Vol.3 No.4 2010
25/74
研研究論文:単結晶ダイヤモンド・ウェハの開発(茶谷原ほか)−280−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)山田 英明(やまだ ひであき)2002年新潟大学大学院自然科学研究科博士後期課程修了。博士(理学)。同年京都大学大学院エネルギー科学研究科産学連携研究員。2004年産業技術総合研究所ダイヤモンド研究センター産総研特別研究員。2006年同センター研究員。これまでに、核融合プラズマやプロセスプラズマの理論・シミュレーション研究および、単結晶ダイヤモンドの合成技術開発に携わってきた。本論文では、プラズマCVDのシミュレーションおよびモザイク結晶の作製に従事。査読者との議論議論1 開発目標、既往技術の比較などの明確化コメント(五十嵐 一男:国立高等専門学校機構、一条 久夫:つくば研究支援センター)本論文では、単結晶ダイヤモンド・ウェハの応用先について必ずしも明示されていませんが、例えば、パワーデバイス用基板に用いることをターゲットとしたものであれば、副題にあるように大型化に向けた目標とするサイズ、それに対して現在はどこのレベルにあるのか、また、ダイレクトウェハ化技術の優位性と大型化への適用性などを付加することで、シナリオ性の高い論文になると考えます。また、高速成長、低欠陥/結晶性、大型化という課題に応える技術開発が行われていますが、これらに対する既往技術・他技術との数値的比較をされると(どれ位高速になったかなど)、本研究の成果が理解し易くなるのではないでしょうか。回答(茶谷原 昭義)開発目的は、次世代パワーデバイス用基板としての利用です。デバイス試作ラインに必要な2インチウェハの実現を目指しています。現状では、超高圧合成により最大1 cm程度の単結晶基板が作製可能ですが、Ib型と呼ばれるもので、100~200万円程度と高価です。サイズと価格が利用を困難にしています。ダイレクトウェハ化技術は、多結晶では直径2インチ基板に適用できたので、少なくとも目標のサイズまでは可能と思われ、また1桁以上の低価格化が期待されます。既往技術・他技術との数値的比較につきましては、結晶性を除いて、本文のそれぞれの対応箇所に比較が容易なように数値を含む文章を付加しました。議論2 ウェハの品質質問(五十嵐 一男)単結晶ダイヤモンド・ウェハを何に適用するかによりますが、用途毎に品質(透明性、不純物濃度、結晶性・欠陥濃度など)が保証されなければならないと考えます。マイクロ波プラズマCVD法で作製された現状のウェハは、品質的にはどのレベルにあると理解してよいでしょうか。もし、さらなる品質の向上が必要であるとすればキー技術にはどのようなことが望まれるでしょうか。回答(茶谷原 昭義)マイクロ波プラズマCVD法を用いて単結晶ダイヤモンドを合成する場合、我々は極微量窒素の添加を行っており、これにより異常核と呼ばれるマクロな欠陥を抑制しています。X線ロッキングカーブの半値幅から超高圧合成Ib型と同程度の結晶性が得られています。半導体用途では、従来Ib型の基板を使用して行われてきたデバイス開発研究用の代替としては問題ないレベルです。さらに研究を発展させるためには、転位密度の低減が必要で、エピ成長の前処理などが重要だと認識しております。現状の電解エッチングを用いたダイレクトウェハ化技術の欠点は、導電性基板の分離ができないことです。したがって、これを可能にする技術が切望されます。光学用途では、可視域に窒素に関連した吸収があるので問題です。窒素添加なしで成長すると透明にできますが、現状では10μm/時以下の成長速度となります。または、窒素添加ダイヤモンドを超高圧処理すると無色化できます。いずれにしても、コストが問題となってきます。議論3 ウェハ化技術における選択・統合コメント(一条 久夫)マイクロ波プラズマCVD法を採用した理由が記述されていますので、ウェハ化に関しても、種々の技術の選択・統合について簡単に記されるとSynthesiology論文としての重要性が明確になるように思います。回答(茶谷原 昭義)ウェハ化において、新規に切断技術の革新がない限り、レーザー切断と「ダイレクトウェハ化」以外に選択の余地はありません。レーザー切断の場合、ダイヤモンドを1 cm切り進むためには幅1 mm程度が切り代として消滅します。高速化したといっても現状の成長速度50μm/時ではコスト上問題となり、さらに1インチ以上を切断するとなると切り代は許されなくなります。したがって、現時点では「ダイレクトウェハ化」が現実的な製造方法として最も適していると考えています。このような課題があることを加工分野の方々にご承知いただき、適応できそうな切断技術の提案をしていただけると幸いです。モザイクウェハについては、繰返し成長法による単結晶の大型化は引き続いて実施する計画ですが、現状では大型化をさらに加速する良案がありません。これに対してモザイク法は横方向に結合させますので、大面積成長が可能なCVD法とマッチングした方法であり、早急な大型化が可能です。また、結晶片について低欠陥化されれば、それを「コピー」して結合すれば原理的にモザイクウェハも即座に高品質化できる利点があるため、モザイク化を直近の重点課題として取組みます。
元のページ