Vol.3 No.4 2010
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研究論文:日本全土の元素分布の調査とその活用(今井)−291−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)地殻表層と土壌の定義の違いですが、地殻の厚さは陸地と海域で異なり数kmから数十kmです。「地殻表層」とは曖昧ですが1 km以内の数十~数百mではないかと思います。これに対して土壌は表層の有機層からA層、B層、C層と続きますが数cm~数十cm(数m)の単位です。河川堆積物に占める土壌の混入割合については場所により異なり、また川に削り込むのは表層の割合が高いことが考えられますが、上記の層の厚さの差が目安になり、割合はそれほど大きくないと思います。しかし結局の所、土壌も基本的には周辺の岩石が風化してできたものであり、外部からの混入やさまざまな人為的な影響はあっても基盤の岩石・堆積物と化学組成は大きく異ならないことが多いと思います。土壌試料の採取点の選び方ですが、設定した試料数と採取すべき面積から試料密度が求まります。この研究では約10 kmメッシュです。したがって10 km×10 kmから1個の試料を採取することが基本ですが、全国図を作成するこの研究では試料採取密度が粗いため代表する採取点は慎重に選びました。すなわち、地質図と土壌図を見比べながら可能な限り各地質区分・土壌区分を代表すると思われる地点を選ぶようにしました。結果として河川堆積物と土壌を用いた地球化学図は比較的よく一致する結果が得られました。しかし、採取密度がより高い場合は、土壌は碁盤の目のようにメッシュ状に採取するのが基本だと思います。議論6 採取試料の保存と再調査質問(小野 晃)海底堆積物の調査では、過去に産総研が採取し、保存していた試料を活用して分析に供したと書かれています。研究の継続性、総合性、相互利用性を遺憾なく発揮した点で組織の優れた機能と体制を示したものと思います。今回の研究では陸域と海域で新たに採取した試料も同様に、たとえば将来より詳細な分析が必要になった時等のために、地質標本館等に保管しておくという理解でよろしいでしょうか。回答(今井 登)全国の海底堆積物の採取につきましては、地球化学図の研究グループ内に沿岸海域プロジェクトの海底堆積物採取の責任者と研究者も加わりました。したがって、過去に採取した海底堆積物試料の資産を十分に生かせたと共に、欠けていた海域の試料を今回採取できたことで全国セットとして揃えることができ、沿岸海域プロジェクトの方にも少なからぬ貢献ができたと自負しています。地球化学図プロジェクトで採取した河川堆積物3,000個、海底堆積物5,000個、土壌3,000個は保存庫に分類・保存されていつでも利用できるようになっています。これだけの数の化学組成既知の試料が全国セットとして利用できる形で保管されているのはたいへん貴重な財産です。科学警察研究所の全国土壌データベース作りや、名古屋大学のストロンチウム同位体比全国マップ作り等、実際にこれまでも外部の方に利用されてきました。地質調査関連試料は原則として地質標本館に登録して保管することになっており、ご指摘のように地球化学図の試料も地質標本館に登録して保存いたします。仙台河川堆積物の広域代表性川の合流点手前の39番の試料はその上流域の岩石・堆積物を削剥・混合して平均化し、上流域全体を代表していると考えられる。39番の流域39番の試料で上流域を代表させることができる8 ㎞642039番の流域の試料の亜鉛とリンの濃度平均値と近い値になるP205 (%)Zn (ppm)0.10.080.060.040.0200501001502002503939平均値Zn (ppm)01000図b 散布図

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