Vol.3 No.3 2010
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研究論文:映像の安心な利用を可能にする映像酔い評価システムの開発(氏家)−183−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)評価の精度を向上させる。(4)(2)に戻ることを何度か繰り返す。(5)一定回数(4)を経た後に、映像酔い評価システムを業界関係者に試用してもらい、その試用アンケートを基に、ユーザー・インタフェースの使いやすさの向上を図る。研究開発の進め方によっては、一般的な映像における酔いの特性を、数多くの映像を用いて十分に検証しておき、これを基にシステムの構築を図る方法も考えられる。しかし、映像酔いには数多くの映像要因がかかわるとともに、その時間的順序効果もあり、本質的な影響要因の解明には無数の条件の組み合わせを実現した無数の映像を用いる必要が生じる。さらに、個人差の影響を考慮すると多人数の実験参加者が必要である。したがって、実験回数は膨大なものとなり、その実施はほぼ不可能であると言ってよい。このような検討結果から、本研究開発では迅速なシステム構築を目指すために、基礎実験で明らかにされた映像酔いの基本特性を基盤としてまずシステムを構築し、その上で酔いを生じやすい一般的な映像を用いてシステムの評価精度の向上を図る手法を採用した。4 技術要素と課題映像酔い評価システムの研究開発を実施するために選択した技術要素と課題は以下の四つである。システムの構築におけるこれら要素技術の関係を図4に示す。(1)視覚的グローバル運動による生体影響に関する知見(2)映像の視覚的グローバル運動解析(3)映像酔い評価モデル(4)映像制作手法に基づく酔いやすい映像制作(5)映像酔い評価モデル精度向上のための生体影響計測4.1 視覚的グローバル運動による生体影響に関する知見映像酔いの影響要因として、さまざまなものが挙げられるが、映像酔い評価システムを構築するために対象とすべき第1の影響要因は視覚的グローバル運動である。視覚的グローバル運動とは、視野の大部分の領域に生じる全体としてまとまった動きのことで、基本的には、観察者の身体とその周囲の環境との相対的な運動によって生じる視野内の視覚的運動である。したがって、視覚的グローバル運動が大視野で提示されるとあたかも観察者自身が運動しているように感じられる。観察者と周囲環境との相対的な運動については、一般的に観察者を中心とする直交座標系に映像映像および結果の出力映像酔い評価モデル応答出力の統合化時系列応答出力生体影響基盤データ視覚的グローバル運動解析グローバルモーションベクトル解析ローカルモーションベクトル解析映像入力部インターフェース部ユーザー・インタフェースの使いやすさ向上複数回繰り返し両者を比較しシステムの構成要素を改良生体への影響を計測映像視聴実験映像酔い評価モデルによる評価結果映像の視覚的グローバル運動解析酔いやすい映像システム全体を構成図2 映像酔い評価システムの構成図3 映像酔い評価システムの研究開発手順性別、年齢、視聴の構え、姿勢運動酔い感受性前庭動眼反射や視運動性眼振の特性時間解像度、表示器の携帯性(時間的位置変化)視距離、環境照度、提示サイズ、空間解像度、輝度/コントラスト/色度の範囲、両眼立体視提示時間、予測情報空間周波数成分、輝度、コントラスト、色度成分両眼立体視、透視図法の整合性、その他奥行き手がかりの存在その他感受性感覚系時間的空間的時間的2D空間3D空間詳細項目二次要因速度の空間分布、時間周波数、振幅運動種類、速度、時間周波数、振幅詳細項目ローカル運動グローバル運動一次要因視聴者属性映像表示条件映像コンテンツ表1 映像酔いの影響要因
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