Vol.3 No.2 2010
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研究論文:コンパクトプロセスの構築(鈴木ほか)−142−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)選定されるが、通常のマイクロリアクタでは基本構造当たりの処理量が小さいため、現実的な並列数とならないケースが多い。これに対し、高圧マイクロリアクタはある程度の圧力損失を許容できるため、基本構造当たりの流量を大きくできるというメリットがある。上記高圧マイクロ加熱器もマイクロチューブ(内径0.25 mm、外径1.6 mm、長さ200 mm)1本当たり最大5 kg/hの処理が可能であり、この高圧構造を維持したまま基本構造のモジュール化(5本マイクロチューブ/モジュール)、更にはモジュールの並列化(4モジュール/装置)により100 kg/h規模のナンバリングアップが可能となる。ナンバリングアップ戦略のイメージを図9に、試作したナンバリングアップ装置の写真を図10に示す。この装置では、加熱を各モジュール毎の直接通電加熱(12.5 kW/モジュール×4モジュール)で、冷却を各モジュールの外側に設けたジャケットに冷却水を循環する方式で行った。その結果、熱交換性能は基本構造と同等であることを確認し、1 m×2 m程の面積で設置できるコンパクトプロセスにより、年間数百トン規模の物質生産に匹敵する熱のやり取りを急速かつ安定して行えることを実証した。ここで用いられた直接通電加熱による高圧マイクロ加熱器の能力を従来法の電気炉加熱方式と比較すると、熱効率はほぼ2倍、伝熱係数は100倍以上と推測され、熱効率の差がエネルギー必要量の差に直結するためエネルギーコストは2分の1になる。更に、伝熱係数の差が必要伝熱面積、すなわち加熱管総長さにほぼ比例すると考えられ、加熱管は1/100以下になる。100 kg/hの生産能力では上述したように、高圧マイクロ加熱器では加熱管総長さが4 m(200 mm×5本/モジュール×4モジュール/装置=4,000 mm)となるが、電気炉加熱方式では400 m以上となり、設備が大型化してしまう。図11に、以上述べてきたことも含めて高圧マイクロエンジニアリング構築の過程について整理した。マイクロリアクタ技術と超臨界流体利用技術の融合に向けて、急速熱交換等技術課題の明確化が土台にあり、それらを解決するための加工・接合技術等基盤技術の確立、混合器等高圧デバイス化そして各種高圧装置化の検討・構築を経て、応用プロセス開発へとステージを着実に上げてきている。4 高圧マイクロエンジニアリングによるコンパクトプロセスの構築4.1 超臨界水による有機合成プロセス超臨界水・高温高圧水による有機合成プロセスは、マイクロエンジニアリング技術によるミリ秒~マイクロ秒オーダーでの急速昇温・急速冷却を実現することで、先に説明したベックマン転位反応を筆頭に、超臨界水は合成反応場として不適であるという常識を覆すこととなった[8]。その他の一例として、芳香族のニトロ化を紹介する。ニトロ化法は、古くから硝酸と硫酸などとの混酸法が汎用的であり、その製法(硫酸によるニトロニウムイオンの発生)はほとんど変わってない。しかし、混酸法は、安全性の問題に加えて廃硫酸の処理に問題があり、新たなニトロ化技術の開発Tr. Tr. Tr. Tr. Tr. Tr. 並列化基本構造モジュール化12.5 kWトランス×4 台=50 kW100 kg/h外部 ナンバリングアップ25 kg/h12.5 kWトランス内部 ナンバリングアップ2.5 kWトランス高圧細管5 kg/h直接通電加熱モジュール冷却モジュール 拡散接合マイクロデバイス応用プロセスの開発超高圧超臨界水装置直接通電機能反応装置ナンバリングアップ装置直接通電マイクロ加熱器Stage3装置化ナンバリングアップモジュール化高圧マイクロ混合器直接通電マイクロデバイス高圧・微細金属接合・加工Stage0開発項目Stage2デバイス化精密時空間制御迅速混合急速熱交換マイクロチューブ製作(腐食対策)CFD解析設計検討Stage1基盤技術図9 ナンバリングアップ戦略基本構造のモジュール化、モジュールの並列化で処理量増加に対応。図10 100 kg/h級マイクロリアクタープラント(モジュールの4系列並列動作)直接通電デバイス単体での熱交換能力を維持したまま処理量アップに成功。図11 高圧マイクロエンジニアリングの構築基盤技術構築からデバイス化、装置化を経て応用プロセス開発へ。
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