Vol.3 No.3 2010
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−243−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)インタビュー:イノベーションを推進する根本的エンジニアリングをもう一回やりましょうということになりました。GEに残っていた技術は、変圧器はあるけれども、遮断器や系統制御システムはない。では、ビジネスをするためにはどうしたらいいかというところから考えるわけです。技術としてはほとんどないわけですから、ない部分をどうするか。自分たちで研究開発するのか、あるいはどこかを買収するのか、あるいはパートナリングをするのかというオプションになる。日本の会社の場合は、変圧器の技術を持っていると、変圧器を中心にその周辺の製品をラインナップして電力でビジネスをしようと考える。このように全く違います。赤松 ボトムアップ型ではないですね。企業経営としてのやり方がそういうスタイルだということだと思うのですが、「会社としてはこういう方針がある。これをやりたい」といったときに、日本とアメリカでは現場のエンジニア自身もそういう発想の違いみたいなものはあるのでしょうか。鈴木 あると思います。原因はわかりませんが、教育もあるかもしれません。日本の小学校の算数は「5+7=?」と聞く。ところが、アメリカでは「?+?=10」というふうに前の2つの数字を埋めなさいという。5+7だったら、答えは12しかないでしょう。そういうふうな問題の与えられ方をされていて、それに慣れてしまっている、というような気がします。私が例としてよく挙げるのは、日本のエアコンです。これは、とても効率が高い。インバータを使ったり、ヒートポンプを使ったりして、とても緻密な技術を使っている。また、ハイブリッド自動車についても、ガソリンの内燃機関と電池のモーターがうまくコンバインしている。ああいうことができてしまうので、そこで解決しようとしてしまう。赤松 なるほど、日本の科学技術分野において、イノベーションのために欠けているものということで、根本的エンジニアリングが必要だということですね。鈴木 潜在的課題を見つけ、制約をはずして取り組むことを「根本的エンジニアリング」という名前にしました。他に候補として、ホロニックエンジニアリング、包括的エンジニアリング、生態学的エンジニアリング、トランスフォーマティングエンジニアリング、あるいは日本型コンバージングテクノロジー等々あったのですが、既存のエンジニアリングのもう一つ上のレベル、形而上学的なメタのエンジニアリングとしてもう一度定義し直そうということで、最終的には「根本的エンジニアリング」にしようと。“根本的”を英語にすると“radical”ですが、日本では“先鋭的な”という意味になってしまうので、英語では“Meta engineering ”という言い方をしています。根本的エンジニアリングとは四つのプロセスをスパイラルに循環させること赤松 根本的エンジニアリングでは課題を見つけるプロセスが大事だというお話がありました。鈴木 スタートポイントだということです。今、四つのプロセスと言っているのですが、潜在的な課題、埋もれている課題を見つけ、それに対して必要な科学技術を見つける。既存の科学技術で解決できなければ、分野や技術を融合する、そして、最終的に課題への取り組みをうまくインプリメントする。その中でまた新しい課題を見つける……というふうに、四つのプロセスがグルグル回るというイメージを大事にしていきたいと思っています。赤松 その「回る」ということなのですが、潜在的な課題を見出して、それに必要な技術を探して、統合して、実際に課題を解決する、そこで終わりになってもいいような気がするのですけれども、さらに新しい課題を見つけるというプロセスにもっていかなければいけないというふうに考えるのはなぜでしょうか。鈴木 イノベーションは継続しないと意味がないということが一つあります。グルグル回りながら、サイクリックに社会自身が良くなっていく、あるいはイノベーションが継続的に起きていくという、そういうところに結びつけたいということです。赤松 そういう意味では、フィードバック的な意味のサイクルというよりはスパイラル的な意味ですね。要するに、新しいものが導入されることによって、世の中が変わって、また別の潜在的な課題が出てくる。一番難しいのは、潜在的な課題発見というところだと思赤松 幹之 氏

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