Vol.3 No.3 2010
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研究論文:安全・安心のためのアニマルウォッチセンサーの開発(伊藤ほか)−235−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)サイズの異なるバイメタルカンチレバーを複数用意すれば、デジタル型の温度センサーとなる。“デジタル”の意味は、センサー出力が直接デジタル信号になっている、すなわち四つのスイッチが(ON, ON, OFF, OFF)であれば、そのまま1100というデジタル信号として検出されていることであり、加工することなく電文に乗せられるからである。このような機械式スイッチのON検出はわずかな消費電力で可能であり、センサーの待機電力は基本的には半導体スイッチのそれだけである。バイメタルスイッチはMEMS技術でなくても構成できるが、バイメタル温度センサーの小型化・低コスト化のためには、半導体微細加工技術を利用して多数の立体マイクロ構造をシリコンウェハ上に組立工程なしに一括して実現することができるMEMS技術の利用が不可欠である。活動量センサーの場合も、ある値以上の加速度が入力されたらONになるといった機械式スイッチで構成することも可能であるが、私達が開発しているのは、図5に示すようなカンチレバー上に圧電薄膜を形成したタイプのセンサーである。ここでは技術の詳細[8][9]の説明は省くが、カンチレバーが運動すると圧電効果によって発電が行なわれ、この電力によってトランジスタのON/OFFを行うことが可能であり、原理的にはゼロ消費電力のデジタル加速度センサーが実現できる。バイメタル温度センサーと同様、感度の異なるカンチレバーを並べることもできるが、同じカンチレバーを並べて直列つなぎにしたり[6]、カンチレバーは一本にして、回路の工夫により所定の加速度閾値に対応したデジタル出力を取り出せるようにすることも可能である[10]。第5章で後述する実験用端末を用いた感染実験の結果から、例えば感染による顕著な体温上昇が見られない山口株の場合でも、一定時間(例えば30分間)内にある閾値を超える加速度の発生回数(活動量)をカウントし、その回数を24時間前の回数と比較するといった方法により、体温低下よりも10時間程度前に健康異常が検出できることがわかっている[3]。発電型の圧電センサーを使えばこの活動量のカウントを低消費電力で行うことができる。このようなデバイスを小型・低コストで実現するためには、MEMS技術と圧電薄膜形成技術を組み合わせた圧電MEMS技術が必要である。図6に示すように、超低消費電力端末を実現するためには、センサーそのものをイベントドリブン型に対応したデジタルMEMSセンサーにするとともに、マイコンや高周波無線通信集積回路(RF-IC)といった半導体素子もそれらに対応したものにカスタム(専用)化する必要がある。これまで述べてきたように、本研究で開発を行っているイベントドリブン型端末とは、「センサーからは直接デジタル信号が出力され、それによって端末がスリープ状態から起動してそのままそのデジタル信号を無線送信する」というものである。したがって端末には高級な演算処理は不要で、センサーインターフェイス機能と電文作成機能といった単純な処理機能を有するRF-ICがあれば十分である。逆に言えば、オーバースペックの汎用マイコンを搭載することを前提にすると、電力的にもコスト的にも鶏用の端末の実現は困難となる。このようなカスタムRF-ICの導入には、半導体素子技術として新たな技術開発が必要となるわけではないが、イベントドリブン型端末専用のRF-ICは世界でも例がなく、自ら設計開発を行う必要があるキーとなるデバイスの バイメタルデジタル温度センサー中温用高温用低温用バイメタルカンチレバーASICGNDコンデンサーへの給電制御信号コンデンサーへの給電制御信号コンデンサーへの給電制御信号制御部SRAMRESETOUTSETF/FVCCVCCGND制御部SRAMRESETOUTSETF/FVCCGND制御部SRAMRESETOUTSETF/FGND 圧電薄膜デジタル圧電加速度センサーHigh Acc.Mid. Acc.Low Acc.F/FMPUSRAMRESETOUTASICMOS‐Tr will be usedEndRecord Time IntervalStart> 0.8 G> 0.6 G> 0.4 GTimeTimeHiLoTimeSETMassHiLoHiLoF/FMPUSRAMRESETOUTSETF/FMPUSRAMRESETOUTSET図4 デジタルバイメタル温度センサー図5 デジタル圧電加速度センサー
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