Vol.3 No.4 2010
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研究論文:SiC半導体のパワーデバイス開発と実用化への戦略(荒井)−268−Synthesiology Vol.3 No.4(2010)託費による産総研内のほかの研究ユニットとの先進的な共同研究は、施設の充実とさらなる展開に大きな役割を果たした(「超低損失電力モジュール技術開発」(2002~2006年度)、 「オンCPU高速・大容量電源技術開発」(2004~2006年度)、 「電力平準化システム運用・制御技術開発」(2003~2006年度))。また、取得した特許を統合する「IPインテグレーション」研究制度によって先取り研究もできたことは、超高耐電圧デバイスの開発等、これからの研究開発を進める上で潜在的な力となった。SiCのパワーデバイス開発を軸に、これからの省エネルギーの重要な共通基盤技術であるパワーエレクトロニクスの国内における中核的研究センターを産総研につくるべきだとの考えへの見通しは2008年までには得られなかった。その大きな理由は、構築した研究開発試作ラインでは想定される応用分野に対して実デバイスの供給が十分に行われる程度にデバイス試作のレベルが上がっていなかったためである。その実現のためにはデバイスファンドリーの構築と、デバイスの性能に対して要求仕様を明示できるシステム応用の研究開発者の参画・連携が不可欠と考えている。2008年以降になって、産業変革研究イニシャティブのように前者の可能性は見えている。後者の実現も期待したい。4.2.2 省エネルギー提案公募課題でのデバイス技術の向上最初の5年の基盤開発プロジェクトの後、経済産業省のプロジェクト担当部署は実用化を急ぎ、プロジェクトでの基盤研究の継続を認めなかった。その時期に「省エネルギー技術戦略」注4において、将来技術として取り上げてもらうとともに、姿を見せ始めたSiCパワーデバイスに対し、官からは省エネへの期待を、ユーザー企業からは応用分野を語ってもらうシンポジウムを開きSiC実用化への気運を高めた注5。そのかいもあり、3年間のNEDO省エネルギー提案公募型課題5件を産官連携で行うことができた。この3年間では、企業においては数Aクラスのデバイスを実証することができ、産総研においてはMOSFETが超低損失であることの原理的実証が行えた。また、企業と共同して、いち早く変換器での性能実証に結び付けられる高性能ショットキーバリアダイオードや、PINダイオードの開発ができた。これらの成果がNEDO「インバータ」プロジェクトへの展開に継がった。4.2.3 エシキャットジャパン(LLP)の設立デバイス作製には、不純物濃度を制御した高品質のエピ膜を形成することが不可欠であるが、エピウェハの供給は米国クリー社の独占状態にあった。2005年度にエピ成長に経験と実力のある昭和電工(株)と(財)電力中央研究所、産総研の共同研究支援を前提に3者でLLP「エシキャットジャパン」を立ち上げた。産総研が開発したカーボン面・微小オフ角面エピウェハの実用化を技術課題とした。前出「インバータ」プロジェクトは、直接的にはウェハ開発を含んでいないが、国内ウェハメーカーを中心にウェハ調達とデバイス性能とウェハ品質の相関についての情報交換による開発支援を行った。期待に応え、国内でも高品質の4インチ基板の供給が開始され、プロジェクトにおいては、最終局面でショットキーバリアダイオードの4インチ試作でエピウェハ品質が実用レベルにあることを実証した。こうした活動を通じて国内におけるエピウェハサプライチェーンの形成に貢献した。4.2.4 GaNの研究開発との共存2001年以降の活動において、SiCかGaNかの選択を迫られたことがよくあったが、両者の得失を常に比較しながら、パワーエレクトロニクスの革新を思い描くことは、意義のあることと主張してきた。これまでの2回のSiCのNEDOプロジェクトにおいても、SiCとの比較をするために小さな課題としてGaNデバイス課題を含めてきた。現時点では、SiCがkV級の大容量デバイスに適し、GaNは移動度の大きな利点から、横型パワー素子としてkV以下の比較的低耐圧領域の高速スイッチング素子として有望と判断している。産総研におけるGaN研究は、携帯電話の基地局の低消費電力化を直近の応用とするGaN高周波デバイスの実用化のプロジェクトにおいて、共同研究の集中研究方式として材料研究の側面からプロジェクトを支えた(「窒化物半導体低消費電力型高周波デバイス開発」(2002年度~2006年度)、NEDO)。また、GaNデバイスは産総研としてはやや遅れてデバイスフェーズに展開し、NEDOの省エネルギー提案公募の課題においてACアダプター用の低損失デバイスの開発で可能性を明らかにした。GaNは低コストウェハが期待できるSiウェハ上のGaNヘテロ基板の高品質化が実用化の大きなカギと思われる。2008年以降は、継続してGaNデバイスの先進的な応用開拓をめざした研究が進められている。4.2.5 デバイスプロセスラインの構築材料研究からスタートし、デバイス、変換器、システム化と戦線を拡大したために、人材、施設・設備とも常に不足で、その充実をはかることが必須であった。クリーンルーム施設(リソグラフィー等の重要機器を含む)については、初期においては産総研内のエレクトロニクス研究部門に全面的に依存した。変換器での実証を狙った実デバイス・回路・モジュール開発を進めるための研究開発資金の確保は、産総研の1研究ユニットとしては限界に近いものがあった。2回に亘るNEDOプロジェクトにおける集中研究の役割とNEDOの提案公募課題への積極的な応募採択、
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