Vol.3 No.3 2010
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−245−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)インタビュー:イノベーションを推進する根本的エンジニアリング赤松 いったん見方を切り換えて、何をなすべきかという議論をする。そういう訓練が日本では足りないのかなという気もします。鈴木 先日、日本工学アカデミーとイギリスの王立工学アカデミーとで、町で人の写真を撮ってセキュリティ対策をするというシンポジウムがありました。日本からはテレビカメラでどうやってパターン認識をするかとか、どういう角度でカメラを置いたらいいかという議論が多いのですが、イギリスは、制度をどうするかと。個人の情報なので、それをどうやってプロテクトしながら国としてのセキュリティを生かしていくかという制度そのものにかかわる議論から入るのです。その辺がものの見方が少し違っているのかなという気がしました。赤松 技術系の人間が制度のところまで口を出す習慣がない、というところがありますね。役割として、技術関係をやればいいのだと。鈴木 そう、おっしゃるとおりです。そこでいいのだと思ってしまうのです。そこの枠をうまく取り払えるような教育ができると面白いですね。赤松 視点の切り換えみたいなものが大事だと思うのですが、エンジニアも同じところにずっといると視点がどうしても固定化しがちです。GEではいろいろな技術があると思うのですが、違う部署に行くということはあるのでしょうか。鈴木 GEでは、わりと人のモビリティが高くて、セールスをやっていた人がマーケティングに行くとか、私達は事業開発と言っているんですけれども、アクイジション(Acquisition)の担当になるとか、あるいはプロジェクトマネジメントをやるとか、いろいろな業種を経験して、その中で自分のエクスパータイズ(Expertise)を高めています。18カ月あるポジションにいると、ほかに移る権利が発生するのです。赤松 権利なのですか。この動くことを推進するようなインセンティブはあるのですか。鈴木 人材募集をするサイトがあります。COS(キャリア機会システム)といって、どの国のどの身分の、どのような職種が人を求めているかが表示されています。容易に異動先情報が得られるようになっているのです。また、ポジションが変わるときに給料の仕組みが変わりますから、それは個人にとってとても大きなインセンティブです。能力のある人であれば、給料がそこで必ず上がりますので強い動機になります。もちろん、逆にポジションがなくなってしまうということもあります。シンセシオロジーと根本的エンジニアリングの接点赤松 根本的エンジニアリングによるイノベーションの推進を考えるとき、潜在的な課題発見が重要であり、そのためには視点の切り換えも大切だということですが、事例研究以外にどんなことが考えられるでしょうか。鈴木 まだ具体的なアイデアはないのですが、イノベーションの成功事例を持ってくるのがいいのか、あるいは失敗した例をどこまで見つけられるかわかりませんが、なぜイノベーションに結びつかなかったのか。逆にいうと、日本はものづくりが得意で、いいものがいっぱいできているけれども、その限界は何かというところを調査できると面白いと思います。WhatとHowに戻るのですが、“ものづくり”というと、“もの”と“つくり”の掛け算になっているでしょう。日本ではつくるほうばかり、Howのほうに力を入れているのだけれども、本当は“もの”のほう、Whatが大事なのではないか。WhatとHowがあって、初めて“ものづくり”になっていると思うのです。アメリカは、どういうものをつくるのかというところがとても強いので、つくり方が多少弱くてもそれはどこかにソーシングすればいい。たくさん作っているうちによいものができるようになる。結局、掛け算すると大きなイノベーションにつながってきます。赤松 企業の中で、エンジニアにアイデアがあっても、それが製品化するプロセスにのらなかったり、マネージャークラスの意思決定が既存型の製品だけにしかゴーサインを出さないなど、これまでの発想と違うものを製品化すること鈴木 浩 氏

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