Vol.3 No.2 2010
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−161−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)報告:知の統合を目指す学問体系らよいのか。統合学とは、統合する新しい原理や概念を作り出し、それに基づいて普遍性を追求し、体系化していくことです。構成学は、整合性と合理性が重要です。バラバラになったものを一つにまとめ上げるという意味での整合性、もう一つはシナリオとして成り立つという意味での整合性であり、いわゆる論理の整合性とは違う意味合いです。「合理性」はもしかしたら「妥当性」と言うほうがいいかもしれません。岸本さんの例は、単にリスク比較問題を解決するだけでなく、その方法論は他のところにも使えます。そこを系統化・一般化することによって普遍的になっていくと思います。新しい評価基準として、「こういう意味の整合性です」ということが定義できると、評価がきちんとできると思いますが、いずれにしてもシナリオがベースになっているということです。もう一つ、我々が対象としているのは大規模かつ複雑な社会的な課題であるので、評価として「革新性があるかどうか、展開性や波及効果があるかどうか」ということを問わないといけないと思います。体系化や系統化、普遍性が持っているものがその領域にとどまらないためには、展開性や波及性をきちんと評価していくことが大事だということです。NSFで支援の検討が行われているトランスフォーマティブ・リサーチとは、革新的な展開で科学を変貌させるということですが、これをベースにアメリカでは、予期しなかった展開や多分野への波及や新研究領域の創出を期待しています。ヨーロッパ型の融合は、チームを作って融合研究をして、そこからイノベーションを導くという、融合研究を通して何かを期待しようというものです。これに対して、日本の場合の融合研究は必ずしもうまくいっていません。なぜかというと、何か重点領域を決めると、それに真っ直ぐに向かった研究活動を行い、その問題解決だけを狙って、結果が出たか出ないかということをやる。そのときに本当に融合研究ができているかどうかは怪しい。このような状況の中で、我々としては、構成学、統合学によって、社会的な課題に対してもきちんとした学問的なアプローチでやっていく、それが展開性や波及効果を生んでいく、そういう絵が描ければいいなというふうに考えています。(統計数理研究所と構成的研究)田村 義保(統計数理研究所) 「統計的データ解析」という言葉があるので、統計はアナリシスだと思っている方が多いかもしれませんが、逆でして構成学的なことが多いという気がしています。昔、統数研の例えば赤池先生のセメントの研究でいいますと、セメントキルンを安定に動かすために、既存の方法ではだめだったので、新しい統計的な制御の方法を考え、成功されました。院生の研究ですが、3月にドクターをとった院生が最初にやったのは「ネズミの呼吸中枢は脳のどこか」を探る研究です。数学がやたら好きで数学モデルばかり書いてしまって、医者に怒られました。なぜ怒られたかというと、生理学を無視している。「そんな研究ではだめ」と医者が注意してくれたのですが、院生はショックを受けたようで、その研究をやめてしまいました。もう一人の院生は、ある制御関係の会社にいた人で、経験豊富な60歳。データは単に脳の切片を色素で染めて顕微鏡で見るだけなのですが、研究のツボを知っていた。既存的な数学の技術や統計学を使いますが、実際の問題をやっていたから、仮想的な数学にばかり走らずに、生理学と実際のモデル化がうまくいきました。ネズミの脳で失敗した学生は、その後、ネズミのアゴの骨の形を分析しました。これも既存の技術では形の数値化がうまくいかない。そこで彼は遺伝研でとったデータを活用し、モデル化もうまくいっているようです。しばしば「融合研究はうまくいった試しはない」と言われますが、遺伝研と統数研の融合研究は結構うまくいっています。なぜかというと、遺伝学と統計学はルーツが一緒ですし、遺伝学者と統計学者は相性が良いので融合がうまくいっています。また、統数研には金融から来た学生も多いのですが、目的は「会社が損しない」ということです。どういうシナリオを書いて、どうやったら一番利益が上がるかということを、かなり難しい確率の微分方程式を使ってやっています。いろいろな要素技術を組み合わせますが、どれを選んだら一番いいかというシナリオモデルは統計学では一番大事なので、構成学的な考え方に統計学はかなり昔から合っていたのではないかという気がします。アナリシスと言っているのは、最終的なレベルのところを解析、分析するということで、「どういう分析をするか」ということは、やはり慎重に、統合しながら構成しているという感じです。今、統計や情報系の人は、“データドリブン”という言葉が好きで、第4の科学は「データの科学」と言っているのですが、データのモデル化というとおかしいかもしれませんが、データを出している体系をどうモデル化するかというところが一番大事なところですし、構成的研究にも合っていると思っています。(構成方法の類型)小林 直人(早稲田大学) 私は専門が物理なので、構成といいながらどうしても分析的に考えてしまう傾向があるのですが、構成の方法もまず分析的に考えてみました。この図は『Synthesiology』

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