Vol.3 No.3 2010
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研究論文:複雑システムの信頼性を向上させる開発手法(加藤ほか)−212−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)技術システム全般の開発に適用することが可能な手法であると考えます。システムを設計する際、システム仕様を基にシステムを構成する要素を見出し、構成要素を正しく協調動作させることで機能を実現しますが、これは技術システム全般では共通的な概念であるためです。また、本開発手法は、適用対象システムにおける協調動作に関する固有の問題に対処することが可能な手法です。本開発手法は適用対象システムにおける協調動作の特徴に対し、評価観点およびモデル検査ツールを選択するブリッジ技術を有しているためです。現在、筆者らは産業用ロボットメーカーと共同で、産業用ロボットに関する新製品の企画・開発を行っています。本論文の5章における産業事例がそれにあたります。本論文執筆現在、この研究における開発手法を適用し、協調動作が整合していることが確認された仕様を基に、産業用ロボットの開発が進んでいます。産業用ロボットにおける実際の製品開発に本開発手法を適用し、産業用ロボットの高信頼化に貢献した実績から、この研究が第2種基礎研究に値すると考えています。本論文の5章にこれらを加筆いたします。ただし、本開発手法の適用には注意すべき点があります。本開発手法では、構成要素の協調動作が整合していることを確認するために、モデル検査を採用しています。モデル検査におけるモデルの状態数が多い場合、状態の組み合わせが膨大になることでモデル検査が終了しない状態爆発という現象が生じることがあります。つまり、アーキテクチャ設計の結果、構成要素の協調動作が極端に複雑になると、モデル検査による協調動作の検証が終了しない可能性があります。その場合、アーキテクチャ設計の際に構成要素による協調動作が極端に複雑にならないように再度アーキテクチャ設計を実施する方策や、協調動作に関する仕様のモデルの状態数を減らす方策などが必要になります。6章に "開発手法の適用性" という節を設け、これらを加筆いたします。本開発手法については、筆者らが所属する慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科をとおして、産業界に広めることを検討しています。本論文の7章では、これらを加筆いたします。議論5 選択した技術のメリット/デメリット質問(赤松 幹之)3章では技術の選択を記述していただきましたが、機能aを実現する手法として、アーキテクチャ設計手法と構造化分析・設計手法とを挙げ、アーキテクチャ設計手法は、データやサービスなど特定の技術要素を中心とするシステム設計には向かないが、汎用的な設計技術であることから、アーキテクチャ設計手法を選択したとあります。要素技術の選択は研究のゴールに依存して行なわれることから、そのゴールを明記して、それとメリット/デメリットを比較検討した結果としてアーキテクチャ設計手法を選択したという記述ができますでしょうか。この研究のゴールは汎用性のある手法を構築することにあるからとも推察できますが、汎用性をゴールとすると実際の個別問題には適用しにくくなるという一般的な問題はあると思います。それを解決するのがブリッジ技術かとも推察しますが、もしそうでしたら、(議論3とも関係しますが)その点を明記してください。回答(加藤 淳)この研究の目標(研究のゴール)を明確にいたします。この研究の目標はシステムの仕様を構成要素の仕様および構成要素間のインタフェース仕様に分解し、それらの協調動作が整合していることを確認する、特定の技術システムに特化しない開発手法の確立です。本内容について2章に加筆いたします。本論文3章の機能a.を持つシステム設計技術として、構造化分析・設計手法およびアーキテクチャ設計手法が挙げられます。構造化分析・設計手法はシステム環境の変化に対して安定している業務情報などのデータに着目しシステム設計を行います。それにより保守性および拡張性を有するシステムを構築することができます。しかし、情報システムを念頭におき開発された手法につき、情報システム以外のシステム設計には不向きな側面を持っています。一方、アーキテクチャ設計手法はその設計に特化した手順や作業が規定されていないため、専用の設計手法に比べ労力を要します。しかし、アーキテクチャ設計手法は特定の技術システムに依存しない汎用的な設計手法です。したがって、この研究の目標における特定の技術システムに特化しない開発手法である点を踏まえ、機能a.を持つシステム設計技術としてアーキテクチャ設計手法を選択しています。本論文の3章では、システム設計技術の中からアーキテクチャ設計手法を選択したプロセス、構造化分析・設計手法およびアーキテクチャ設計手法のメリット、デメリットを修正いたします。開発手法について、ご指摘のとおり一般には特定の技術システムに特化しないことで個別の問題に適用しにくくなる問題はあると考えます。本開発手法ではブリッジ技術により、適用対象システムにおける協調動作の特徴に応じて評価観点およびモデル検査ツールを選択しています。それにより、協調動作に関する適用対象システム固有の問題に対応しています。これらについて、本論文6章2節に加筆いたします。議論6 ブリッジ技術コメント(赤松 幹之)ブリッジ技術が必要であることを明らかにしたことがこの研究の成果の一つであると述べていますが、なぜブリッジ技術が必要になったのか、またブリッジ技術が満たすべき要件は何であると判断したのか、なぜブリッジ技術と名付けたかなど、ブリッジ技術の研究シナリオについても記載をお願いします。アーキテクチャ設計手法とモデル検査法がそれぞれ独立した考え方に基づいて開発されてきたために、モデル検査法を適用するためにはアーキテクチャ設計手法からの出力では不十分であったものと推察しますが、そもそもコンセプトが異なるものをつなげるためには、互いを変換する技術が必要になるのは当然ともいえます。したがって、それが単なる変換技術なのか、それとも、例えば、協調動作を検証するという視点が一つのポイントとなって開発した技術なのかなど、オリジナリティを明確にするために、こういった点についても言及してください。回答(加藤 淳)この研究では、システム設計の段階で構成要素による協調動作に対してシステム検証を行います。そのためには協調動作に着目し、アーキテクチャ設計のアウトプットおよびモデル検査のインプットをシームレスに繋ぐ必要があります。そこで協調動作に関連する構成要素の仕様および構成要素間のインタフェース仕様、協調動作が満たすべき性質、適用するモデル検査ツールを導出する技術を開発しました。この技術はアーキテクチャ設計手法とモデル検査の橋渡しをすることからブリッジ技術と呼びます。ブリッジ技術は協調動作に着目しIEEE 1220といったシステムエンジニアリング標準とモデル検査を融合する具体的な方法を明確にしたところに新規性があると考えます。これらについて、本論文4章2節に加筆いたします。
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