Vol.3 No.3 2010
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研究論文:ものづくり産業の国際競争を支援する電気標準(中村ほか)−215−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)すなわち、産総研は、基本範囲で国家標準を開発・確立し、国内の校正事業者に供給し、校正事業者において、基本範囲の標準をもとにして校正範囲の拡張を行って産業現場へ供給する体制である。この場合、産総研の役割は上位の校正事業者に、高精度でかつ限定した基本範囲の標準を定期的に供給するだけに限られ、校正業務のスリム化が図れる。また、供給する標準の範囲を限定することで、産総研におけるリソースの選択・集中が可能となり、これによって校正装置の高精度化と効率化を図ることができる。さらに、標準の供給形態はすべて「計量法に基づく校正事業者登録制度(JCSS:Japan Calibration Service System)」を基本として考える。このことにより、図1に示すように標準供給の階層化が実現でき、産総研における高精度かつ基本範囲の国家標準が各階層の校正事業者によって範囲拡張され、生産現場の隅々にまで確実に提供される。具体的には、産総研において、10 pF、100 pF、1000 pFのキャパシタンス標準を開発・整備し、これを上位の校正事業者に供給する。上位の校正事業者において、例えば、10 pFを基準に1 µFへの拡張などの校正範囲の拡張が行われ、下位の校正事業者へ供給される。下位の事業者からさらに生産現場へ校正範囲の拡張を伴ってキャパシタンス標準が供給される。この体制を構築することで、メーカーの生産現場まで必要な範囲のキャパシタンス標準が、必要な時に国家標準に連鎖して供給される。つまり、生産現場の計測器あるいはコンデンサーの国家標準への計量トレーサビリティ体系が効率的に確立できる。この標準供給体制を構築するにあたっては、各階層の校正事業者、特に最上位の校正事業者の役割が極めて重要である。したがって、産総研は国家標準を開発・供給するだけでなく、それと同時に校正事業者の技術力の向上に対する支援も必要になる。また、その技術を評価・審査するための標準(技能試験用参照標準)も別途必要になる。これは、校正事業者が、例えば国家標準から供給された10 pFを基準にして1 µF、10 µFへと拡張する際に、その拡張した結果が正しいか否かを確認することが必要になるためである。そこで、図1に示すように、産総研においてもある程度キャパシタンス標準の範囲を拡張し(つまり、10 pF、100 pF、1000 pFを基準に1 µF、10 µFへの拡張を行い)、これを校正事業者の技術力確認のための参照標準に使用することとした。また、これら開発すべきすべての標準を計画的に整備するために、表1に示すような年度展開で標準整備計画を策定し、これに基づいて計画的に資源配分を行って、標準の開発・実現を行うこととした。さらに、この供給体制の実現には国内校正事業者の理解と協力が不可欠である。そこで、標準にかかる国内委員会や研究成果発表会などにおいて、産業界との意見交換を積極的に行うことにより合意形成に努めることとした。3 キャパシタンス標準の開発3.1 方法の選択キャパシタンス標準を実現する方法には世界的に二つの方法が認められている。一つは、クロスキャパシターと呼ばれる特殊な形状のキャパシター(コンデンサー)を用いる方法である。図2に示すように、互いに平行に配置された4本の電極棒において、対向する2組の電極間のキャパシタンス(クロスキャパシタンス)の単位長さあたりの値をC12、C34とすると、C12、C34の平均値が次式によって表わされることが、A. M. ThompsonとD. G. Lampardによって導かれている[7]。(C12+C34)/ 2 =(ε0ln2)/π (1)同式から分かるように、単位長さあたりのクロスキャパシタンスの平均値は電極間の誘電率ε0のみに依存する。クロスキャパシター全体を真空中におけば、単位長さあたりのクロスキャパシタンスは1.953549043・・・pFとなり、これは電極の形状には依存しない。つまり、電極棒の長さを正確に決めることができれば、クロスキャパシターによって長さ標準からキャパシタンスを決定することができる。ただし、式(1)が成り立つ条件として、4本の電極棒が無限に長いことが前提となっている。すなわち、無限に長い電極棒に20012002200320042005200620072008200920101000 µF100 µF10 µF1 µF0.1 µF0.01 µF1000 pF100 pF10 pF供給容量ガード電極1 234図2 クロスキャパシター表1 キャパシタンス標準整備計画

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