Vol.3 No.2 2010
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研究論文:正確性・コストパフォーマンスに優れた遺伝子定量技術の開発と実用化への取り組み(野田)−151−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)PCR阻害物質による定量性の問題を回避できる競合的PCR法の利点を活かしつつ、グアニン塩基による蛍光消光現象を利用することで、競合的PCR法で問題となっていた電気泳動操作を省き、従来より利便性を高めた遺伝子定量法として、Alternately Binding probe Competitive (ABC)-PCR法を開発した(図3)[10]。ABC-PCR法では標的遺伝子と鎖長が同じで、かつ同じプライマーで増幅される内部標準遺伝子と蛍光プローブ(Alternately Binding probe: AB-Probe)を用いる。AB-Probeの片方の末端には近傍にあるグアニン塩基で蛍光が消光する緑色の蛍光色素(BODIPY FL)が、反対の末端にはグアニン塩基で蛍光が消光する赤色の蛍光色素(TAMRA)がそれぞれ標識されている。AB-Probeの配列は標的遺伝子と内部標準遺伝子の共通配列部分に相補的な配列で設計されているため、両遺伝子に同じ結合力で結合する。一方、内部標準遺伝子はAB-Probeが結合する部分の緑色の蛍光色素の外側の3塩基をグアニン塩基に置換している(標的遺伝子ではグアニン以外の塩基)。したがって、AB-Probe は標的遺伝子と内部標準遺伝子由来の増幅産物に同じ結合力で競合的に結合し、標的遺伝子に結合した時には緑色の蛍光を発するが、内部標準遺伝子に結合した時にはグアニン塩基の影響で蛍光色素が消光するため、蛍光を発しない。すなわち、標的遺伝子の量が内部標準遺伝子に対して多ければ多いほど、緑色の蛍光が強くなり、反対に標的遺伝子の量が内部標準遺伝子に対して少なければ少ないほど、緑色の蛍光は弱くなる。内部標準遺伝子の量は既知量なので、ここから標的遺伝子の量を求めることができる。また、赤色の蛍光色素であるTAMRAはAB-Probeが標的遺伝子と内部標準遺伝子のどちらに結合した時にも、同じように蛍光が消光する。TAMRAの蛍光消光の程度は標的遺伝子と内部標準遺伝子に由来する増幅産物の量に応じて変化するため、増幅の有無を確認することができる。ABC-PCR法は、競合的PCR法で必要不可欠であった電気泳動のステップをグアニン塩基による蛍光消光現象を利用した蛍光プローブで置き換えた方法と考えることができる。競合法であるため、PCR阻害物質の存在下でも正確な定量ができるだけでなく、蛍光消光の程度をPCR終了後に測定すれば良いというエンドポイント定量法なので、リアルタイムPCR法で必要とされる高価な装置も必要なく、安価なサーマルサイクラーと蛍光測定装置があれば標的遺伝子の定量が可能となる。3 開発の成果3.1 Universal QProbe PCR法βアクチン、アルブミン、βグロビン遺伝子を標的遺伝子としてUniversal QProbe PCR法の原理を実証するための実験を行った。本手法において最も重要と考えられる点はジョイントDNAと蛍光プローブの安定性である。PCRの反応中であってもジョイントDNAと蛍光プローブの結合が解消されずに、安定であることが望ましい。そこで蛍光プローブの核酸部分をLocked Nucleic Acid (LNA)に置き換えた合成オリゴヌクレオチドを利用した。LNAは二つの環状構造を分子内にもつ核酸のアナログで、LNAを含むオリゴヌクレオチドは相補的なDNA・RNAに対して熱安定性が飛躍的に上昇することが知られている[11]。13塩基長のLNAからなるBODIPY FLで標識した蛍光プローブを合成し、この蛍光プローブとジョイントDNAの相補配列のTmをExiqon Tm prediction tool (http://lna-tm.com)を用いて計算したところ、102 ℃であった。PCRで最も高い温度は熱変性時の95 ℃であるので、蛍光プローブとジョイントDNAの複合体はPCRの間も安定的に結合を維持すると考えられた。設計した蛍光プローブとジョイントDNAを用いて、Universal QProbe PCR法による標的遺伝子の定量を行った。熱変性時の蛍光値(プローブと標的遺伝子が解離している状態)とアニーリング時の蛍光値(プローブと標的遺伝子が結合している状態)から蛍光消光率を算出した。図4にβアクチン遺伝子を定量した時のサイクル数と消光率の関係を示した。蛍光消光率は30〜40 %程度であり、QProbe PCR法とほぼ同程度であった。図4からCtを求め作製した標準曲線を図5に示す。定量下限は10コピーで標準曲線の相関係数R2は0.9967であった。定量下限、相関係数ともにQProbe PCR法と同程度であった。また、PCR終了後に40 ℃付近から徐々に温度を上げて、蛍光プ①遺伝子の競合的増幅②増幅反応後に蛍光を測定③蛍光値が標的遺伝子量を表す標的遺伝子(T)内部標準遺伝子(C)標的遺伝子内部標準遺伝子T:Cの割合は増幅前後で不変等しい親和力で結合蛍光値標的遺伝子量高多低少AB-QProbeグアニン(G)の影響により蛍光が消光TAMRABODIPY-FLAACCTTCTGAGGGTCG図3 ABC-PCR法
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