Vol.3 No.3 2010
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研究論文:ものづくり産業の国際競争を支援する電気標準(中村ほか)−219−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)実現され、NITEによる審査を経てJCSS校正事業者への登録が認定された。また、その他の校正事業者に関しても、範囲拡張にかかる不確かさ解析方法などについて積極的に技術的指導・助言を行い、現在までに、キャパシタンス標準において国内に3社のJCSS登録事業者(最上位の校正事業者)が認定されている。(電気標準全般においては、現在、約50のJCSS登録事業者が認定されており、そのうち上記3事業者を含む9事業者が最上位の校正事業者として認定されている。)4.2 標準供給状況の分析と新たな供給方法の開発上述のように、キャパシタンス標準の計量トレーサビリティ体系の確立には、校正事業者の存在が不可欠である。産総研の国家標準を校正事業者を介して産業現場まで届けるシナリオを描いた。現状において、キャパシタンスのJCSS校正事業者の認定は着実に進んでおり、当初のシナリオどおりの標準供給体制が実現されつつある。しかし、計量トレーサビリティの確保を真に必要としているのは産業の現場であり、産業現場のニーズを満足させて初めて目的が達成されたことになる。すなわち、産業現場における計量トレーサビリティ体系の状況について調査・分析が必要と考えた。そこで、産業界に対して標準供給体制にかかるニーズの調査を行ったところ、現状の供給体制では、生産現場の計測器の1台1台まで、計量トレーサビリティの保証を付与することは時間とコストの面で難しいとのことであった。すなわち、現状のように、校正すべき計量器を校正事業者に持ち運んで校正を受ける形態(持ち込み校正)では、校正に出している期間は計量器を使う製造ラインを停止せねばならず、24時間稼働が普通の製造ラインでは不可能である。また、1生産現場あたり数百~数千台の計測器をすべて校正に出そうとすれば、校正手数料が莫大になり現実的ではないとの調査結果が得られた。つまり、当初シナリオのままでは、産業現場までの計量トレーサビリティ体系の確立は難しいと判断した。そこで、校正時間を短縮し、校正コストが軽減できる新たな供給方法として、遠隔校正法の研究開発を行った[16]-[18]。図10に、キャパシタンス標準における遠隔校正の概念図を示す。これは仲介器を介在させて行う校正手法である。通常の校正においては、校正の依頼者は校正を受けたい被校正器を自らの負担と責任において、校正事業者へ送付あるいは持ち運び、校正を受ける。これに対し、図10の遠隔校正では、依頼者は校正事業者から送付される仲介器と測定装置を用いて、被校正器の校正のための測定を依頼者自身の手によって行う。具体的には、同図に示すように、まず校正事業者によって事前に校正された仲介器が依頼者に送られる。この際、同軸スキャナと呼ばれる切替器も同時に送付される。依頼者側ではこれに市販のLCRメーターとパソコン(PC)および被校正器を接続して校正システム(遠隔校正システム)を組立て、事前にPCにインストールされた測定プログラムを起動して測定を行なう。校正システムおよび測定プログラムは、開始から終了まで全自動で測定が実施できるように設計されており、依頼者側に測定のための特別なトレーニングやスキルを必要としない。依頼者側で行なわれた測定結果は電子メールで校正事業者に自動転送され、校正事業者側でデータの解析を行ったのち、校正結果を同じく電子メールで依頼者に返送する。以上のように、遠隔校正においては、依頼者は、自身の被校正器を外部へ持ち出すことなく校正を受けることができる。これによって、被校正器の輸送に係るコストが不要になり、また校正のために被校正器が使用できない期間も最低限に短縮することができる。遠隔校正の手法を標準供給体制に組み入れることによって、上位校正事業者から直接、生産現場への標準供給も可能になり、供給の迅速化と計量トレーサビリティ体系の合理化を図ることができる(図11)。開発した遠隔校正システムの外観を図12に示す。本システムの開発に当たっては、産業界への普及を考え、導入国家標準・低コスト化・スピード化遠隔校正遠隔校正校正事業者産業現場・利便性向上スタートボタン測定プログラム電子メールプログラムキーコード・顧客ID・測定条件(周波数など)・測定期間・…計測データ・LCR測定値・周囲温度・…同軸スキャナー(切替器)LCRメーターLCRメーター校正事業者標準器依頼者被校正器仲介器仲介器輸送温度計図10 キャパシタンス標準の遠隔校正の概念図図11 遠隔校正による供給の迅速化とトレーサビリティ体系の合理化

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