Vol.3 No.2 2010
51/88

研究論文:コンパクトプロセスの構築(鈴木ほか)−143−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)が望まれている。これに対し、我々は、ニトロニウムイオンを硫酸により発生させるのでは無く、高圧マイクロエンジニアリング技術を用いて希硝酸を高温高圧水中でイオン化あるいはラジカル化させるニトロ化法を検討し、これらの問題を解決した。この場合、強烈な腐食性環境のため、硝酸導入後の高温高圧部はすべてチタンライニングを施したインコネルのマイクロチューブ、継手などの部材を新たに開発することで、高温高圧条件でありながら硝酸などの強酸を安全に取り扱うことに初めて成功した。これら耐高温高圧チタンライニングの部材を用いて、ナフタレンの硝酸によるニトロ化を行った。実験装置の概略を図12に、その実験結果を図13に示す。反応条件として圧力を40 MPa一定にして、温度を200~325 ℃の範囲で実施した。ナフタレンのニトロ化は225 ℃以上で進行し、反応時間わずか1.3秒ながら250 ℃でニトロナフタレンの収率が最大値91 %(1−ニトロナフタレン収率85 %、2−ニトロナフタレン収率6 %)を実現した。しかも、より爆発性の高いジニトロナフタレン、トリニトロナフタレンなどがほとんど生成しないことも明らかとなった。なおこの方法は、この他、ベンゼン、ピリジンなどの比較的広範囲な芳香族化合物のニトロ化にも有効である。さらに、高圧マイクロリアクタを用いたニトロ化法として、爆発性の高い硝酸アセチルをニトロ化剤に用いながらも精密な時空間制御・反応制御により、安全に反応を行うプロセスを開発した。この方法では、マイクロ混合器により硝酸アセチルを瞬時に発生させるが、その時の発熱を僅か±0.2 ℃に抑えることができ、反応温度40 ℃、反応時間1.8秒でフェノールのニトロ化を収率96 %、選択率ほぼ100 %で実現した。反応は40 ℃という低温で行うため、腐食はほとんど起こらない上、未反応の硝酸アセチルは、反応後に水中で全て加水分解するため、系外では安全に取り扱うことができる。なお、この方法は、高圧条件ながら反応を低温で実現できるため、さまざまな置換基を有する芳香族化合物に適応でき、特に医農薬中間体を用いるニトロ化にも有効である。この他、急速混合・急速昇温・急速冷却による精密制御により、水中でありながら超高速・高効率な有機反応として、ピナコール転位、クライゼン転位、エステル化などを実現している[13]-[15]。更に現在では、バイオマス原料として糖類を用いた有用な化合物、例えば近年血圧降下などの生理活性能が報告されている5−ヒドロキシメチルフルフラールの高収率・高選択率合成も実現している[16]。4.2 超臨界水による金属酸化物微粒子合成プロセス超臨界水熱合成法は、金属塩水溶液を急速に超臨界状態まで加熱して加水分解・脱水反応で生成された金属酸化物の溶解度を激減させナノレベルの微粒子を得る方法である[17][18]。亜臨界温度(200~300 ℃)では水熱合成反応の反応速度も低く、かつ水の誘電率は30程度と高いため、生成した結晶は大きく成長してしまうことが多い。一方、超臨界温度(代表的な温度は400 ℃、30 MPa)では、反応速度が高くなり、かつ誘電率も一桁となるため、生成した結晶は成長しない。したがって、この方法のポイントもいかに急速に超臨界状態まで加熱できるかにあり、この急速加熱を金属塩水溶液と超臨界水との直接混合で実現している。図14に硝酸アルミニウムを原料とした超臨界水熱合成法によるベーマイトの合成について、混合器種類を変化させて得られた生成物の粒子径分布を示した。用いた混合器は前述の16分の1インチ用STD TEE、スワールミキサー、中心衝突型混合器(ニードル位置を変化させた場合)である。反応条件は400 ℃・30 MPa・2秒とした。図より、標準的なT字混合器(流路径1.3 mm)と比較して、スワールミキサー、中心衝突型混合器とも粒子径が小NO2NO2NO2OO保持時間 (min)強度反応温度 (℃)2-ニトロナフタレン1-ニトロナフタレン1,4-ナフトキノンニトロベンゼンアセトン24681012140500100015002000pA325300275250225200ナフタレンナフタレンØ 1.6 mm Ø 0.5 5 mm Ø 0.7 mm Ø 1.6 mm Ø 0.5 5 mm Ø 0.7 mm Ø 1.6 mm Ø 0.5 5 mm Ø 0.7 mm 625 1.6mm0.55mm80µm 625 インコネル625(チタン内張り)製T字継手インコネル625(チタン内張り)外計1.6 mm、内径0.55 mm、チタン厚さ80 µmØ 0.7 mmØ 0.55 mmØ 1.6 mm急速冷却(マイクロミキサ)急速昇温(マイクロミキサ)ニトロ化物200~325 ℃40 MPa1 ~ 1.5秒冷却水希硝酸高温高圧水芳香族化合物図12 高温高圧水下での無触媒ニトロ化実験装置の概要硝酸投入後から急冷まではチタン内張りインコネル管および継手を使用。図13 ナフタレンのニトロ化実験結果ニトロ化は225 ℃以上で進行し、250 ℃で最大収率91 %を達成。

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です