Vol.3 No.2 2010
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研究論文:紫外線防御化粧品と評価装置の製品化(高尾ほか)−134−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)でなく、DNAレベルでは試行錯誤的に起こるという、進化論を細分化し、自然現象を動植物個体(論理的主体)と環境(経験的客体)に腑分けした概念である[29]。蟻の採餌経路選択では、低い採餌能力個体が集団内に存在する方が、優秀な蟻だけの場合より、新経路の発見確率の向上等を原因に、集団採餌効率が高いことが報告されている [23][24]。既報[8]-[13]のような競争化社会では、一方向的な論理・戦略の帰納法だけでは意思決定バイアスに陥り易く、常に新しいことを続けないと生き延びられない自転車操業の赤の女王(レッド・オーシャン)化する認知的傾向(Heuristic)が指摘されている[22][25][29]。歴史人口学は、人口増減の波が1万年に4回あったことを示し、人口減少期(文明の成熟期)には、富山の薬売りやオフィスグリコなど「三方良し」や「先用後利(=他者に先に利用して貰い他者が儲かってから返して貰う)」という概念が重視されると述べている[25]-[28]。原因→結果の一意的ロジックだけではなく、未踏の他者まで含めて論理の射程範囲を拡張する考え方は、武道の「機」、禅の縁起(因縁生起)や隻手音声、Bricoleur(=器用人;Claude Lévi‐Strauss)などに見られる(図1(b))[11][13]。以上、局所最適≠全体最適(合成の誤謬)は、進化論など自然現象においてむしろ前提条件となっている。したがって既報[3]-[7]のアナロジーには、少なくとも成熟期を迎えた現代においては、次世代技術シーズの揺籃として短期的組織利益を保留する社会的要素の解決策も、既に含意されているもの、と考える。本研究は(進化論における中立説などと同様に)、これら既報[3]-[13]の方法論を、技術的要素(=3.1節の論理・戦略)と社会的要素(=3.2節の短期的利益の棚上げ)に細分化したもの、と位置づけられる。5.2 本研究のまとめと今後の展望本研究は、Synthesiology誌の提唱するアウフヘーベン型[5]に分類され、技術的要素の解決に粉体技術を用いた論理・戦略的なシナリオ法を、社会的要素の解決に(即効的シナリオを必ずしも設定しない)技術指導型の地域連携とを組み合わせた。結果、地域ブランド特産品(絹雲母[15])の化粧品展開と、公的ベンチャーの評価装置販売に結実し、事後的に、実施契約や産総研研究成果活用製品マークによる基礎研究の実用化につながった[1][2][14]-[21]。現時点の問題として、研究開発を経て実用化に至って後(死の谷の克服)、既存製品との競争など技術や製品の広範な事業化のための市場競争がある(=ダーウィンの海[3]-[7])。複合粒子法は、複数の製法を組み合わせるため、工程増加を招き、製品単価が高くなった結果、高機能化粧品に用途が限定され、市場規模の大きい汎用品には配合し難くなっ参考文献高尾泰正, 浅井 巌, 浅野浩志, 津幡和昌, 奥浦朋子: ナノ粒子の凝集・解砕による複合粉体と顆粒体その製法と装置, 特願2009-238461 (2009.10.15).高尾泰正: 複合粒子と特性評価装置の開発とベンチャー起業, 産総研TODAY, 9(4), 6-7 (2009).中島秀之: 構成的研究の方法論と学問体~シンセシオロジーとはどういう学問か, Synthesiology, 1(4), 305-313 (2008).市川惇信: 科学が進化する5つの条件, 1-10, 岩波科学ライブラリー(2008).R.K. Lester, 小林直人: シンセシオロジーへの期待, Synthesiology, 1 (2), 139-143 (2008).吉川弘之: オープンラボによせて, 産総研TODAY, 9 (1), 2-8 (2009).吉川弘之: 観察型と設計型科学者(51-69) 公的ベンチャー論(110-122) 第二種基礎研究の原著論文誌(240-249), 本格研究, 東京大学出版会 (2009).中西準子: 環境リスク学~不安の海の羅針盤, 1-10, 日本評論社 (2004).箭内道彦: 流されるから遠くに行ける(51-69), クリエイティブ合気道, アスキー(2007).小笠原 泰: 日本型イノベーションのすすめ, 1-23, 日本経済新聞社 (2009).内田 樹:「機」の思想(158-210), 日本辺境論, 新潮社(2009).池田信夫: トヨタ・バブル「擦り合わせ」ではもう生き残れない(182-201), 希望を捨てる勇気~停滞と成長の経済学, ダイヤモンド社(2009).茂木健一郎, 南 直哉: 存在の根拠としての欠落(102-107), 人は死ぬから生きられる, 新潮社(2009).技術内容に関する産総研公式ウェブサイトhttp://staff.aist.go.jp/yasumasa.takao/愛知産の雲母「絹雲母」製品http://www.sanshin-mica.com/CCP005.html[1][2][3][4][5][6][7][8][9][10][11][12][13][14][15]てしまった。自乗法近似モデルも、技術的に煩雑な側面があり、簡便なセラミックス品質管理技術として十分に認知されていない。開発期間が限られていたとはいえ、材料の機能開発や、製法・評価法の費用対効果の検討が不十分であったと、反省している。今後、高制御製法として形態制御例の拡大や、機能・用途の新規開拓、評価パラメーターの科学的側面の明確化やJIS・データーベース化を進め、汎用化を促進する。また3R(リデュース)の側面にも着目して、地域連携による利害調整で培われた信頼関係を生かし、サステナブルマテリアル研究部門のミッション=「持続的発展を可能とする素材開発にむけたイノベーション推進や資源の有効活用」に、貢献できる可能性を模索する。6 謝辞本研究推進において、10年に渡り絹雲母開発に共に取り組んできた三信鉱工㈱浅井 巌主任研究員、産総研ポスドクから起業された㈱ナノシーズ島田泰拓社長および産総研成果活用マーク付き製品開発の日本メナード化粧品㈱浅野浩志主管研究員ほか、関係各位の御指導に感謝します。
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