Vol.3 No.3 2010
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研究論文:安全・安心のためのアニマルウォッチセンサーの開発(伊藤ほか)−236−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)一つである。もちろん、これら以外にも、基板のフレキシブル化やアンテナの小型化・フレキシブル化などが実用上重要であることは言うまでもない。4 アニマルウォッチセンサーのイメージ本研究プロジェクト終了時(2011年度末)に実現を予定している無線センサー端末の仕様は以下のとおりである。端末本体サイズ・重量:基板(フレキシブル)サイズ6×30 × 0.1 mm3、重量(電池含む)1 g程度装着方法:翼帯型センサー:デジタルバイメタル温度センサー、デジタル圧電加速度(活動量)センサー無線送信:周波数315 MHz帯(310~320 MHz)、変調方式GFSK、見通し通信距離10 m以上待機時消費電力:0.5 μW以下電源:酸化銀電池(1.55 V)本研究の無線センサー端末は、データ送信のみで受信の方は行わない。受信待ち受け電力が大きく、サイズやコストなど所要スペックを満たせないというのが一番の理由であるが、そもそも端末が受信を行う必要もないと考えるからでもある。端末側で受信を行う必要があるのは、端末間で通信したり、受信不良の場合に再送信要求を受信したりするためなどだが、今回のシステムでは、データ送信頻度が30分~1時間に1回程度、送信電文は10 bit以下と短いものを想定していることなどから、端末数が一万を超える数になったとしても、送信信号が衝突する確率はほとんどないと考えるからである。しかし、イベントドリブン型システムでは、1回の送信データの重要度は高いため、通信には高い信頼性が要求される。本研究では、境界条件の厳しい端末側のシステムをできるだけ簡素にするため、逆に受信機側を高度化するということを基本コンセプトにしている。このような考えのもと、本研究で受信方式として採用し、開発を行っているのが、ダイレクトコンバージョン(直接変換)方式である。これはソフトウエア無線とも呼ばれるものの一種で、基本的には上記で示した周波数帯域310~320 MHzの周波数スペクトル自体を取り込んでメモリに保存し、それを解析することで電文の解読を行おうというものである。私達はこのために同時多チャンネル受信機を試作して受信システムの開発を進めている。このようにすれば、周波数と送信データレートによる端末識別も可能であるし、先に述べたように、プリアンブルなどのオーバーヘッド部がなくてもデータ受信が可能となる。また、各端末からの受信信号強度の比較を行うことで、1 m以下の精度での端末の位置同定、すなわち端末のID管理を行わなくても、健康異常を来たした鶏の位置や病変の発生・拡大の様子を検出することも可能であると考えている。短電文化のもう一つのポイントが、受信頻度による活動量の推定である。例えば最も単純には、ある閾値を超える加速度が入力されるとONとなるようなスイッチを用意し、ONの回数が一定量に達すると1回電文送信を行うといったものである[11]。活動的であれば、送信間隔が短くなり、逆に活動が鈍い場合には送信間隔が長くなるため、受信時間間隔が活動状態を表すことになる。もちろんこの場合は1回の送信データそのものから活動状態に異常があるかどうかは分らないが、過去のデータと比較することにより、個体差も考慮した活動量のモニタリングが可能となる。このような方式によれば、電文中に活動量に関わるデータも入れる必要がなくなるため、究極的には信号送信時のデジタル温度センサーからの出力+パリティビットのみを送れば良いことになる。この受信システムの開発においては、同時多チャンネル受信機(プロトタイプ)試作と動作確認、電文解析基本ソフトウエアの有効性確認、端末位置同定アルゴリズムの開発などが終了しており、端末位置同定については理想環境においては1 m以下の精度が得られることが実験的に確かめられている。 新設計(ULP)型従来型③不要④端末の低消費電力化(重要度20 %)②一体化・カスタム化(重要度25 %)①デジタルMEMS化(重要度30 %)⑥小型化・フレキシブル化(重要度10 %)⑤フレキシブル化(重要度15 %)アンテナカスタムRF-IC活動量センサ温度センサ電池プリント回路基板アンテナRF-IC加速度センサ温度センサ増幅回路等マイコンプリント回路基板電池センサインターフェース回路単純処理(論理)回路高周波送信回路<10 nW0 nW<1 µW図6 超低消費電力(ULP)無線センサー端末と従来端末との比較

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