Vol.3 No.3 2010
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研究論文:戦略的システムデザインによる最適化設計法の提案(福田ほか)−193−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)値システム」についてデザインを行い最適化することと定義できる。4 戦略的システムデザインによる複合データセンターの提案4.1 戦略的システムデザインによる複合データセンターの総合物理システムデザイン戦略的システムデザインのコンセプトに基づき、CO2の排出削減という社会要求に対する最適化をはかるため、データセンターと農業を組み合わせた複合データセンターについてデザインし、その効果を定量的に検討する。まず、物理面からみたデータセンターを考察する。図1のデータセンターのエネルギーフローを見ると、そのほとんどは熱としてデータセンターの外に排出されている。ちなみに、最終的にCPUが計算のために消費している電力は、全体のエネルギーの1 %未満にすぎない。そこで、このデータセンターの排熱を再利用する事業/システムを組み合わせることで、より効率的なシステムを提案できる(図5)。排熱を再利用する事業としては、オフィス、住居、病院などの冷暖房や温給水、浴場や温水プール、工場などでの温水利用、農業におけるハウス栽培の暖房などが想定される。このうち、ハウス栽培の暖房は、要求される温度が比較的低く、また熱需要の時間変化も比較的安定しており、低温の熱源であるデータセンターの排熱が温風として直接利用しやすいなど、データセンターの排熱の活用先として有望な分野と考えられる。一方、農業事業者にとっても、冬期のハウス栽培におけるコストの多くを暖房のための燃料費が占めており、大きなメリットが得られると考えられる(図6)。そこで、電力事業者としてCO2排出係数が最も小さい東京電力の供給域で、比較的寒冷である宇都宮地域においてデータセンターの排熱を利用したハウス暖房を想定し、燃料費の削減効果とCO2の排出削減効果について概算を行った。モデルとして同じく、最大収容数1000ラック(実稼働率85 %)、1ラックあたりの最大供給電力6 kW(平均4.2 kW/rack)のデータセンターを想定した。データセンターからの空調機排熱をハウス内の暖房に使用すると想定し、10月1日~5月31日までの冬期に15 ℃以上に暖房するのに必要な熱量を計算した。試算の結果、データセンターの1日あたりの発熱量は566,300 MJ/日に達し、灯油12.6 kL/日の燃焼に相当する。これは、暖房効率による減少を考慮しても、厳冬期に88,100 m2のハウスを暖房することができる熱量である(表3)注5。これにより、ハウス暖房に必要な燃料費を年間約1億9千万円削減することができ、年間4,256 tのCO2の削減効果がある。これは、データセンターが排出するCO2の21.9 %に相当し、データセンターおよびハウス栽培両方を合わせた全体で17.9 %のCO2削減効果がある(表3)。このように、データセンターとハウスの複合化で、CO2の排出は大幅に削減することができると期待できる。4.2 戦略的システムデザインによる複合データセンターの総合価値システムデザインデータセンター事業者と農家という二つのステークホルダーにおいて、双方の価値(利害)が受け入れられるシステムでなければ、物理的なシステムを実現して、効率化を実現することができない。そこで、データセンターとハウスが複合したシステムの価値設計について検討を試みる。4.2.1 データセンターが単独で環境対策に投資する場合の条件データセンター事業者の利益をP0、サービスの売上をS、エネルギーコストをECとする。これに対し、エネルギー消図5 複合データセンターのエネルギーフローサーバーからの排熱データセンター電源設備からの排熱空調機器夏期は空気中に排熱冬期は排熱をハウス栽培の暖房に利用ハウス栽培他のサービス事業者・ビルや住宅の暖房・温水プールや入浴施設・天然ガス送出設備の熱源・ハウス栽培の暖房など利用者通信事業者データセンター事業者発電所電源無停電装置サーバー非常用発電機ネットワークサービスパソコン排熱空調機器排熱の再利用新たな製品・サービス電気事業者566,308m2MJ/日データセンター全体の排熱量(宇都宮)1,709kL/年暖房用燃料削減量(灯油)189,734千円暖房用燃料費削減金額4,256t-CO2暖房用燃料削減によるCO2削減量19,464t-CO2データセンターのCO2排出量-21.9 %%データセンターからみたCO2削減率-17.9 %%データセンター+ハウスのCO2削減率ハウス面積88,100図6 農業でのデータセンター排熱の利用イメージ表3 複合データセンターによるCO2の削減量
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