Vol.3 No.2 2010
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シンセシオロジー 研究論文−96−Synthesiology Vol.3 No.2 pp.96-111(May 2010)1 はじめにサイバーアシスト計画は2000年に発動し、2001年より2005年まで産総研サイバーアシスト研究センターを中心として研究開発が行われた。これは日本におけるユビキタス・コンピューティングやサービス工学の先駆けであったと同時に、世界的にも先見性を持った計画であった。ポイントは人間中心の情報システムを謳ったこと、実空間でのサービス提供を行ったこと等である。通常、技術が最初に開発されてから世の評価を得るには10年単位の時間がかかるようである。たとえば現在ソフトウエア作成の主流となっているオブジェクト指向の考え方は1970年代後半に提案され、1990年頃から実社会で使われ始めた。そして更に10年を経てやっと主流というところまできている。10年を単位としてみるときに、サイバーアシスト研究センターは短命(2001〜2004年)であった。そのため未完成の要素が散見される。発案から10年を経た現在、サイバーアシストの目指したものが他の研究開発テーマの下に市民権を得始めている。それらとの関連を示し、新たな研究開発の枠組みを作り上げるという意味での構成的研究という観点からサイバーアシストの再評価をすることが本稿の目的である。特に、最近注目を浴びているサービス工学の実践注1としての活動を中心に取り上げたい。以下では同センターが当時残した文書を中心にセンターの目標と活動を再構成し、その後に評価を加える。2 研究開発目標とその実現手法まず、サイバーアシスト研究センターの目標と、それを実現するための組織について述べる。2.1 サイバーアシスト計画サイバーアシスト計画の最初の発表は1999年[1]であるが、そこで述べられている背景認識は現在でも変わらない:サイバネティクス(Cybernetics)はアメリカの数学者ウィーナーが“動物と機械における制御と通信”[2]で提唱した概中島 秀之1、橋田 浩一2サイバーアシスト計画は2000年に発動し、2001年より2005年まで産総研サイバーアシスト研究センターを中心として研究開発が行われた。これは日本におけるユビキタス・コンピューティングやサービス工学の先駆けであったと同時に、世界的にも先見性を持った計画であった。おそらく、現在であれば高く評価された活動であると考える。ポイントは人間中心の情報システムを謳ったこと、実空間でのサービス提供を行ったこと等である。本稿は同センターが当時残した文書を中心にセンターの目標と活動を再構成する。また、それを受けて今後の研究方向を示す。サービス工学としてのサイバーアシスト− 10年早すぎた?プロジェクト −Hideyuki Nakashima1 and Koiti Hasida2Cyber Assist project as service science and engineering- A project that began ten years too early -The Cyber Assist project was initiated in 2000, and its R&D was conducted at Cyber Assist Research Center of AIST from 2001 to 2005. This project was a leading activity followed by ubiquitous computing and service engineering in Japan as well as one of the foresighted projects in the world. It should be highly evaluated even in the present time. The project had its focus on a human-centered information system that provides services in the physical world. This article rebuilds the goals and activities of the research center on the basis of documents produced then, and provides future research directions.キーワード:サイバーアシスト、サービス工学、環境知能、ユビキタス・コンピューティングKeywords:Cyber Assist, service science and engineering, ambient intelligence, ubiquitous computing1 公立はこだて未来大学 〒041-8655 函館市亀田中野町116-2、2 産業技術総合研究所 社会知能技術研究ラボ 〒135-0064 江東区青海2-3-26 臨海副都心センター407号1. Future University Hakodate 116-2 Kamedanakano-cho, Hakodate 041-8655, Japan, 2. Social Intelligence Technology Research Laboratory, AIST 2-3-26 Aomi, Koto-ku 135-0064, JapanOriginal manuscript received September 15, 2009, Revisions received February 23, 2010, Accepted February 23, 2010
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