Vol.3 No.2 2010
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研究論文:紫外線防御化粧品と評価装置の製品化(高尾ほか)−133−Synthesiology Vol.3 No.2(2010)摺り力の傾き(=内部摩擦角)が増加し、使用感が悪化している。一方、図11(a)開発品により、内部摩擦角を低減でき(=高い使用感)、高い滑沢性が達成可能となった。高使用感の理由として、ナノ粒子の絹雲母間の偏析を抑え、原料粒子の表面のみに配合でき、(結果的に)絹雲母およびナノ粒子の使用量の極少化を実現した効果を挙げることができる。過剰な原料使用を抑制できた効果は、3R(=リデュース・リユース・リサイクル)のリデュース(省資源化)に相当し、サステナブルマテリアル研究部門のミッション=「持続的発展を可能とする素材開発にむけたイノベーション推進や資源の有効活用」に、貢献できる可能性を示唆している[1][2][14]-[21]。4.3 具体的な製品例図12(a)~(c)に、合成および評価研究の製品例として、(a)化粧品「材料」製品と、(b)評価「装置」製品、(c)公的ベンチャー[16]を示す。3.2節で述べたとおり、合成(材料)と評価(装置)研究を事前シナリオで限定せず、転用可能な基盤技術は柔軟に利用し合えるようにした。その結果、合成(材料)研究の複合粒子法が、評価装置の適用可能性の広範さを担保し、また同時に、評価(装置)研究が粉体材料の高機能化に貢献した。以上の相乗効果が、互いの技術的要素の解決を促進し、社会的要素の競争力向上に寄与し、産総研成果活用マーク付き化粧品やベンチャーの評価装置の上梓に結実した[1][2][14]-[21]。5 自然現象とのアナロジーによる研究開発方法論の検証と、まとめ(展望)5.1 社会的要素の経験的・試行錯誤的な解決策の検証本研究の、特に社会的要素の解決策を振り返り、産総研の当面の組織目標や規則を一時棚上げした判断の妥当性を、以下に考察する。特性向上や新規性の発揮等、目標の統一化が比較的図り易い技術的要素と異なり、組織間の利害調整等の社会的要素は、論理・戦略の帰納的方法だけでは解決しないことが多数報告されている[8]-[13]。解決の方法論としてSynthesiologyは、①アウフヘーベン型②ブレイクスルー型③戦略的選択型を主張している[5]。そこでは、主として技術的要素の解決策として議論されている。本研究は(2.2節のとおり)、短期的な組織利益の判断を一時停止(先送り)するという意味で、既報[5]のアイデアを社会的要素にも適用している。最近、研究開発の方法論として、ポパーやソシュールらの漸進的・持続的進化論や循環・仮説検証モデル等、人文系のアイデアを用いた第1種基礎研究(観察)~Synthesiology誌(事実知識)~第2種基礎研究(設計)の整理法が進展している[6][7]。進化論など自然現象とのアナロジー[3]-[7]は、組織間の利害調整の報告[8]-[13]と同様、個体レベルの最適が、必ずしも全体最適とならないこと(=合成の誤謬)を示している。例えば木村資生の中立説は、突然変異は自然選択だけ(c)(a)(b)産総研の施設内に起業したベンチャー企業H22春に上梓(予定)図12 技術的(社会的)成果:製品例(a)物質(合成)製品:開発粉体を地元メーカー[15][17]より製品化(特許実施契約と産総研成果活用マークのコモディティ商品への付与:高いマーケティング効果)(b)方法(評価)製品:新評価法を評価装置として産総研認定付与ベンチャーより製品化(c)産総研認定付与ベンチャー[16]せん断応力 (N/cm2)垂直応力 (N/cm2)開発品(複合粒子)他社製品原料(雲母)2515105453212000(a)(b)(c)(c)(a)(b)図11 技術的成果:光学特性(図10)に加え、滑沢性の定量化と、高使用感(素肌感)も同時達成(a)開発品「複合粒子」:内部摩擦角・最小値(b)他社製品:(UV防御能は改善するが)ナノ粒子凝集のため滑沢性(使用感)は低下し、内部摩擦角が増加(c)原料(雲母)粉体の内部摩擦角(両・複合体の中間値)

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