Vol.3 No.4 2010
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研究論文:単結晶ダイヤモンド・ウェハの開発(茶谷原ほか)−277−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)ない。それで種結晶と成長層が分離し、板状ダイヤモンドとなる(図7、8)。種結晶のごく一部は分離時に無くなるが、この厚さはイオン注入深さの1μm程度とわずかである。このことから、通常の種結晶を何度も繰り返して利用することができると共に、切り離した結晶を種結晶として使用していくことも可能である。このような分離手法はこれまでいくつかの研究機関で研究されてきた[33]-[46]が、いずれも小さい形状に限られ、エッチングの時間が長いという問題があった。文献で確認できる最大形状でも3~4 mm角程度で、従来技術の壁があった。筆者らは、エッチング方法の検討を進めた結果、これを飛躍的に大面積化し、かつ高速化する方法を見出した。原理的に形状のスケールアップや大量処理に問題がないので、将来のダイヤモンドウェハ製造技術として有望と考えられる。モザイク法[47]-[54]は、数ミリ角の小型単結晶ダイヤモンド板を密着して敷詰め、この上にCVD成長させて結合させる手法である。結合部は素子として利用できないが、全体をウェハ形状とし半導体プロセスに流す意図で開発されている。これまでの接合部では異常粒子が発生していたが、ダイレクトウェハ化技術を用いて同一の種結晶から作製した複数の結晶片を結合させると接合部の異常粒子を激減できることが見い出された[55]。結晶片の面方位などが自動的に揃うためと考えている。私達はこの方法を用いて1インチ相当のモザイクウェハを作製して、さらにモザイクウェハを種結晶としてダイレクトウェハ化技術を適用することによりその量産方法にも目処をつけた。モザイク法は容易に大型化が可能であり、早急な大型化の要求に対応できる手段である。3.5 スマートカットとダイレクトウェハ化高速かつ低消費電力でデバイスを動作させることが可能なSOI(Silicon on Insulator)ウェハの製造方法の一つとして、水素イオン注入を利用した切断手法が利用されている[56]。水素脆化現象を利用したこの切断法は、「スマートカット」または「イオンカット」と呼ばれ、シリコンなどの半導体単結晶ウェハの表面をサブミクロン~ミクロンオーダーの厚み(イオン注入深さに対応する)で剥がす加工技術である。スマートカットによるSOIウェハ作製の基本プロセスは以下のように説明される。①シリコンウェハ表面に熱酸化によりSiO2絶縁層を形成する。②水素イオン注入を行う。③親水化処理を施し、ほかのシリコンウェハと重ね合わせて室温で接合する。④400~600 ℃で熱処理を行い、水素イオン注入したウェハ表面から数ミクロン厚さで剥離させる。水素が集まって空隙ができることによる。⑤接合界面を1000 ℃以上で熱処理を行う。⑥剥離したウェハ表面を研磨する。以上のプロセスは貼り合わせ法と呼ばれる。また、イオン注入を利用したSOIウェハには、ほかにSIMOX(Separation by implanted oxygen)ウェハがあるが、こちらはシリコンウェハに酸素イオンを注入した後、高温度で熱処理することにより、注入された酸素とウェハのシリコンから埋め込み酸化膜を形成する方法であり、剥離は行わない。私達は、シリコンウェハへの高温炭素イオン注入を用いた埋め込みSiC層形成[57][58]の経験から、上述のイオン注入応用技術の知識があり、難加工材であるダイヤモンドをウェハ化する手段としてイオン注入の利用を検討した。SOIのような薄膜は必ずしも必要でなく、厚さ0.3 mm以上のウェハを製造するためには、イオン注入後、エピタキシャル成長する必要がある。スマートカットでは、成長温度1150 ℃程度での熱処理によって成長中に剥離する可能性がある。それを避けるためダイレクトウェハ化では、注入層が黒鉛に変態する注入量を用いており、成長後のエッチングによって黒鉛層を除去することで成長層を分離している。なお、黒鉛層のエッチングに関しては、Marchywkaらの先駆的な研究がある[59]。4 おわりに高温高圧法で入手できる最大サイズ1 cm角を越えて、単結晶で12 mm、モザイク結晶で25 mmサイズまでプラ エピ成長層エピ成長層エピ成長層分離種結晶種結晶種結晶種結晶種結晶イオン注入黒鉛層欠陥層の導入アニール&黒鉛化(省略可)エピ成長黒鉛層除去再利用ウェハ利用厚く成長すると種結晶として利用可能厚さ 0.3~0.5 mm図7 ダイレクトウェハ化技術 図8 ダイレクトウェハ化技術を用いて作製した単結晶ダイヤモンド板

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