Vol.3 No.3 2010
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研究論文:遺伝子解析の精度向上と試薬の開発(小松ほか)−228−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)を示すことは、その他の核酸認識分子の創成にも重要な知見を与えたと言える。本成果は2007年に特許出願し、2009年に論文、学会などで発表した。その結果、幾つかの研究機関から試料提供の要請を受け、現在、その活性が評価されている。この標識試薬に関しても将来的には社会で使用してもらえるものにしたいと考えている。5 考察我々の進めた研究開発においては、「研究の展開」と「特許」が重要なポイントになったと考えるため、以下にそれらについて簡単に考察する。5.1 研究の展開について2003年の後半から研究を開始し、2007年までに一つの試薬の全世界販売に至ったのには、いくつかの要因を挙げることができる。試薬開発では既述のように有機化学からバイオ分野までの広範な領域に開発がおよぶだけでなく、その実用化には安定性試験、コスト問題などのさまざまな課題を解決しなければならない。そのため、予算、人員に限界のある我々が波及効果のある成果を残すには、汎用性のある技術開発が必要であると研究開始の段階で考えた。そこで、多くの解析に“共通”に用いられているリンカー開発をテーマに選択した。この領域は、多くの人に、もはや開発することはないと思われていた“流行ではない課題”であったが、そのようなことを気にせず、自ら考えてテーマを選んだことが独自性につながり、結果的に重要なポイントであったと思われる(要因1)。また、広範な研究を素早く実施するために産総研内における研究の分担を明確にし、さらに、企業側の技術者とも製品案の段階から綿密に議論を交わした。こうした所内外の連携は迅速な実用化には極めて重要であった(要因2)。特に既存技術の改良の場合には開発の「スピード」が重要であると考え、開発の段階から常に実用化することを念頭に研究を進めた。これが最善とは言えないが、ライフサイエンスの進歩は極めて早く、スピード感を持って開発を進めたことはとても重要であったと考えている(要因3)。一方で、日々の研究では加速度が付いていくあまり、幾つかの研究環境システムとの摩擦から減速感を感じることも度々あった。そのため、可能な限り減速させない環境が望まれる。また、第二世代型試薬の開発が重要なポイントであったが、これは第一世代型リンカーの化学的性質を詳細に調べる基礎研究がなければ成しえなかった。そのため、根本を追及することは実用化においても極めて重要であると筆者は考えている(要因4)。これらの四つの要因は結果論からくるものであるが、何らかの形で社会に残せる成果を挙げるという熱意を持って開発に臨んだことが何よりも重要であったかもしれない。特に民間との共同研究は、実務的な作業とは別に、我々が社会とつながっているという意識と緊張感を持続させる役割も果たしていたと感じる。これまでの研究では、一つの成果をライセンスした後に、得られた知見を異なる研究内容に展開する方法を筆者は選択してきている(図7)。しかし、ライセンスした成果を一層広げるには既に述べたように同じ研究をさらに進めることも必要になった。そのため、我々のとった戦術は、広い分野に最初の知見をいち早く展開できる反面、新たに開始した研究と、ライセンス技術の応用研究の両方を常勤職員2名で対応しなければならなくなり、予算的にも体力的にも大変厳しい消耗戦に突入することになった。つまり、ライセ民間:試薬販売事業化民間事業化特許基礎研究(ノウハウ)学会発表評価中学会発表開発3 新しい試薬 論文論文論文開発2 標識試薬の開発特許新たな分野への利用■試薬単体の全世界販売に関するライセンス契約・DNA受託合成・DNAチップ販売■国内DNA合成のライセンス契約中止安定性試験 問題点が発覚第二世代試薬を開発(特許)開発1アミノリンカーの開発第一世代試薬を開発(特許)2003200520042006200720082009論文基礎研究(ノウハウ)図7 研究開発の展開

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