Vol.3 No.3 2010
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シンセシオロジー 研究論文−213−Synthesiology Vol.3 No.3 pp.213-222(Aug. 2010)1 はじめに積層セラミックコンデンサー、チップインダクター、EMIフィルター、薄膜抵抗素子などの電子部品・電子モジュールの製造産業は我が国の主要産業の一つであり、例えばコンデンサーだけでも、その市場規模は8000億円~1兆円と推定されている。また、最近の薄型テレビ、携帯電話、パソコンなどに代表されるデジタル家電の高機能化・多機能化や自動車の電子化などによって、コンデンサーの需要が増大しており、さらに、次世代エネルギーデバイスとしての蓄電池キャパシター(大容量コンデンサー)への期待から、環境・エネルギー分野においても今後の需要の拡大が見込まれている[1]。現在、コンデンサーにおいて、我が国の電子部品産業が占める世界シェアはおよそ7割と推定されているが、最近、アジア大手電機メーカーによるシェア拡大が急速に進んでいると言われている。これら電子部品メーカーの主要顧客、すなわち電子部品の主な供給先は、自動車産業、電気機器産業あるいは通信機器産業のいわゆる大手ものづくり産業である。これらの産業界から、最近、安心・安全と省エネの観点から、電子部品・電子モジュールに対する信頼性のさらなる向上が要求されており、またそれと同時に、ISO/TS16949(自動車産業向けの品質マネジメントシステムの国際規格)、ISO/IEC17025(試験所および校正機関の能力に関する国際規格)などの国際規格への適合が強く要望されるようになってきている。特に、国家標準への計量トレーサビリティ確保が必須の事項として要求され、そのため国内電子部品メーカーでは、これら顧客の要望に応えるため、製造ラインの検査装置に対する計量トレーサビリティの確保と国際整合化への対応が喫緊の課題となっているのが現状である。国内産業界のこのような課題に対応するため、産業技術総合研究所では国家標準として電圧や抵抗などの各種電気量の標準を開発し、これを国際比較などによって国際整中村 安宏*、堂前 篤志キャパシター(コンデンサー)は電子部品の中でも最も基本的な素子の一つであり、各種電気機器に多数用いられている。電気機器などの産業界において、最近、キャパシターの品質の国際規格への適合要求が強くなっている。特に国家標準への計量トレーサビリティは必須の事項として要望されている。産業界の要望に応えるため、産総研において世界トップクラスのキャパシタンス標準を開発し、それを迅速に供給するための技術開発を行った。具体的には従来法に代わって新たに量子化ホール抵抗に基づくキャパシタンス標準を開発し、また校正事業者の認定を支援して標準供給体制の確立を行った。さらに供給の迅速化、低コスト化のために遠隔校正システムを開発した。ものづくり産業の国際競争を支援する電気標準− キャパシタンス標準の実現と計量トレーサビリティ体系の確立 −Yasuhiro Nakamura* and Atsushi DomaeNational electrical standards supporting international competition of Japanese manufacturing industries- Realization of a new capacitance standard and its traceability system -A capacitor or a condenser is one of the most basic electrical devices and is used in various electrical equipments. Recently the electrical equipment industry has been requesting the quality of capacitors to be compatible with international standards; among other things, it is strongly demanded that the traceability of a capacitance standard should be consistent with the national standards. To respond to this need from the industry, we have developed a new national standard of capacitance based on the quantized Hall resistance and also established its traceability system in cooperation with the accredited calibration businesses. A remote calibration system of capacitance has also been developed to disseminate the standard quickly and to reduce calibration costs.キーワード:キャパシタンス、コンデンサー、電気標準、トレーサビリティ、遠隔校正Keywords:Capacitance, condenser, electrical standard, traceability, remote calibration産業技術総合研究所 計測標準研究部門 〒305-8563 つくば市梅園1-1-1 中央第3National Metrology Institute of Japan, AIST Tsukuba Central 3, 1-1-1 Umezono, Tsukuba 305-8563, Japan *Original manuscript received January 28, 2010, Revisions received July 12, 2010, Accepted July 14, 2010
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