Vol.3 No.3 2010
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−242−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)インタビュー:イノベーションを推進する根本的エンジニアリングけ、それに対してどういう科学技術が必要なのかというところが両方ともスタートポイントになっています。ただ、最終的な提言書を見ると、アメリカの場合にはNBIC(nano-bio-info-cogno)の四つの分野がこれから中核になってくるが、これらが単一の分野だけで社会的な課題解決ができるということではなくて、それらをうまく融合することが必要になるだろうと言っています。“Converging”とは“収束させる”という意味ですが、もともとNBICという四つの分野はそれぞれ独立して存在しているのですが、元のものが残っていて、それらをうまくコンバージするということです。赤松 要するに、一緒になって新しい分野ができるということではない、ということですね?鈴木 新しい分野ができてもいいけれども、元の分野も残していくということです。convergenceではなくて、なぜ、converg“ing”かというと、アメリカ人はダイナミックに動いていくというイメージを出したかったのではないでしょうか。ヨーロッパや韓国では、“Convergence technology”と言っているケースもあります。この辺は国の特徴が出ているのかなという気がします。日本のサッカーとかけて日本のイノベーションと解く赤松 アメリカのConverging Technologyというのは、“能力拡大”が一つのキーワードになっていて、技術ユートピア的な、未来を拓いていこうというところがあります。それに対して、欧州は、もう少し世の中の問題を把握しようという感じを受けます。ただ、NBICについて、具体的な課題や、何を解決したいかということが具体的には見えてこない気がするのです。タスクフォースにおいて、CTでは何が足りないという議論になったのでしょうか。鈴木 議論をしているとき、実はサッカーの日本代表チームのことがチラッと頭をよぎったのです。技術はとても素晴らしい、パス回しもうまい、ボールの支配率も国際試合で60 %くらいある、サイドチェンジもパスがうまくとおる。ところが、ゴール前に行くと、みんな、シュートしない。ですから、当然、点は入らない。よくてせいぜい引き分け。日本のサッカーが私達の今置かれているイノベーションの状況にとても近いのではないかと思ったのです。一方、得点できる、勝っている国は、個々の技術はもちろん優れているのですが、チームとしてうまい技術があまりあるわけではない。しかし、ゴール前のシュート力というか、ここで決めなければいけないというときの集中力がとても素晴らしい。そういうふうに考えていくと、イノベーションが継続して起きているアメリカでは、アメリカ人はわりと見えない課題を見つけるのがうまいので、答えを出すほうに問題点を見つけてそこを一生懸命やっているのではないか。日本人はある制約条件のもとで課題を与えられると、それに対する答えの見つけ方はうまいけれども、制約や条件がなくて、「何かを考えなさい」といわれたときにはとても弱いのではないか、ということです。見えている課題の背景にあるのは何なのだろうか、本当の課題は何なのだろうか、潜在的な課題は何なのだろうかというふうに、見えていない課題までうまくアプローチして、そこから解決策を見つけていかないと、得点はとれない。欠けているのは、見えない課題、潜在的な課題をうまく見つけてきて、それをいかに科学技術で解決できるかというところにつなげる、この辺がエンジニアリングとしての課題ではないかと思い至ったわけです。日本のエンジニアとアメリカのエンジニアでは発想が違う赤松 今、アメリカ人は課題を見つけることが得意であり、日本人は条件下での課題解決能力が優れているというお話がありました。GEにはアメリカのエンジニアと日本のエンジニアがおられると思うのですが、違いは感じられますか。鈴木 ものの発想の仕方の違いを感じます。日本の企業が何かビジネスをするとき、「うちはこういうものを持っている。これをどうやってビジネスに結びつけようか」と考える。ところが、GE流のやり方は、「GEとしてこういうビジネスをやりたい」というのがまずあるわけです。そのときに、うちにあるものは何か、ないものは何か、それをどうするかというところから、トップダウン的に物事がスタートします。日本の場合には、手に持っている技術をいかに新しい製品に結びつけていくかという、ボトムアップというか、それがとても強いです。赤松 ボトムアップ型のアプローチは、よく言えば「強みを生かす」ということになるのですが、このやり方は、高度経済成長期における多角化の教科書的なやり方でしたね。これが、必ずしもGEの場合はそうではないということですね。鈴木 ええ。私達はTAM(Total Available Market)という言い方をよく使います。例えば、GEは発電がとても強かったのですが、二、三十年前に送変電のネットワークビジネスをやめてしまった。ところが、世界では80兆円くらいの送変電のマーケットがあるので、送変電のビジネス
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