Vol.3 No.3 2010
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研究論文:遺伝子解析の精度向上と試薬の開発(小松ほか)−224−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)が発生し、結果としてシステム全体の精度の低下につながっている場合もあると筆者は考えた。また、既存技術の中でも特に共通性の高い技術の性能を改善、改良することは、複数の遺伝子解析システムに対して高い波及効果をもたらすと考え、これら重複領域の技術に目を向けて問題点を再検証した。その結果、筆者は共通性の高い技術として上記の「合成DNA」と「標識試薬」に着目し、それらの問題点を改善することによって、遺伝子解析全体の精度の向上に寄与するシナリオを考えた。3 合成DNA用リンカーと標識試薬1990年代から最近までの間にDNAチップ(マイクロアレイ)、あるいは次世代型高速シークエンサーなどの高度な遺伝子解析装置が相次いで開発され、現在においてもそれらの技術は日進月歩で向上している。これらの解析システムでは標的遺伝子に配列選択的に結合するプローブDNA(オリゴヌクレオチド)を平板あるいは微粒子などの固相表面上に固定化している場合が多い。この固定化はDNA側に導入された特殊な化学修飾リンカーと基板表面の反応性基との共有結合によって行われる(図2a)。また、このような固定化に用いられるリンカーは蛍光物質や薬物などをDNAに結合させる際にも利用される(図2b)。これらの現状から、「合成DNA」の中でも「リンカー」が極めて重要な役割を担っていると判断した。同様に、サンプルより回収した遺伝子側を“標識”する試薬も、微量の遺伝子を検出する場合には、その反応性が感度に影響するだけではなく(図2c)、核酸への高い反応性は核酸医薬の開発にも潜在的につながる可能性を有していると考えた。そこで、従来のリンカーと標識試薬の問題点を調べ、より高い性能を持つ試薬開発を目指して研究を行った。初めにプローブ側のリンカー試薬の開発から製品化までを記述した後、標識試薬への展開に関して記述する。4 開発と結果4.1 アミノリンカーの開発4.1.1 開発の目標プローブとなるDNAは、構成成分であるアデニン、グアニン、シトシン、チミンの4種類のモノマーが配列情報にしたがって順次化学的に連結して合成される。同様に、DNAの固相表面への固定化に必要なリンカーも一般的にはDNAの末端にDNA合成時に専用の“リンカー試薬”を連結して導入される。このリンカーには結合様式に応じて幾つかの種類があるが、中でも一級アミノ基を持つアミノリンカーは化学的にも安定で扱いやすいことから、DNAの化学修飾に最も頻繁に用いられている修飾基の一つである。アミノ基を結合させたDNA(アミノ化DNA)の合成は一般に専門のDNA合成会社において行われるが、その際の一工程としてリンカーの導入に失敗したDNAを目的のアミノ化DNAから分離しなければならない。しかし、アミノ基の有無は微妙な化学的相違であるために、それらの精製を短時間で行うことは困難であった。一方で、全遺伝子を対象にした網羅的な遺伝子解析の最近の需要から数百~数万種類のアミノ化DNAを一度に用意する必要性が生まれてきたが、従来のリンカーがそのまま用いられており、合成会社もそれらの合成と精製には苦労していることは容易に推測できた。また、最近になってアプタマーやsiRNAなどの核酸医薬の可能性が高まり、それらの生体内での持続性を高めるために、リンカーを介して機能性化合物を核酸に連結する必要性も生じてきた。この場合には、高い収率で連結生成物を得ることが重要であるため、精製の簡便化と同様にアミノ基側の反応性を向上させることも高いニーズがあると考えた(図2b、表1)。そこで、近年の網羅的遺伝子解析と核酸医薬などに役立たせるため、アミノ化DNA(またはRNA)の高純度ハイスループット精製と、高い化学修飾効率を両立する、新たなアミノリンカーの開発を目指すこととした。 要素技術1要素技術2標識合成DNA新技術新技術高機能化遺伝子解析の精度の向上遺伝子解析B遺伝子解析A図1 遺伝子解析システムにおける技術構成合成DNA(RNA)、標識技術などの従来からの技術は、複数の遺伝子解析システムに共通に用いられ、さらに医薬などにも関連する。• コスト• 実績• 安定性• コスト• 実績• 精製• 反応性欠点• 反応性(>従来型)• 精製(≧従来型)• 反応性(>従来型)• 精製(≧従来型)• 安定性• コスト• 実績利点第二世代型第一世代型従来型表1 各アミノリンカーの利点ならびに欠点

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