Vol.3 No.3 2010
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研究論文:遺伝子解析の精度向上と試薬の開発(小松ほか)−229−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)執筆者略歴小松 康雄(こまつ やすお)1995年北海道大学大学院薬学研究科博士後期課程修了。博士(薬学)。1995年北海道大学大学院薬学研究科助手。2000年(株)DNAチップ研究所マネージャー。2003年(独)産業技術総合研究所生物機能工学研究部門主任研究員。2005年ゲノムファクトリー研究部門、2010年産業技術総合研究所生物プロセス研究ンスがゴールではないため、何らかの方策を考えない限り、それまでの研究と新開発の両方を実施しなければならない場面が今後も出てくることが予想される。5.2 特許に関して開発した試薬が社会で使用されるには現実には特許が必要になる。また、民間と共同研究する限り、特許に関しては当初から極めて重要に捉えていた。そのため、いずれの開発においても事前の特許調査や出願内容などに関しては可能な限りの注意を払った。その結果、アミノリンカーに関しては国内外で新規性が認められて極めて迅速に特許が成立し、結果的にライセンスにつながっている。また、標識試薬の特許はこれから審査を迎えるが、開発した試薬は新規性を有するとの調査報告も受けている。一方で、特許には多くの費用が掛かる。そのため主要特許以外にも幾つか関連特許を出願したが、ライセンスしないと考えた特許に関しては、審査請求および外国出願には移行させずに取り下げ、自ら絞り込む姿勢をとってきた。予算がなければ特許は生まれないが、多くの予算をかけても必ずしも製品は生まれず、特許すら成立しない場合も多々ある。研究開発と特許の取扱いは組織のポリシーの一面を反映するが、もし技術の実用化を目指すのであれば、良い特許が出せ、さらにその実施を支持する環境作りが重要であると考える。6 将来への課題これまでの2種類の試薬の開発は、既存試薬の性能の高度化という形態で研究を進め、当初の目標は達成することができた。しかし、既存技術は多くのシステム中に深く浸透している場合が多く、入れ替えには時間を要するという問題も浮き彫りになった。そのため、次の開発は極端にニーズにとらわれ過ぎず、全く新規なアイデアを提示する開発からのアプローチも試みたいと考え、既存試薬には無い性質を有した試薬を最近になって開発した(図7;開発3)。この試薬の詳細は未発表であるが、既に特許出願も終えている。この第3の試薬はこれまでにはないユニークさを有しているが、ユーザーの明確なニーズを定義していないため、これまでの試薬開発とは異なり、最終的な製品像も現時点では描けてはいない。しかし今後、この第3の試薬に関しては我々が自らの力で新しいニーズを創り出すか、あるいは論文などを通じて世の中にこの技術を提案することで、多くの人々の発想による新たな活用も期待できる。シーズとニーズの議論が多々あるが、これまでの開発経験からでは、筆者はどのようなアプローチが確実であるかは全く分からない。しかし、往々にして想定外のことが起こるため、ニーズ、シーズに固執し過ぎると行き詰り、結果的に何もできずに終わる可能性も高い。成果の実用化にはニーズとシーズの両方が必須であり、さらに研究の過程でそれらを照らし合わせてバランスを保ち、修正することが必要ではないかと考える。また、単に成果をライセンスすることだけを目的にするのではなく、私達自身がベンチャー精神を持って開発に臨む姿勢や意識も、本当の実用化には必要であると考えている。謝辞本研究の遂行にあたり、ご助言、ご協力をいただきました、契約職員の方々、(株)DNAチップ研究所、日立ソフトウェアエンジニアリング、(株)シグマアルドリッチジャパン、東レ(株)、日本ガイシ(株)の関係者の皆様、ならびに旧ゲノムファクトリー研究部門の方々に感謝の意を表します。参考文献J. Shendure and J. Hanlee: Next-generation DNA sequencing, Nat. Biotechnol., 26, 1135-1145 (2008).H. Sara, O. Kallioniemi and M. Nees: A decade of cancer gene profiling: from molecular portraits to molecular function, Methods Mol. Biol., 576, 61-87 (2010).N. Kojima, M. Sugino, A. Mikami, K. Nonaka, Y. Fujinawa, I. Muto, K. Matsubara, E. Ohtsuka and Y. Komatsu: Enhanced reactivity of amino-modified oligonucleotides by insertion of aromatic residue, Bioorg. Med. Chem. Lett., 16, 5118-5121 (2006).Y. Komatsu, N. Kojima, M. Sugino, A. Mikami, K. Nonaka, Y. Fujinawa, T. Sugimoto, K. Sato, K. Matsubara and E. Ohtsuka: Novel amino linkers enabling efficient labeling and convenient purification of amino-modified oligonucleotides, Bioorg. Med. Chem., 16, 941-949 (2008).N. Kojima, T. Takebayashi, A. Mikami, E. Ohtsuka and Y. Komatsu: Efficient synthesis of oligonucleotide conjugates on solid-support using an (aminoethoxycarbonyl)aminohexyl group for 5’-terminal modification, Bioorg. Med. Chem. Lett., 19, 2144-2147 (2009).K. Cole, V. Truong, D. Barone and G. McGall: Direct labeling of RNA with multiple biotins allows sensitive expression profiling of acute leukemia class predictor genes. Nucleic Acids Res 32, e86 (2004).N. Kojima, T. Takebayashi, A. Mikami, E. Ohtsuka and Y. Komatsu: Construction of highly reactive probes for abasic site detection by introduction of an aromatic and a guanidine residue into an aminooxy group, J. Am. Chem. Soc., 131, 13208-13209 (2009).[1][2][3][4][5][6][7]

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