Vol.3 No.2 2010
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研究論文:コンパクトプロセスの構築(鈴木ほか)−140−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)も30 MPaの水の物性値で計算を行った。この条件におけるSTD(内径1.3 mm)とLDV(内径0.3 mm)のレイノルズ数はそれぞれ16,700と72,500となる。図3より、STDの場合下部から流入する低温流体と左から流入する超臨界水が混合され、混合後流体の下部流路に温度遷移域が形成され、流路内に温度勾配を生じている。一方、LDVは内径300μm、長さ1.3 mmのマイクロ流路内でほぼ均一な温度となり、迅速な流体混合が達成されている。混合後流体について、混合器中心から下流方向の鉛直断面における最高温度と最低温度をプロットしたグラフを図4に示す。図より、STDは継手出口(混合点から9.2 mm)においても温度が収束しないのに対して、LDVでは混合点からわずか1.3 mmの出口部において急速に温度が均一化することが示されている。流路内で平均して昇温速度を概算すると、STDは31,000 ℃/s、LDVは270,000 ℃/sと約9倍の違いがある。この昇温速度、すなわち混合速度の違いは、副反応を生じるような繊細な合成反応の精密制御が可能であることを示す結果である。図5には私達が開発したマイクロスワールミキサーの写真と数値計算結果を示す[10]。左から常温の原料が供給され、中心軸から60°の角度から2分割された超臨界水が供給される。更に、超臨界水は混合器中心から相互に偏芯して接続されていて、混合器中心部で2分割された超臨界水により旋回流を発生させることができる。原料流体は、旋回流により軸方向のみならず周方向の慣性力を付与されるため、混合性能が向上すると考えられる。T字継手の場合には、流体が必ず直角に曲がるため、曲がり部で渦を生じる。この渦領域は滞留を引き起こす原因となるため、滞留時間の増加が危惧される。一方、マイクロスワールミキサーは混合後の流体が常時旋回しているため、混合中心部付近で滞留域を形成しにくい。図6に示した中心衝突型混合器は、上部に上下可動式のニードルを有する原料導入管(原料はニードル外表面にそって薄層状に導入)と、下部に複数の超臨界水導入管を有する流体混合部(中心衝突部)との連結構造から構成され、迅速な混合と加熱を実現している[11]。原液は超臨界水からの伝熱の影響を受けない構造(ニードル内管の冷却媒体による冷却効果、外部フィンによる放熱効果および小型金属シールリングによる伝熱抑制)となっており、ほぼ室温のまま混合場に導入される。また、この混合器では、流体混合部におけるニードル長を連続的に変えることができ、それにより混合状態を制御することが可能である。LDV TEE(Low Dead Volume T字継手)STD TEE(Standard T字継手)超臨界水超臨界水原料原料混合点からの軸方向距離 (mm)温度 (℃)0024681012100200300400500超臨界水 33 g/min, 原料 12 g/min STD TEE (Standard T字継手) LDV TEE (Low Dead Volume T字継手)Local min. temp. (STD TEE)Local max. temp. (STD TEE)Local min. temp. (LDV TEE)Local max. temp. (LDV TEE)原料1/2 超臨界水1/2 超臨界水原料から質量ゼロ粒子を飛行原料1/2 超臨界水1/2 超臨界水L 0.8mm 1mm 1/4 1/4 ニードル冷却水冷却水原料超臨界水1/4超臨界水1/4超臨界水1/4超臨界水1/4ニードル冷却水冷却水原料ニードル位置超臨界水1/4超臨界水1/4出口内径0.8 mm内径1 mmL図3 T字継手による流体混合数値計算結果(温度コンター図)STD TEEでは継手出口でも温度が一様となっていないが、LDV TEEでは長さ1.3 mmのマイクロ流路出口でほぼ均一に混合。図4 混合後流体の温度プロファイルSTD TEEでは温度が収束しにくいが、LDV TEEでは急速に均一化されている。図5 マイクロスワールミキサー写真と数値計算結果(原料の流線)超臨界水を二分割して旋回流を形成し原液と混合。T字混合で起こる渦の発生を防止する構造。図6 中心衝突型混合器超臨界水は4分割され、原液は上部から中心衝突部へ向けて導入される。ニードルが上部から挿入されており混合状態を調節しうる。
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