Vol.3 No.3 2010
61/84

研究論文:安全・安心のためのアニマルウォッチセンサーの開発(伊藤ほか)−237−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)以上述べたように、本研究では、高性能受信システムの採用による端末の簡略化によって、端末の小型軽量化、低消費電力化(長寿命化)、低コスト化を図っている。5 感染実験とプロトタイプシステム既に述べたように、本研究の重要なポイントの一つは、センサー端末の最適化のために、まずは鶏(の病変)をよく調べるということである。本研究プロジェクト開始時点で、既に我が国の養鶏場などで発生していた鳥インフルエンザが人類にとって大変な脅威であることが認識されていながら、鶏がH5N1に感染したら体温がどのように変化するのかさえ調べられていなかった。もちろん、養鶏場の鶏が健康時にどのような生活サイクルを刻み、感染によってそれがどのように変化するのかというデータも定性的なものしか存在していなかった。デジタルMEMSセンサーあるいはイベントドリブン型端末は、対象となるものの性質、本研究では鶏の生態がわかってはじめて実現できるものであり、研究チームでは感染実験などの動物実験を進めてきた。動物衛生研究所が実施した感染実験では、図7に示す体温挙動の結果などから、「高病原性鳥インフルエンザウイルスに感染した鶏の発熱や死亡時間は株間で異なる」こと[12]や、「鳥インフルエンザウイルスの鶏伝播性はウイルス排泄量と相関している」こと[13]が、無線センサー端末の活用で初めて明らかとなった[14]。なお、実験に用いたプロトタイプ端末は、感染実験や鶏舎実験において鶏の装着負担をできるだけ低減するため、外形1円玉サイズ、本体重量3 g以下(電池重量込み)であり、体温測定用の温度センサー、活動量モニタリング用加速度センサーを搭載するとともに、一定時間間隔(自由に設定可能)で体温・加速度データを取得・送信するタイムドリブン型の無線モジュールを搭載した。上記の感染実験では、体温データだけでなく、加速度データも記録されているが、これらの知見・データをもとに、体温パターンと活動量のパターン双方を用いる感染判別プログラムを開発し、従来と比較し、感染の疑いが早期に自動的に発見(認識)できるようになった。さらに、デジタル温度センサーのプローブ本数やそれぞれの閾値などが設定でき、活動量センサーについても適切な加速度閾値の設定が可能となる。また、感染伝播速度のデータを用いて伝播シミュレーションプログラムを構築し、端末濃度と感染の疑いを発見する時間との関係を調べ、モニタリングプログラムの開発に活かしている[3]。なお、このシミュレーションによって、例えば、3羽の異常により感染を疑う状況と判断するとした場合、5 %の鶏にセンサーを装着すれば、現状の行政で決められている見回り観察による報告時期よりも、山口株で2日間ほど早い検知が可能であることがわかっている。またこのような無線センシングシステムを鶏舎に適用した場合の課題を抽出するため、上記で用いたプロトタイプ端末を翼章型にすることにより、鶏へ容易に装着できるようにすA/chicken/Yamaguchi/7/2004(H5N1) A/duck/Yokohama/ aq10/2003(H5N1) A/chicken/Miyazaki/ K11/2007(H5N1) 横浜2003体温変動の推移ウイルス伝播の推移山口2004宮崎2007接種後経過時間(時間)体温 (℃)2530354045024487296120144168接種後経過時間(時間)体温 (℃)2530354045024487296120144168接種後経過時間(時間)体温 (℃)2530354045024487296120144168接種後経過時間(時間)体温 (℃)253035404504896144192240288336384接種後経過時間(時間)体温 (℃)253035404504896144192240288336384接種後経過時間(時間)体温 (℃)253035404504896144192240288336384別居鶏同居鶏接種鶏ウイルス株図7 感染実験により得られたデータ例

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です