Vol.3 No.2 2010
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−162−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)報告:知の統合を目指す学問体系の1巻2号でMITのリチャード・レスター先生と議論したときに、私が提示したものです。掲載された論文を読んだり、執筆者と話したりして、論文上の構成方法のタイプがあるのではないかと思い、3つくらいに分けてみました。構成方法のタイプ統合技術技術要素A周辺技術要素C統合技術技術要素C技術要素B周辺技術要素B統合技術重要技術要素A技術要素B技術要素A3.戦略的選択型2.ブレークスルー型1.アウフヘーベン型1つ目は、ヘーゲルの弁証法を借りまして「アウフヘーベン(止揚)型」です。技術要素Aと技術要素Bという、異なったテーゼが統合され、新しいコンセプトが作り出されるタイプです。2つ目は「ブレークスルー型」です。これは科学技術者はわりと得意なのですが、自分の要素技術が重要な鍵となる技術を生み出し、それに周辺要素を結合させると統合技術になり、ブレークスルーするというタイプです。実は本当はこのように簡単にはいかずなかなか難しいのですが、うまくいっている例もあります。3つ目は「戦略的選択型」です。岸本さんから往路、復路という話がありましたが、私は岸本さんの論文を読んでこのタイプではないかと思いました。出口が先にあって、それを達成するためにいろいろな要素技術を選択・構成したというものです。この場合、要素技術の重要性は同等であっても、これらを選択・構成するための戦略性が必要です。もちろん、この3つのタイプだけではなく、これら3つのタイプをさらに組み合わせた例もあると思いますし、実際にきれいにタイプ分けできるかというとなかなか難しいと思います。さらに重要なことはこの技術要素の構成の際に、何がエッセンシャルな主導理念なのかだと思います。我々は『Synthesiology 』の発刊の趣旨を理解して、論文を書いてくださいと皆さんにお願いしているのですが、構成の方法論はまだできていないと思っています。私が査読で執筆者にシナリオや要素技術の構成の重要性を説明したり、議論して、「それって、こういうことなんですね?」と聞くと、「あ、そうかもしれないですね。でも、そんなことは全然考えていませんでした」と言われます。このあたりは、原先生の言われた「構成学はシナリオドリブンな研究であり、機能のモデル化の定義が必要」という議論につながるのではないかと思います。まさにイノベーションの議論とほとんど一緒になってくるかもしれません。道のりは長いかもしれませんが、ひょっとすると我々は知の統合の方法論を得ることができるかもしれないなと思っています。(質疑応答)赤松 フロアから、これまでの4人のご発表に対して、質問やご意見はございますか。(「人工物」の中に企業は入るのか)フロア 素朴な質問なのですが、人工物の中に企業みたいなものも入れていいのでしょうか。リスクの話がありましたが、リスクを回避して国民がメリットを受けるという考え方もありますが、企業も経営的課題や地震等々、多くのリスクに直面しています。リスクマネジメントの標準を調べたことがあるのですが、オーストラリアやニュージーランドをベースにした企業のリスクマネジメントの標準で重視されている方向は「リスクはチャンスである」ということです。企業がリスクを回避するだけでなく、それをチャンスにイノベーションをおこし、新しい企業価値を高めることも含むわけです。その方法が他の企業に広がり、普及することによって、当面の企業価値が上がるだけでなく、社会全体にも還元されます。企業を基本にして検討すると、数理的なものの他にビジネスモデル的な、よくわからない世界が入って来るのですが、それは人工物システムの中に含まれるのでしょうか。 岸本 公的研究機関の研究という意味で、日本全体で国民というお話をさせていただきましたが、「リスクはチャンスである」ということはすごくやっています。世の中で今後何がリスクになるかについて先取りし、手法を開発し、それを例えば標準化に持っていくことは日本の競争力につながります。それには、まず、「誰にとって」ということを明示化することが必要です。「企業にとって」を明示化すれば、そういう戦略が出てくるでしょうし、構成学的枠組みが適用できると思います。 原 私は図の中で「人工物システム」と書いていますが、それは学術会議で提示されたものです。我々が「コト」というものを考えたとき、それは社会システムや人間の営みを含むということで、もっと広い概念としてこれを捉えないといけないと思っています。(知の統合の整理)フロア 私は「知の統合」とか「構成」と言うときに、

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