Vol.3 No.2 2010
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研究論文:サービス工学としてのサイバーアシスト(中島ほか)−98−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)デジタルな世界と実世界とを緊密に結び合わせることが、情報技術を効果的に活用する上で本質的に重要である。米国におけるネットバブルの崩壊が物語っているように、デジタルな世界に閉じこもっている限り新しい価値を生み出せない。インターネットに閉じた世界は、金融のみに閉じた(工場生産の存在しない)経済と同じようなものである。情報に価値があるのは、伝達経路の両端に人がいてモノがあるからにほかならない。情報技術を用いた健全なビジネスモデルを数多く生み出し、また情報技術によってわれわれの生活におけるさまざまな価値を高めるには、デジタル世界を実世界と融合する情報技術が欠かせない。2.2 具体的研究目標と手段へのブレークダウンサイバーアシスト計画を実現するには人間の日常生活における(前述のような交通・医療・災害等を含む)極めて広い範囲の場面において、極めて広い範囲の支援を考える必要がある。これが一研究センターの手に負える仕事ではないことは明らかである。適切なサイズの部分問題を切り出す必要がある。研究組織としては上記のトップダウンの要請と、自らが持つ資源(研究者の専門分野、研究施設、研究資金)からのボトムアップな制約を考慮した結果、以下のような具体的目標を設定した(研究センターの設立提案書より):● 目標:個人情報支援(位置とIDを併用した総合的な情報収集・検索・提示技術)1.状況依存パーソナルエージェント2.状況依存情報検索・提示3.タグを用いたコンテンツ構造化4.マルチモーダルインターフェース● 手段:状況依存通信ソフトウエア1.位置に基づく通信技術2.セキュリティとプライバシーの段階的管理3.物理情報を利用した情報サービス● 媒体:位置による通信を用いた携帯端末・インフラ1.携帯端末2.センサー・タグ群センター活動の初期段階において、研究者全員からなるミーティングを毎週行い、各自の専門・興味とセンターの目標を繋げる作業を行った。その結果、上記目標を具体化・詳細化し研究テーマに落とし込んだものが図2注2である。状況依存性はあらゆるテーマにおいて考慮すべき事項なので、それより下が具体的研究テーマとして設定されることになる。3章でこれらのうちの重要なものについて記述する。2.3 研究センターの運営と構成前節で述べた目標を達成するために、CARCでは従来と異なる組織運営・構成を行った。現在でいえばサービス工学を実践するための組織づくりを行ったのである。新しいサービス概念に基づくシステムを構築するためにはデバイスからアプリケーションまでを一貫して扱う研究開発の体制が必要である。そのためCARCの研究チームの構成は技術層別になってはいるが、それらの技術が互いに連携してユーザーの状況依存支援を目指せるように図3のような円環構造とした。ユーザーインタフェース(図2のインターフェースを担当)を頂点に、デバイス(図2の位置に基づく通信とそれを実現するデバイスを担当)、ソフトウエア(図サイバーアシスタントインフラ整備Linuxベースの加速テーマコア技術端末間P2P通信を用いたグループウエア計算機状態転送技術経済活動通信プロトコル標準化インテリジェントマルチメディアコンテンツ意味に基づく高精度情報検索辞書に基づく推論市民生活に直結した社会現象コンテンツ位置に基づく超高速大容量無線通信サービスシステム中距離用プログラマブルRFタグ携帯ゲーム端末を用いた通信ユーザーモデルを利用したモバイル情報サービス$10PCI-lidarGDAデバイス通信ソフト・インフラ標準化知的コンテンツ位置に基づく通信非常時通信システム推論・学習(音声)対話システムパーソナルエージェントインターフェース状況依存支援サポート関係要素技術図2 サイバーアシストの研究テーマ相互関連図(初期)

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