Vol.3 No.2 2010
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研究論文:正確性・コストパフォーマンスに優れた遺伝子定量技術の開発と実用化への取り組み(野田)−152−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)ローブとジョイントDNAの複合体が増幅産物から解離する温度を測定する解離曲線解析を行うことで、増幅産物の確認を行うこともできた。βアクチン遺伝子だけでなくアルブミン、βグロビン遺伝子でも同様の定量精度を持つ結果が得られている。このようにUniversal QProbe PCR法により、これまでに開発したQProbe PCR法と同程度の定量性を持ちつつ、1種類の蛍光DNAプローブで複数の標的遺伝子配列の定量を実現するという当初の目的を達成することができた[9]。次に、Universal QProbe PCR法をヒト遺伝子の一塩基変異多型(Single Nucleotide Polymorphism: SNP)の遺伝子型解析への応用の可能性を検証した。SNPとは塩基配列中の1塩基の違いを指し、特定の集団において1 %以上の頻度で認められる変異と定義される。近年、ヒトゲノム・遺伝子解析研究の進展により、病気のかかりやすさや薬剤への応答性の違いのような個人差の原因の一つとしてこのSNPが注目されている。SNPは平均1000塩基に1箇所程度あるとされており、30億塩基対のヒトゲノム中には300万箇所程度以上のSNPがあると考えられている。Universal QProbe PCR法を用いた解離曲線解析により、このSNPの遺伝子型の区別を行った。ジョイントDNAは一方のアレルに対しては完全に相補鎖になるように設計されており、もう一方のアレルに対しては1塩基のミスマッチになる。温度を下げてPCR増幅産物に蛍光プローブとジョイントDNAの複合体を結合させた後、温度を上昇させることで消光していたプローブが発する蛍光から解離曲線を得ることによって、SNPを解析することができる。ミスマッチがある場合には低い温度で解離して蛍光を発するが、完全にマッチしている場合にはより高い温度で蛍光が発せられることになる(図6)。実際にあるSNPの野生型ホモと変異型ホモ、ヘテロ型の三つの遺伝子型を解析した結果を図7に示す。野生型と変異型では発蛍光によるピークの位置が異なるため、容易に区別することができた。また、野生型と変異型の混ざったヘテロ型では両方のピークが観察された。Universal QProbe PCR法は1種類の蛍光プローブで複数の標的遺伝子に対応できることから、ヒトゲノム中に300万箇所以上存在すると言われているSNPの解析においても有効なツールになると期待される。 3.2 Alternately Binding probe Competitive (ABC) PCR法00101020202530303540404550-551510サイクル数蛍光消光率 (%)初期鋳型量108コピー107106105104103102N01020304050サイクル数初期鋳型量 (コピー)1.00E+001.00E+011.00E+021.00E+031.00E+041.00E+051.00E+061.00E+071.00E+081.00E+09y = 8E +10e-0.5341x R2 = 0.9967ACCT5’3’GG5’3’GTACCT5’3’3’5’5’3’ACCGTT3’3’5’5’5’3’ACCGGT温度温度を上昇させながら蛍光値を測定SNPの判定が可能ヘテロ型変異型野生型野生型蛍光強度変異型温度上昇SNP部位ミスマッチが存在しないため高い温度で解離するミスマッチが存在するため低い温度で解離する0.040.02野生型変異型ヘテロ型温度 (℃)-d(蛍光強度)/ dT0-0.02-0.06-0.08-0.1-0.12-0.14-0.04405060708090図4 Universal QProbe法におけるサイクル数と蛍光消光率の関係10〜108コピーのβアクチン遺伝子を増幅した時の蛍光消光率を示している。蛍光消光率の算出は参考文献[8]に従って行った。図5 Universal QProbe法における標準曲線図4のサイクル数と蛍光消光率の関係より求めた反応産物量が所定の量に達するのに要したサイクル数と初期鋳型量の関係を示している。図6 Universal QProbe法によるSNPタイピングの原理図7 Universal QProbe法によるSNPタイピングの結果SNPタイピングは40 ℃から90 ℃まで徐々に温度を上げ、その間の蛍光値を測定する解離曲線解析により行った。縦軸は蛍光値を時間で一次微分した値を示している。
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