Vol.3 No.3 2010
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研究論文:ものづくり産業の国際競争を支援する電気標準(中村ほか)−221−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)執筆者略歴中村 安宏(なかむら やすひろ)1994年3月同志社大学大学院工学研究科博士課程(後期)修了、博士(工学)取得。1994年4月工業技術院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所。2005年10月計測標準研究部門電磁気計測科電気標準第1研究室長、2007年4月同研究部門電磁気計測科長、2009年4月より同研究部門主幹研究員。キャパシタンス標準をはじめとする各種電気標準の研究開発と標準供給業務に従事。2002年市村学術賞(貢献賞)。本論文では、量子化ホール抵抗に基づくキャパシタンス標準の開発、LCR標準遠隔校正手法の開発、および全体構想の策定と取りまとめを担当した。堂前 篤志(どうまえ あつし)2000年3月豊橋技術科学大学工学部電気・電子工学課程卒業。2000年4月工業技術院電子技術総合研究所(現産業技術総合研究所)入所。2001年4月より計測標準研究部門電磁気計測科研究員、2006年5月よりキャパシタンス標準および交流抵抗標準の校正責任者。キャパシタンス標準および交流抵抗標準の研究開発と標準供給業務に従事。本論文では、中容量キャパシタンス拡張システムの開発を担当した。査読者との議論 議論1 全般的評価コメント(工藤 勝久:産業技術総合研究所環境安全管理部)産業界からのニーズに対応した研究開発目標を明示し、産業現場に至る標準供給のシナリオも明確です。世界の標準研究機関における開発状況を十分に把握した上で、これまで培ってきた研究ポテンシャルをベースとして、明確な研究ロードマップにしたがった研究開発を実施し、オリジナリティの高い世界トップレベルのキャパシタンス標準を確立しています。一方で、一次標準から産業現場への標準供給を実現するための効果的な標準供給手法を開発し、世界に誇れるキャパシタンス標準のトレーサビリティ体系の確立に大きく貢献しています。コメント(小野 晃:産業技術総合研究所)キャパシタンスの国家標準の開発と、それを産業現場まで供給するための技術開発が、そのシナリオとともに俯瞰的に記述されており、優れた第2種基礎研究と製品化研究の論文になっています。最高精度を追求する国家標準の開発にとどまらず、産業現場に効率的、合理的に標準を供給するための遠隔校正のアイディアとその実現も優れた成果と考えます。議論2 電気標準全般への言及コメント(工藤 勝久)本論文では、キャパシタンス標準に限定した内容になっています。ものづくり産業の国際競争を支援するのはキャパシタンス標準が特に重要であると主張している印象を持ちました。一般的には、コアとなる電気標準の一つという位置づけかとも思いますが、電圧、電流、抵抗標準などと比較した場合、産業界からのニーズとして差別化できるのでしょうか。そのあたりについて、「はじめに」に簡単に言及されれば、読者の理解の助けになると思います。回答(中村 安宏)本論文は筆者が主に担当したキャパシタンス標準に焦点を当てて、研究開発のシナリオと成果を記述しました。ご指摘のとおり、キャパシタンスはコアとなる電気標準の一つではありますが、電圧標準や抵抗標準といった他の電気量の標準も、ものづくり産業の国際競争支援には欠くことができません。ただ、電圧標準や抵抗標準にまで言及すると、内容が散漫になると考え、本論文では意識的にキャパシタンス標準だけに絞った内容としました。しかし、ご指摘どおり、「はじめに」では、他の電気量についても言及した方が良いと思われますので、加筆・修正いたしました。議論3 現状の校正事業者の数質問(工藤 勝久) 「2.2産業現場までの標準供給のシナリオ」で、校正事業者の階層構造が図1に書かれています。後述で、JCSS校正事業者3社が記述されていますが、国内の校正事業者の階層がいくつあり、各層の校正事業者の数などの状況はよくわかりません。もう少し定量的な記述が可能でしょうか。回答(中村 安宏)電気標準において、現在は約50事業者がJCSS校正事業者として認定されています。このうち、図1に示しました最上位の校正事業者は、9事業者(キャパシタンスに限れば3事業者)で、その他は第2階層以下の事業者になります。これらの校正事業者数の現状を本文中に加筆いたしました。議論4 外国の国立標準研究所の状況質問(工藤 勝久) 「3.2ニーズに対応した新たな手法の開発」で、量子ホール抵抗からキャパシタンスを導く手法は、おおいに誇れる成果だと思いof the quantized Hall resistance value by using a calculable capacitor at ETL, IEEE Trans. Instrum. Meas., IM-36, 214-217 (1987).遠藤忠: 新しい電気の量子標準-ジョセフソン効果電圧標準と量子ホール効果抵抗標準-, 応用物理, 59, 712-724 (1990).Y. Nakamura, A. Fukushima, Y. Sakamoto, T. Endo and G. W. Small: A multifrequency quadrature bridge for realization of the capacitance standard at ETL, IEEE Trans. Instrum. Meas., 48, 351-355 (1999).Y. Nakamura, M. Nakanishi and T. Endo: Measurement of frequency dependence of standard capacitors based on the QHR in the range between 1 kHz and 1.592 kHz, IEEE Trans. Instrum. Meas., 50, 290-293 (2001).中村安宏: 溶融石英型標準キャパシタの周波数特性の測定, AIST Today, 3 (1), 17 (2003).A. Domae, Y. Nakamura and Y. Ichikawa: Calibration of standard capacitors of 0.01 µF - 1 µF at NMIJ/AIST, CPEM Conference Digest 2004, 608-609 (2004).米永暁彦, 堂前篤志, 中村安宏: 四端子対インピーダンスブリッジを用いた標準キャパシタの校正法とその不確かさ, 産総研計量標準報告, 6 (2), 101-117 (2007).坂上清一:4端子対キャパシタンスブリッジの整備, JEMIC計測サークルニュース, 32 (3), 16-17 (2003).Y. Nakamura, A. Yonenaga, N. Sakamoto and A. Shimoyama: Remote calibration of standard inductors, IEEJ Trans. FM, 126, 1183-1186 (2006).中村安宏: 低周波インピーダンスの遠隔校正について, JEMIC計測サークルニュース, 36 (1), 1-6 (2007).S. Matsuzawa, T. Shimodaira, K. Hanaoka, A. Shimoyama, S. Sakagami, A. Domae, K. Kito and Y. Nakamura: Feasibility study on remote calibration of impedance standards for industrial use, CPEM Conference Digest 2008, 348-349 (2008).[9][10][11][12][13][14][15][16][17][18]
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