的にスタート地点を設定する必要がある。また、走行中に実際の道路と地図が異なることがあり、位置を見失う場合がある。その時は改めて位置の分かった地点でスタート地点の登録が必要になる。これは、ユーザーが行うことになるため、できるだけその回数を減らし、また簡単に行えるようにしなければならなかった。このためディスプレーでの表示内容は見易く、かつスタート位置の設定等は簡単な操作で扱える必要があった。したがって、自車位置検出や経路誘導・経路案内を行うためのソフトウエアのほか、ディスプレーに表示および操作するためのソフトウエアがとても重要となってきた。また、このナビシステムでは表示用のほかマップマッチング用のデジタル地図が必要となったが、これも当時は世の中になく自ら作ることになった(後述)。さらに、ナビ用ディスプレーは、ナビ以外に車の情報表示装置として重要な役割があり、それらが表示できるようにソフトウエアの開発は行われた。ナビの目標価格は5万円、10万円、20万円といった金額になるが、ディスプレーをカラーで大きなものにする限りは、コスト低減に限界がある。基本的にナビは高価な商品といえる。アフターマーケットに出ていた後付けタイプのディスプレーは安いが小さいために視認性が悪く、安全を確保することが必要なカーメーカー純正のシステムにはそぐわないものであり、採用することはできなかった。2)方位検出ジャイロの開発①光ファイバージャイロ[6]の開発車の旋回角度をはかるセンサーとして、両輪の回転数差を求める方式は必ずしも精度は良くなく、当初のナビでは図2 カーナビゲーションシステム(1989年日産シーマのカタログより、日産自動車(株)提供)

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