Vol.3 No.4 2010
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研究論文:単結晶ダイヤモンド・ウェハの開発(茶谷原ほか)−275−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)基板ホルダーについて成長温度が異なっているが、この範囲の温度差による成長速度の変化は少ないことが実験から分かっているので、図2は窒素添加効果とともに、基板ホルダーの形状により成長速度が大きく変化することを示している。基板ホルダーの形状によってマイクロ波電界が集中する度合いが変化し、集中したほうが基板周辺のプラズマ密度が高くなり高速化する。3.2 異常成長粒子発生の抑制エピタキシャル成長基板の結晶面方位として{100}面がよく用いられる。この理由は、他の面方位と比較して双晶が発生しにくいことや、製造上、{111}面の研磨が困難なことが理由として挙げられる。この{100}面上にエピタキシャル成長する場合、成長条件が適切でないと異常核と呼ばれる異常成長粒子が発生する。この異常核は多くの場合、{100}面上に発生した{111}配向の粒子を中心にしたピラミッド形状をとる。この起源としては種結晶中の転位、研磨傷、エッチピット、成長中のゆらぎなどが挙げられている。このような異常核の発生および拡大を抑制する方法として以下に述べるαパラメータ制御、オフ基板を用いるステップフロー成長および窒素添加が有効である。1)αパラメータ制御ダイヤモンド結晶成長においてファセット(結晶自形面)として現われるのは、ほとんど{111}面と{100}面である。それらの面に垂直な方向の成長速度をV100、V111とすると、αパラメータはα=√3 V100/V111で定義される[27][28]。V100、V111は圧力、メタン濃度、温度などの成長条件に対する依存性が異なるため、αは成長条件によって変化する。多結晶合成の場合、このαの変化は配向性の制御に利用される。つまり、特定の配向性を持たない核から成長をはじめても成長が進み、膜厚が増大するにしたがって成長表面付近の結晶配向性はαによって決まった向きに配向する。また、結晶粒の形状もαによって決定される。α=3程度の場合、多結晶成長では<100>配向となり、単結晶成長面として多用される{100}面上での成長では異常核発生の抑制に有効である。この場合、たとえ異常核の起点が存在してその上に{111}配向粒子が成長しようとしても、その周りの{100}の成長速度が速いために埋め込まれてしまい、大きな異常粒子に成長することができない。ただし、この条件では基板上の転位や成長中に発生した欠陥は成長方向に引継がれ、貫通転位などとして残る。また装置ごとにαは異なるので、まず成長条件を変化させてαマッピングを行い、所定のαが得られる条件を探索することがよく行われる。2)オフ基板上のステップフロー{100}面から数度以内で傾いた面で研磨されたいわゆるオフ基板上で成長を行うと、ステップフロー成長することが知られている。このときテラス上で異常核が成長するより早くステップがこの箇所を通過すると異常核が成長できず、平坦な成長が期待される。半導体グレードの成膜を行う場合に有効な手段である[29]。大型結晶成長の場合は、オフ基板を種結晶として用いて成長を開始しても、最初は薄膜成長と同様に基板全面でステップ成長が起こるが、基板の端からオフが解消されて、最終的には成長表面全面がほとんど{100}面となってしまう[30]。当然、そうなった後の異常核抑制効果は期待できない。3)窒素添加効果{100}面上でのエピタキシャル成長時、原料ガスに微量の窒素ガスを添加すると異常核の発生を抑制できる。極微量添加時は、窒素添加によってαが増大する。添加量が増加してくると、もはや{111}面は正常に成長することができず多結晶になってしまう。いずれにしても{111}面の成長を阻害することになり、結果として異常核の抑制につながる。高速成長を長時間継続して大型単結晶を合成する場合に用いられている手段である。しかし、窒素を添加すると深いドナー準位とキャリアトラップが導入されて絶縁体となる。また、窒素に伴う欠陥により可視光領域に吸収が現われる。窒素添加による{111}面成長の抑制効果は、{111}面上に窒素原子が3配位で強力に結合し、窒素で覆われた{111}面上には炭素原子が結合できないことが関係していると思われる[22][26]。図3に各窒素流量における成長表面の微分干渉顕微鏡像を示す。窒素を添加しない場合、ピラミッド型の突起(成長丘)が見られ、{100}面上にCVD法で合成されたダイヤモンドの典型的な表面形態である。この成長丘は大きな構造欠陥として結晶中に残り、長時間エピタキシャル成長による厚膜化を阻害する要因となっている。これに対し窒素を添加すると成長丘は全く見られず、代わりにマクロなステップバンチングによる表面荒れが観察されるようになる。さらに窒素を添加するとステップが直線状でなくなり乱れてくる。このように窒素を添加すると表面は荒れるが、成長丘が皆無となるので長時間成長による厚膜化・バルク化が可能となる。従来は異常核が発生してCVD法による単結晶成長自体が困難だったが、極微量窒素添加の効果により異常成長粒子発生が抑制できた結果、CVD法によるバルク単結晶成長が可能となった。3.3 大型化約1 cm角の基板上に長時間合成された試料の写真を図4に示す。窒素添加による{100}成長では、この写真の
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