Vol.3 No.3 2010
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研究論文:ものづくり産業の国際競争を支援する電気標準(中村ほか)−218−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)現在、量子化ホール抵抗に基づくキャパシタンス標準を実現している機関は産総研以外にはNPL(英)、CMS(台)、BIPM(国際度量衡局)があるが、いずれも直角相ブリッジには従来型の回路を用いている。4 計量トレーサビリティ体系の確立4.1 技術審査のための参照標準の開発と技術移転産総研で開発したキャパシタンス標準は、図1に示す標準供給体制に基づいて産業現場まで供給される。また、これによりキャパシタンスの計量トレーサビリティ体系が確立される。ただし、上述のように、産総研から供給される標準は10 pF、100 pF、1000 pFのみである。一方、産業界の生産現場では、少なくとも1 pFから100 µFまでの範囲のキャパシタンス標準が必要とされる。そこで、図1の各階層の校正事業者において、校正範囲の拡張が不可欠になる。校正事業者の候補としてはキャパシタンスの計測器メーカーや電子部品メーカーの品質管理部署が想定されるが、これらの校正事業者が産総研から供給されたキャパシタンス標準を基準として自らで拡張方法を開発し、産業現場や顧客が必要とする範囲のキャパシタンス標準を実現し供給することになる。この際、校正事業者は、拡張方法の技術的妥当性などについて、JCSSに基づく技術審査を受けることになるが、この審査には、拡張結果が正しいか否かの判断をするための参照標準(値が既知の標準)が必要になる。例えば、産総研から供給された10 pFの値を基準として、校正事業者が自らで開発した手法を用いて、1 µFの校正を行う場合、校正結果が正しいか否かの判定には値が既知な1 µFの標準が必要となる。そこで、産総研において、10 pF、100 pF、1000 pFの標準(低容量標準)とは別に、新たに技術審査用の参照標準として0.01 µF、0.1 µF、1 µF、10 µFの標準(中容量標準)を開発し、JCSSの認定審査機関である(独)製品評価技術基盤機構(NITE)へ提供することとした。中容量標準の開発にあたっては、測定系をすべて同軸四端子対型ブリッジとする技術を採用した。これによって、容量の拡張、すなわち低インピーダンス化への対応を図った。同軸四端子対型とすることにより、測定ケーブルの影響を除去し、寄生インピーダンスの効果を軽減することができる。開発した中容量キャパシタンス拡張システムの外観を図9に示す。中容量拡張システムの不確かさは、0.01 µFにおいて標準不確かさ0.38 ppm、10 µFにおいて標準不確かさ2.0 ppmと見積もられ、技術審査用参照標準として十分な精度を持つ容量拡張システムが開発できた[13][14]。また、校正事業者による校正範囲の拡張を技術支援するため、産総研で開発した中容量拡張技術を校正事業者の一つである日本電気計器検定所に技術移転した[15]。(具体的には、産総研との共同研究により、同所において産総研と同型の中容量拡張システムを開発した。)その結果、同所において中容量拡張システムによる容量範囲の拡張が参加NMICMS(台湾)KIM-LIPI(インドネシア)KRISS(韓国)NIM(中国)NIMT(タイ)NMIA(オーストラリア)NMIJ/AIST(日本)NMISA(南アフリカ)NPLI(インド)SCL(香港)SIRIM(マレーシア)SPRING(シンガポール)VNIM(ロシア)100 pF(APMP.EN-S7)参照値からの偏差 (ppm)43210-4-3-2-1図7 量子化ホール抵抗に基づくキャパシタンス標準(国家標準)図8 キャパシタンス標準の国際比較結果図9 中容量キャパシタンス拡張システム
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