Vol.3 No.2 2010
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研究論文:サービス工学としてのサイバーアシスト(中島ほか)−99−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)2の通信ソフト・インフラを担当)、マルチエージェント(図2のパーソナルエージェント以下を担当)、知的コンテンツ(図2の知的コンテンツ、GDA、標準化を担当)の各チームが連携する。コンソーシアムのバザール方式(付録9.3)と同じで、アプリケーションを中心に基礎から応用までの技術がそろい、独自にアプリケーション開発ができることを目指したものである。単一の研究組織内にこのような異種技術分野がそろうのは産総研の、技術を社会に出すというミッションと、その中でも特に応用を担う研究センターならではのものと言えよう。分野の異なる研究者間で全体としての出口イメージを共有するため、センター開始初期には、チーム別ではなく全員が集まってどのようなサービスを構築すべきかを議論する機会を毎週1回設けた。また毎年全体合宿を行い、各チームの進捗状況やアプリケーションイメージの共有に努めた。また、出口(社会応用)を意識したことから、設立時より研究コーディネータを採用注3した。彼の働きにより工業デザイナー注4や弁理士事務所長を非常勤顧問とすることができた。その事務所の若い弁理士にはCARCのミーティングに出席していただき、特許化への対応をとった。知財の有効管理は企業との共同研究やベンチャー創出には不可欠のものである。また、サイバーアシストコンソーシアムも産総研初のコンソーシアムとしてその規則作りから行う必要があったが、これも研究コーディネータの働きである。3 研究シナリオサイバーアシスト計画には現在で言うところの「ユビキタス・コンピューティング」と「サービス工学」との二つの性格がある。ユビキタス・コンピューティングはその名の通りコンピュータによる人間支援を「遍在」させることが目標であり、かつ、コンピュータの存在を人間に意識させないインターフェースを必要とする。そのため、研究要素や技術要素が多岐にわたり、狭い範囲にフォーカスすることが困難である。そのため以下で述べる項目は、一貫性を持ったものでも、サイバーアイスト計画の全体をカバーするものでもない。またサービス工学としての実践重視の性格を持つため、ますます多岐にわたる些細な技術項目をクリアして行かねばならない。従来型の論文になりにくい研究である注5。3.1 位置に基づく通信CARCの研究領域を一言で表せば「情報の実世界へのグラウンディング」である。グラウンディングのためにはさまざまな実世界情報を得、利用することが必要であるが、その中でも位置情報は他の情報に比べて格段に重要かつ有用なものだと考えている。我々は研究の初期に「位置に基づく通信」という概念を提案した[5][6]。これは従来の電話番号やインターネットのIPアドレスといった、世界中からユニークに一機器を同定できるIDをアドレスとする方式に代わり、位置をIDとすることによりプライバシー保護と状況依存(最近では「コンテクスト・アウェア」と呼ばれることも多い)の支援を両立させようとするものである:現在の情報通信では、電話番号、IPアドレス、ハードウエアのMACアドレス等、個人やマシンを同定するIDに依存して通信が送られる。その通信を中継するために、これらのIDの情報を全世界に配っておく必要がある。このように個人のIDを公開するとプライバシーが保護されない。たとえば電子マネーで買物をする際にも身分が明かされる危険がある。一方、IDが必要であるため、近くの見知らぬ人と交信できず、日常生活で頻繁に必要になるコミュニケーションの用を満たせない。自由な社会生活と経済活動を保証するとともに、日常生活における必要性の高い通信を実現するには、個人やマシンのIDを宛名としない通信技術が必要である。さらに、匿名性の悪用を防ぐためのセキュリティ技術も同時に並行して開発し、プライバシーとセキュリティを両立させなければならない。(初期のCARCホームページより)位置に基づく通信は状況依存ユーザーインタフェースの観点からも重要である。たとえば駅の自動改札は、位置による同定を通じたサービスを行っている。物理的に1人ずつしか通れない空間を作り出すことにより、料金支払カードと乗客の1対1対応をとっている。仮にSuica注6が5 m先から読み取れたとしたら、ユーザーの位置が不確定になり誰に課金してよいのか判定できないためサービスが破綻する。位置が使えないとすると別の認証が必要となり、インターフェースが複雑になる。つまり、位置をインターフェースの一部とすることにより、煩雑なやり取りが避けられるわけである。これと同等の考え方が後述のCoBITシステム(4.1節)で採用されている。3.2 マイボタンCARCでは、究極の状況依存ユーザーインタフェースの概念として「マイボタン」を提唱した[7]。これはボタンが1ユーザーデバイスマルチエージェントソフトウエア知的コンテンツユーザーインタフェース図3 CARCのチーム構成

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