Vol.3 No.3 2010
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研究論文:映像の安心な利用を可能にする映像酔い評価システムの開発(氏家)−187−Synthesiology Vol.3 No.3(2010)視聴環境条件映像酔いの程度の時系列推定値視覚的グローバル運動の推定速度影響を与える可能性のある映像区間のリスト表示映像情報映像操作映像モニタ図6 映像酔い評価システムの操作画面アであり、構築作業は福島大学が中心となって行った。こうした技術要素を連携させることで、本システムは以下のような特徴をもつ。第1に、個別の技術要素を統合し、連携させることで初めてその精度向上を図ることができる構成となっている。そのため、映像酔いの一次要因である視覚的グローバル運動による影響とは独立に、二次要因として欠くことのできない視聴環境条件の影響を盛り込むことが可能である。視聴環境条件として、映像の表示サイズや視距離、輝度レベルや周囲の明るさなどが上げられる。実際に、これらの条件を操作して、同一の映像を用いて生体影響計測を実施し、その結果に基づいて本システムの出力を修正することで視聴環境条件の影響に対応できるように試みられている。第2に、映像酔いのきっかけとなり得る映像の視覚的グローバル運動をリスト化し、それらの動きが含まれない場合の映像酔いの程度を評価することが可能となった。本システム内部の映像酔い評価モデルでは、映像中の視覚的グローバル運動が一定時間特定の速度帯域に含まれるたびに一定の応答(一過性の反応と持続性の反応)を出力する。そのため、特定の視覚的グローバル運動が存在しないと仮定することにより、これに対応するモデルからの出力を遮断することで、この影響を確認することができる。この機能により、映像制作者は影響の大きいと思われるシーンを編集しながら、映像酔い軽減の効果を確認することができる。5.2 本システムの評価本システムの利便性の向上を目標として、3章に述べた研究開発委員会において、関係者の協力の下、試用アンケートを実施した。アンケート対象者は映像産業界の関係者12名であり、そのアンケート結果によれば、解析速度や表示内容について概ね良好であった。ただし、表示される用語などが専門的でわかりにくいとするもの、表示の内容が分かりにくいなどのコメントも寄せられたため、できるだけ平易な言葉を用い、必要に応じてマニュアルに用語集を添付したり、表示内容を改善したりするなどが行われた。6 今後の展開映像酔い評価システムは、現時点ではプロトタイプの段階であり、さらに精度向上と試用アンケートの蓄積により利便性を向上させる予定である。また、映像酔いの程度に関する評価は生体影響計測の平均値レベルに合わせている。これまでに、実写映像による本システムの検討には200名以上の実験参加者のデータを蓄積してきたが、さらに大規模なデータを蓄積することで、一定の不快症状を示す人の割合などを推定したり、一定の割合の人々が体験し得る不快症状のレベルなどを推定したりすることを図っていく。冒頭でも触れた映像の生体安全性に関する国際規格化が進められており、2010年中に映像酔いガイドラインのISO規格化提案を検討している。提案前にも本システムを映像産業界関係者に配布して映像酔いの問題に対する理解を求めるとともに、規格化審議においても、提案する規格化内容の妥当性を示すために本システムを活用する予定である。さらに、本システムを発展させ、立体映像に対する生体安全性を評価する立体映像評価システムへの展開を進める予定である。立体映像では、立体特有の視覚疲労が存在

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