Vol.3 No.4 2010
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研研究論文:単結晶ダイヤモンド・ウェハの開発(茶谷原ほか)−274−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)で多結晶ダイヤモンドを成長させようとする場合、成長に先立って外部でダイヤモンド砥粒を用いて有機溶剤中で超音波処理または機械的研磨によって基板を前処理する。「種付け」処理と呼ばれ、基板上に微細なダイヤモンド粒子が埋め込まれ、これが種結晶となって成長すると考えられている。これに代わる方法がBENである。基板は炭化水素濃度が比較的高い条件のプラズマ中で負にバイアスを印加される。この方法により高密度のダイヤモンド核が形成される。形成した核の上にダイヤモンドを成長させるために、BENプロセスに続いて、バイアスを印加しない通常の条件で成長が行われる。BENプロセス中に形成した安定な部分のみが生き残り成長を続ける。種付け処理後に成長した薄膜は、成長面内では結晶方位がランダムに向いた多結晶となるが、BENでは、種結晶の結晶方位が基板と整合する場合があり、その上に成長したダイヤモンド薄膜も配向する。これにより単結晶イリジウムIr、白金Pt 、SiC上へのヘテロエピタキシャル成長が可能となる。SiやSiCウェハなど大口径基板が入手できる現在、ヘテロエピタキシャル成長を利用した大型単結晶基板の製品化が試みられているが、結晶性の改善が課題である。私達は、熱フィラメント法より合成面積は小さいが成長速度が比較的速く、長時間合成が可能なマイクロ波プラズマCVD法を使い、結晶性に優れるホモエピタキシャル成長を用いた大型ダイヤモンド結晶作製を目指した。3 マイクロ波プラズマCVD法によるダイヤモンド単結晶の合成図1に示すような一般的なASTeX型マイクロ波プラズマCVD装置(2.45 GHz、5 kW、セキテクノトロン製)を用いてダイヤモンド単結晶の高速合成を行った。マイクロ波プラズマCVD装置に関しては、文献[21]を参照願いたい。高速に成長させるためには高密度なプラズマ生成が有効だと考え、基板上にプラズマを集中させるようMo製の基板ホルダーの形状が工夫されている[22]-[25]。種結晶基板として、高温高圧合成ダイヤモンドIb型{100}面を用いた。原料ガスとしてメタンおよび水素を用い、それぞれの流量60, 500 sccm、圧力21 kPa、基板温度1100~1200 ℃程度の成長条件とした。基板はプラズマによって昇温している。プラズマからの発光は光ファイバーを用いて分光器に導かれモニターされている。合成した成長層は、精密X線回折によるロッキングカーブ法、ラマン散乱分光法などにより評価した。合成された単結晶ダイヤモンドの結晶品質を端的に表す(400)面ロッキングカーブ半値幅は、これまでの最小のもので7.6秒であり、これは高品質な高温高圧合成Ibの値に匹敵する。3.1 成長速度既に述べたようにCVD法が近年まで主に多結晶ダイヤモンド薄膜の合成に使用され、バルク結晶の合成に使用されなかった理由の一つは、成長速度が遅いからである。例えば、Siインゴットの引上げ法で液相成長1~2 mm/分、昇華法によるSiCの0.2~1 mm/時に比較して、ダイヤモンドの成長速度数μm/時はバルク結晶法としてとても遅い。プラズマCVD法におけるダイヤモンドの成長速度を増大させるためには、原料ガス圧力を高くし、さらに高電力を投入してプラズマを高密度化して成長表面へ供給される活性種を増やすことが必要である。また窒素添加による成長速度の増加効果が、既に多数の報告がなされている[22][26]。窒素流量に対する成長速度依存性を図2に示す。図中には成長に用いた2種類の基板ホルダーが示されている。どちらの基板ホルダーを用いた場合も窒素流量の増加とともに成長速度が増加している。従来のマイクロ波CVD法での成長速度が10μm/時以下だったのに対し、プラズマの高密度化と窒素添加の双方の効果により、50~100μm/時に到った。それぞれの導波管石英窓マグネトロン5 kW2.45 GHz基板ホルダー(Mo)サセプター(Mo)冷却水冷却水ガス導入口真空ポンプ光ファイバープラズマ分光器冷却水放射温度計窒素流量(sccm)成長速度(µm/h)1220 ℃1600-2600 W1155 ℃1600-1900 W21 kPaCH4:60 sccmH2:50000213101201101009080706050403020図1 ASTeX型マイクロ波プラズマCVD装置図2 成長速度の窒素流量依存性

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