Vol.3 No.2 2010
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研究論文:コンパクトプロセスの構築(鈴木ほか)−144−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)さく、シャープな分布を得た。中心衝突型混合器は流路クリアランスが狭い図中ニードル位置のL=1 mm(図6参照)の方が、流体混合性能が高いと考えられ、その結果急速混合による微細粒子が合成されたと考えられる。この技術は、単一酸化物だけでなく複合酸化物の合成においても有効性が示されており、蛍光体、強磁性体、透明電極、電池電極材料、触媒などと幅広い用途が期待されている。4.3 超臨界二酸化炭素による革新的塗装プロセス日本国内の全産業から排出される揮発性有機化合物(VOC)の総量は約150万トン(2000年度)で、その内33 %相当の50万トンが塗装工業からの排出であり、同工業が全産業の中で最大のVOC排出業種となっている。VOCは光化学オキシダントや浮遊粒子状物質の原因物質であり、削減技術の開発が急務である。従来の有機溶剤系塗料によるスプレー塗装において大量に使用される希釈溶剤(代表的なVOC成分)を極少量の二酸化炭素に替えることにより、有機溶剤系塗装と同等の塗装仕上げ品質を確保したまま、VOC発生を大幅に低減させる塗装法の開発を目指した。この技術の基本原理は米国のユニオンカーバイド社を中心に新規な塗装プロセス[19]として開発されたが、同プロセスでは、塗料と二酸化炭素との混合方法として流体多段分割理論に基づく従来型のスタティックミキサが主に用いられており、迅速な混合を行うことが困難であった。そのため、ライン閉塞等の問題により使用できる塗料が限定されていた。これに対し、私達が開発した二酸化炭素塗装プロセスでは、混合方法として乱流混合理論に基づく高圧マイクロ混合器を開発して使用しているため、極めて迅速な混合が可能となり塗料種類によらず安定的な塗装操作が可能となった。二酸化炭素塗装技術の概略フローを図15に示す。塗料と二酸化炭素は、混合器で瞬時に混合され、二酸化炭素が塗料中に完全に溶解する。その結果として粘度が低下し、噴霧が可能となる。混合器は、超臨界水反応において急速熱交換を実現するために開発された中心衝突型マイクロ混合器を塗装用に改造して採用した。この方式で塗装(混合器条件:40 ℃・10MPa)したサンプルを第三者機関で評価した結果、実用レベルの塗膜品質であることが確認された[20]。したがって、希釈溶剤由来のVOCが基本的に削減可能であり、現状の希釈溶剤使用量(年間数十万トン)からみて、その削減効果は莫大と推測される。5 まとめと今後の展開高温高圧水下での有機合成・無機合成反応は、大量集中生産型の従来の合成プロセスを大きく変革する可能性を持っている。この反応場では、迅速かつ精密な温度・圧力・時空間制御を行うことにより効率的かつ理想的な物質合成が可能となり、バルクケミカルに加えてファインケミカル合成や天然物変換による高付加価値物質の創出などが強く期待される。例えば、超臨界水有機合成の発端として紹介したεカプロラクタムは、1工場当たり年間10万トン規模の生産が行われており、同量の硫酸と約半量のアンモニアを消費し、1.5倍量の硫酸アンモニウムを廃棄物として排出している。これを年間1万トン規模の分散適量生産方式として超臨界水有機合成で行えば硫酸およびアンモニアを使用することなく、生産が可能となる。この達成のためには、基本単位(構造)での処理量増大に向けて、高圧マイクロエンジニアリングの更なる強化が必要であるが、年間1万トン規模のコンパクトプロセスは実現できる規模と考えられる。一方、二酸化炭素塗装は揮発性有機化合物(VOC)削400 ℃・30 MPa急速加熱用混合器の種類を変えて超臨界水熱合成実施反応時間2秒冷却水超臨界水硝酸金属塩10100100005102025303515粒子径 (nm)頻度 (%)中心衝突型(ニードル位置L=1 mm)中心衝突型(ニードル位置L=0 mm)スワール混合器STD T字継手 塗装対象物噴霧ガン混合器塗料タンク加熱器塗料高圧ポンプ冷却器二酸化炭素ボンベ加熱器CO2高圧ポンプ図14 混合器によるベーマイト合成微粒子の粒子径分布高圧マイクロ混合器の違い(迅速混合性の違い)により、粒子径分布に大きな差が認められる。図15 二酸化炭素塗装技術の概略構成混合器として塗装用に開発された中心衝突型マイクロ混合器を採用。
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