Vol.3 No.2 2010
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−165−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)報告:知の統合を目指す学問体系時並行的に進める研究である。通常グループあるいは組織として一体的に行われる。個々の研究者は通常本格研究のどこかの部分を担当するが、時間的に見れば第2種基礎研究から第1種基礎研究へ、あるいは第2種基礎研究から製品化研究へと移動したり、複数の研究を同時に行うこともある。Fig. 1は第2種基礎研究の方法を図示したもので、第1種基礎研究との関係も合わせて描いている。第2種基礎研究では、第一に、社会的な価値をもつ研究目標を定める。研究目標は社会への出口に近いものもあれば、遠いものもあるが、いずれも社会的な価値との関係を明確に記述しなければならない。第二に、研究目標を科学技術の言葉を用いて研究課題にブレークダウンし、それらの課題を解決して目標を達成するためのシナリオを設定する。シナリオの設定では、課題解決のために用いる要素技術をいかに選択するかが重要になる。通常、要素技術は複数の異なる専門領域に跨る。第三に、要素技術を組み合わせ、それらを構成・統合して研究課題を解決しつつ研究目標の達成を試みる。ここで注目すべきことは、このような構成的研究においては同じ研究目標に対しても、それを達成するためのシナリオは必ずしも一つに限られるわけでなく、複数存在しえることである。また最良と考えるシナリオも研究者ごとに異なるのが普通である。通常研究者は複数のシナリオを想定し、比較検討の結果最良と考えるものを設定する。シナリオが異なれば必然的に選択する要素技術も研究者ごとに異なったものになる。研究者が選択する要素技術は、第1種基礎研究で得られた成果ないしは結論に基づくものである。複合的な研究目標を達成しようとする場合、すべての要素技術が単一の専門領域の中に存在することはまれである。むしろ通常は複数の専門領域から要素技術を選択する。既存の要素技術がそのままの形で第2種基礎研究に適用できる場合もあるが、多くの場合既存の要素技術の修正や改良をあわせて行うことも必要になる。またシナリオに照らしてみて適切な要素技術がない場合には、研究者あるいは研究グループが自ら第1種基礎研究を行い、新たな要素技術を開発する場合も多いと考えられる。第2種基礎研究を実施して一定の結論が得られた場合、当初定めた研究目標がどの程度達成されたかを評価した上で、一つのサイクルが完了する。第2種基礎研究は社会への出口に向けてさらにサイクルをくり返しつつ展開していくが、前のフェーズで得られた結論は次のフェーズで活用される。第2種基礎研究はどの場合にも上記のサイクルを構成しており、フラクタル構造を有していると考えられる。以上述べた第2種基礎研究の諸性質を、第1種基礎研究と対比させてTable 1に示す。3 研究成果の社会還元Fig. 2は基礎研究の成果をどのようなプロセスで社会に還元するかを描いたものである。現代社会では公的な資金が科学技術の研究に対して与えられる。公的な資金は、その提供者の意思を反映して研究実施機関に委託され、一定の契約のもとで研究者によって研究が行われる。研究成果は研究者によって研究論文として記述され、専門領域の学会に提出される。研究論文は学会で、ピアレビューと呼ばれる同じ分野の研究者による匿名の審査を経た後に学術論文誌に掲載されて公開され、学術と知識への貢献が認められる。現実には現代の科学技術は多くの専門領域に細分化されている。通常細分化された個別の専門領域ごとに学会が組織され、学会は独自の学術論文誌を設ける。専門領域が細分化されればされるほど、研究論文を読んで理解するには特殊な用語と専門知識を必要とするため、研究成果を活用したいと思う社会の人々が容易に理解できるものとはなっていない。それだけでなく、他の専門領域の研究者からもほとんど参照不能なものとなっている。有用性、固有性メリットレビュー整合性、飛躍性ピアレビュー評価の視点評価の方法方法の新規性解の新規性新規性方法の固有性解の飛躍性オリジナリティ解の有用性論理の整合性重視する性質社会的な価値の実現学術的な好奇心駆動力複数の同等解唯一解解の一意性複数領域単一領域対象の範囲発明、作成発見、解明行為構成・統合(シンセシス)分析(アナリシス)手法第2種基礎研究第1種基礎研究第1種基礎研究論文投稿ピアレビュー② 政府(経済産業省等)(研究のスポンサー)研究資金学術論文誌③ 研究機関、大学(研究者)税金ニーズの提示④ 個別領域の学会(研究者)① 国民、産業界(研究成果の受益者:技術者)研究成果の国民・産業界への還元プロセスメリットレビュー論文化、新ジャーナル第2種基礎研研究“一般化製品”製品プロトタイプ、統合技術、リスク情報、地質情報、技術規格、計量標準、標準物質、データベース、ソフトウエアパッケージFig. 2 Cycling process of research in the societyTable 1 Characteristics of Type One and Type Two Ba-sic Researches

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