Vol.3 No.3 2010
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研究論文:映像の安心な利用を可能にする映像酔い評価システムの開発(氏家)−189−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)像の生体安全性)の議長を務めるなど、映像の生体安全性に関する国際標準化活動にも従事している。査読者との議論議論1 全体構成コメント(中島 秀之:はこだて未来大学) 全体としては著者のとった研究シナリオが良く分かるように書かれています。研究内容が書かれている第4章が核心ですから、読者としては早くここに到達したい気がします。第2章は、研究シナリオが映像プロバイダーの理解を得られることを強く意識して構築したことを説明することがポイントだと思いますので、そこを明確に、かつ簡潔に記述していただくと読み易くなります。回答(氏家 弘裕)ご指摘ありがとうございます。この研究の成果は最終的なユーザーである映像プロバイダーの方々に使ってもらわなければ意味がないので、そのことを強調したいあまりに、第2章ではやや冗長な内容になってしまいました。なるべく簡潔になるように、修正いたしました。議論2 研究シナリオの全体像コメント(赤松 幹之:産総研ヒューマンライフテクノロジー研究部門)映像酔い評価システムをどのように社会で使ってもらおうと考えたのかという目標の設定が2.2節に述べられており、シンセシオロジーの論文としてのポイントが明確です。この目標設定が読者に分かり易くなるように、開発したシステムの位置付けを図示したら良いと思います。また、研究開発の成果の評価に関して、評価システムを実際に使って改善につなげた例が既にあるのでしたら記載してください。また、システムを使いたいといった声が制作現場からきているかなど、ユーザーサイドからの評価についても記載してください。回答(氏家 弘裕)2.2節の文意に沿って、図1を加えました。成果についてですが、これまでに評価システムを紹介する場などで、ぜひ利用したいという声を多くいただいていますので、その点を2.2節の最終段落に加えました。なお、実際に評価システムを使って改善につなげた例は今後現れてくるものと思います。議論3 酔いの要因質問(赤松 幹之)表1に示されている各要因について、それぞれの要因がどのような条件の時に酔いが発生するのか(周波数やサイズなど)教えてください。また、グローバル運動と比べた時、その影響はどの程度なのでしょうか。回答(氏家 弘裕)表1の各要因が酔いを生じやすい条件についてですが、視覚的グローバル運動に対する他の要因の影響の程度については、以下の点から、これについてお答えするのは必ずしも容易ではありません。1. 視覚的グローバル運動は、その存在によって酔いが誘引されるきっかけ要因(一次要因)であるのに対し、基本的にはその他の要因は、生じている酔いを増幅/減衰させる二次要因であり、酔いに対する影響の質が異なるために比較が困難です。2. 二次要因に属するものどうしについても、例えば、画面の明るさ(単位:cd/m2)と視野の大きさ(単位:deg2)というように、基本的に要因のパラメータ単位が異なるために比較が困難です。そこで、これまでに我々が得た知見や報告されている内容を基に、主要な要因についてその影響の概略を記述いたします。なお、映像酔いは、個人差が大きいため、以下の記述は、典型的な観察者を想定した場合のものとしてご理解下さい。視覚的グローバル運動:3種の軸に対する回転では、ロールによる影響が比較的大きいことがわかっています。ただし、一方向への回転では、いずれの回転も30~70 deg/sの速度で影響が大きく、往復する振動では、時間周波数や振幅に多少依存するものの、3種の回転ごとに影響の大きい速度帯域が異なります。両眼立体視:映像を立体表示させて奥行き情報を加えることで、酔いへの影響がやや大きくなる傾向が示されています。画面の輝度:画面の輝度が低下すると、酔いの程度が減少する傾向が示されています。画面の空間周波数成分:比較的単純な縦縞パターンを用いた回転ドラムの実験では、特定の空間周波数の縞パターンで酔い症状が大きいことが報告されています。画面の色度成分:回転ドラムの実験で、輝度がほぼ同一の下で、色パターンの方が酔い症状が大きいことが報告されています。環境照度:周囲が明るい方が、酔いの程度が減少することが示されています。視距離・提示サイズ:画面の見かけの大きさが大きくなるほど酔いの程度が大きくなることが示されています。ただし、ある程度以下の大きさ(例えば、20×15 deg以下)になると酔いが生じにくく、またある程度以上の大きさ(例えば、140×90 deg以上)では、酔いの程度がそれ以上増加することがなくなるとの報告があります。運動酔い感受性:運動酔い(あるいは乗り物酔い)しやすいほど、映像酔いしやすいことが示されています。性別・年齢:運動酔いでは、男性に比べて女性の方が、また、10代前半で比較的酔いやすいことが報告されており、映像酔いでも同様の傾向が示されています。議論4 最近話題の3D映像との関連質問(赤松 幹之)本論文の投稿後に、3D映画や3Dテレビがマスコミに多く取り上げられましたが、これに際して、筆者が力を入れていて活動が活発なコンソーシアムが有効に機能して、映像の安全性についての重要性が社会に認知させることに成功したと思います。この研究成果が活きて3Dへの展開が容易にできたこと、また人的ネットワークが機能したこと、さらに行政の支援などによって社会的な認知が得られてきたことなどを記載したらいかがでしょうか。回答(氏家 弘裕)ご示唆ありがとうございます。3Dコンソーシアム、(社)電子情報技術産業協会、産総研による共同のプレスリリース(2010年4月19日)後、3者に対して多くの問い合わせがあり、さまざまなメディアを通じて、立体映像の生体安全性に対する認識の広まりが見えたことは、ご指摘のとおり本評価システムの開発やそれに至る過程での多くの人々とのさまざまな連携活動による成果であると言えます。そのことを6章後半に追記いたしました。

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