Vol.3 No.2 2010
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−160−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)報告:知の統合を目指す学問体系私は、課題解決のために往路と復路があると考えています。構成学は統合・構成から研究目標(製品)という復路がメインなのですが、そのためには必ずすべての要素技術を一回見直すという戦略的選択があり、確立された技術をいかに組み合わせていくかという、往路をやったのかなと考えています。つまり、解決したい社会的な課題が変化したときには、このサイクルをもう一度回す、さらに解決したい課題が出てきたときにまた回す、ということをしていく必要があるのではないかと考えています。(新しい学術の体系)原 辰次(東京大学) 私は横幹連合の『横幹』という雑誌の編集委員長を2年ほど務め、今、日本学術会議の総合工学委員会「知の統合分科会」で、舘委員長のもとで幹事をしています。横幹連合の活動も絡めて、考えたことを紹介したいと思います。日本学術会議では、吉川先生が会長のときに「新しい学術の体系」ということで、認識科学と設計科学という枠組みが作られました。従来の「科学」が認識科学に当たるのですが、それは科学のための学術であり、「あるものの探求」である。それに対して設計科学とは、従来、「技術」と言われていたものであり、これは社会のための学術であり、「あるべきものの探求」である。知的好奇心に基づいた学術と価値・目的に焦点を当てた学術、この2つは共に重要であり、新しい学術の体系である、ということです。認識科学と設計科学があること、この軸と横幹連合の「もの」と「コト」という軸、この2つの軸で考えてみました。 コト(機能)のモデル化もの(対象)のモデル化構成学統合学人工物の機能に対する仕様横断型基幹技術(システム工学)横断型基幹技術(システム工学)論理コト(機能)人工物に対する仕様縦型工学設計科学もの(対象)理論化一般化体系化実践的個別的具体的自然生命現象認識科学理学「横断型基幹科学技術」と+「構成学」 シナリオ人工物システム社会的価値学術会議で認識科学、設計科学と言っていたのは、我々から見ると「もの(対象)」というところに焦点を当てた考え方ではないか。認識科学とは自然や生命、現象を対象にした大ざっぱにいえば理学であり、理論化、一般化、体系化を目指しています。これに対して、設計科学は人工物システムであり、人工物を設計し、実現するということで、実践的、個別的、具体的というキーワードが挙げられますし、いわゆる機械や電気など縦型のディシプリンに基づく従来型の縦型工学が適合するかと思います。これらはどちらかというと「もの」だけ見ています。しかし、実際に人工物システムや社会に有用なシステムを作っていくためには、「もの」と「コト(機能)」の両方が必要です。理学や縦型工学は「もの(対象)」を正しく理解するということで学問として明確に成り立っています。しかし、横断型基幹技術であるシステム工学やシステム理論が成り立つためには、「コト」における「もの」のスペックに相当するものを定義することが一つのポイントです。では、構成学とは何だろうかと思ったときに、それは「もの」だけでなく、「コト」だけでもなくて、多分、真ん中を狙っているのではないか。構成学に対置するものとして、横幹連合のもう一つのキーワードは「知の統合」なので、とりあえず「統合学」とすると、統合学と構成学が新しい認識科学、設計科学として、「もの」と「コト」を両輪とする中でうまく成り立っていけば、一つの姿になるのかなということで描いてみました。私は、構成学は「シナリオ」が一つの大きなキーワードになるだろう、要するに、「シナリオドリブンな研究である」と考えました。我々が「もの」を対象とするとき、学問となるためには、対象に対するモデルを持ち、それに基づいて研究するのが科学技術の一つのスタンダードなやり方です。しかし、「コト(機能)のモデル化」は十分なされていないのではないかという気がします。したがって、我々が「もの」と「コト」が両輪だと言うならば、機能のモデル化をきちんと定義する必要があります。それらを踏まえて、シナリオは何かというと、このモデル化と人工物の機能に対する仕様を結ぶこと、ここをある意味で整合性良く、合理的につなげることだろうと思います。評価についてですが、構成学や統合学では何を評価した「横断型基幹科学技術」と+「構成学」「統合学」と「構成学」における評価 革新性展開性波及性大規模な社会的課題体系化整合性合理性普遍性構成学統合学人工物の機能に対する仕様人工物に対する仕様論理設計科学もの(対象)コト(機能)自然生命現象認識科学「統合学」と「構成学」における評価系統化社会的価値人工物システムシナリオ原理・概念

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